第3話.オフコラボで同期てぇてぇ Aパート

『この辺りで一旦休憩!  お水飲みます!』


「水分補給できてえらい……っと」


希望は、華の耐久配信を見守りながら、頭の中を整理していた。

このまま、あの二人のことを信用して良いのか、そして自分の命を繋ぎ止めている魔王キーについて。

現時点では、ある程度までは信頼するしかないという思いと、話が大き過ぎて実感がないという思いの半々だった。

そんな事を考えていると、颯がメッセージを送ってきた。


『きちゃった』

「……なんで?」



【突発オフコラボ】耐久配信を見守りながら食べるらうめん【らうめんはがね】


なんか話がありそうな颯を迎え入れたところで、一旦オフコラボをすることにした。

颯という女は、元の名前をそのままにVtuberとして活動するやつなのだけど、大事な話をする際には場を温める必要があるタイプなのだ。

忍者の家系でそれはいいのか?  と思ったことはあるが、今の時代そんなに困ることもないのだろう。


「なんか颯が家に来たので、昨日配信で仕込んでいたラーメン。いや、らうめんを一緒に食べながら華の耐久配信を観ようと思います」

「綺羅きゅん、挨拶挨拶」

「ああ、はいはい。Wi産ブル育Vtuber。鋼輝羅」

「貴方の心を鷲掴み。粉砕爆砕!  力こそパワーなお姉さんこと、颯さんが決めます。今宵はずっと颯さんのターン!  」


:らうめんはがねだー。待ってた

:らうめんに気を取られて雑挨拶助かる

:¥5000 粉砕爆砕代

:粉砕爆砕ニキもようみとる

:¥200 何処かでラーメン販売してくれ

:綺羅のはラーメンじゃなく、らうめん定期


「らうめん売りたいんだけど、出せる場がなくて」

「フェスならワンチャン猫ちゃんだけど、うどん様と競合するからね」

「うどん様には勝てないよ」


うどん様というのは、事務所の大先輩で1期生の帝うどんみかどうどんのことである。

メジャーデビューする程度に歌上手で、クソゲーをこよなく愛する自称クールビューティであり、デビューからずっとトップを走り続ける絶対的王者なのだ。

6期生に当たるはあと組とは、トリプルスコア以上のチャンネル登録者数に差がある。


:無理ゲーすぎるwww

:¥50000 うどん様詫び代

:流石に一緒に売られたらうどん一択でしょ、すまんな


「リスナーに裏切られたよ、ちくしょう」

「やーい、ざぁこざぁこ」

「ふんだ!  気を取り直して進めるよ。昨日の配信見てない人もいるだろうから説明しつつ準備するね。今日のらうめんは変化球で、じゃがポタらうめんだよ。麺は鋼中太麺バージョン3。とろっとろのスープとよく絡んで美味しいんだ。チャーシューはオーソドックスなものと、低温調理炙りチャーシュー。燻玉、海苔、ほうれん草、刻み玉ネギの組み合わせだよ」

「ポタージュ系食べたことないなぁ」

「濃厚だから重いかなって思うかもだけど、基本的に野菜ベースだから、意外とぺろりといけちゃうよ」


:はえーそうなんだ

:実際、ラーメン食べるとき野菜気にしたことないから言い訳になって助かる

:前見たのが暴れチャーシューらうめんだったから温度差に風邪引きそう。

:暴れチャーシュー二段らうめんのこと??

:¥1000 美味しそう


「コメントで流れてる炙りチャーシューらうめんってどんなの?」

「あー、あれはシンプルな豚骨醤油らうめんの中央に、チャーシュー柱を立てて、その周りに暴力的な量のチャーシューを二段乗せたやつ。V大食い大会用のメニューだね」

「颯さんには無理なやつだね。そんなに食べれないもん」

「そだねー……っと、へいおまち」

「わぁ、すっご」

「写真乗せるから、リスナーさんはそれでもみてね」


:飯テロだぁ

:綺羅のトッピング乗せる段階でちょっと飽きてる感じ好き

:こんだけ野菜入ってるならカロリーも0でしょ

:配信終わったらラーメンたべいこっと


「いっただきまーす……すご、野菜の優しい甘みが引き立ってて、よく麺に絡んでておいしい〜〜。二日酔いの朝に飲みたいスープ。チャーシューもお口の中でとろける〜〜!  こんなのいくらでも食べれちゃうじゃん」

「あ、麺食べ終わったらこれ入れてね」

「なっ……ご飯!  いや、チャーシュー丼?」

「そだよ。鶏チャーシュー丼」

「無敵じゃん」


:はい、どう考えても美味しい

:ここに来て、別種類のチャーシューでてくるの!?

:¥50000 綺羅、らうめん屋を開かないか?

:配信しながららうめん屋をやってくれ

:そういや耐久配信見守る方はどうなったの?


「ああ、はいはい耐久配信ね。今は……水分補給タイムしてるね」

「応援できないかららうめんに専念できる。ありがとう華」

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