第2話.戦いより同期が好き Bパート
アスタロトと幻月は、次元力を辿ってもう一人戦えそうな魔王の器候補を探していた。
しかし、中々妥協点となる強さを見つけられていない。
「うーん、中々いないな」
「ですね。まぁ、焦ってもしょうがないですし、適当なところで一旦……」
そう幻月が言いかけた所で、二人は良質な次元力を感じた。
「……あっちか。行ってみよう」
「輝羅さんは呼ばなくても?」
「状況確認してからでいいでしょ。さっきの戦いからまだ時間経ってないから、どこまで連続戦闘できるかわからないし」
「確かに。では、急ぎましょうか」
颯は逃げ回っていた。
相手は幻夢ではなく、魔王の器だ。
「なんで、颯を付け回すのさ!」
「餌にちょうど良いから……ね!」
相手の魔王の器は、大振りで鎌を振るう。一回でも当たれば死ぬだろう攻撃に対し、持ち前のフィジカルで回避し続ける。
「こんのっ!」
颯はリュックからコーラ入りのペットボトルを取り出し、相手の顔面目掛け、回転するよう投げつける。
大鎌で斬ってくれれば目眩ましになるだろうという判断だ。
「いいねぇ、次元力は並以下だけど、動きはいい。
あの初心者狩りしてる方も惜しいは惜しいが、所詮小さな器のようだ」
そんな戦いを、アスタロトと幻月は途中からだが眺める事に成功した。
変身せずに対応しきっている人物は優秀だ。
「渡しますか?」
「そうだね。フォローよろしく」
「鬼使い荒いことで」
幻月がアスタロトから魔王キーを受け取り、一蹴りで飛び込み二人の間に入る。
「なに? 邪魔!」
「そう言われても、仕事なんで……ね!」
幻月は自身と同じサイズの弓で、大鎌を受け止める。
この弓は、近接戦闘も考慮し強力な打撃武器としても使えるよう硬く造られていた。
「たすかっ……た?」
「いいえ、後は御自身で蹴りをつけてください。これをどうぞ。どこか肌に刺す感じで!」
幻月は左手で、魔王キーを投げ渡す。
「……ああ、はいはい。こういうのは何となく使い方わかるよ?」
颯が、鍵を左手で受け取り、右手の甲に刺す。
「
『Code Of Hayate 』
瞬間、颯は緑色ベースのくノ一風魔法少女衣装になっていた。
やはり基本的なビジュアルは、輝羅と同じくVの姿がベースだ。
「イメージしてください。最強の貴女を。それが力です」
「おっけ。でも先に……」
颯は相手を見据え見栄を切った。
「貴方の心を鷲掴み。粉砕爆砕! 力こそパワーなお姉さんこと、颯さんが決めます。今宵はずっと颯さんのターン! 」
颯は武器をイメージした。
それはハンマーの二刀流であった。
「お姉さん、ありがとね。後はこれでやればいいんでしょ」
「理解がはやい」
颯は、巧みに二本のハンマーで攻める。
大鎌で受けれるものじゃない為、一気に状況が好転していく。
「新人のクセに強くない!?」
「フィジカルつよつよ颯さんを、舐めるなぁー!」
相手の魔王の器が、距離を取り大鎌を構え直す。
雰囲気が変わったことにより、颯は大技を使うと直感で気づいた。
「はっ! 来いよ、新人。先輩が力をみせてやんよ!!」
「じゃあ、見せてもらおうかな、ざぁこ先輩」
「誰が雑魚だ!」
颯は、ハンマーを消し一本のナイフに変換した。
「この力の差がわからないとこが、ざぁこ」
「ふざけんな!
颯は、次々襲い掛かる次元力の刃を容易く避けきり、反撃へと転じる。
「泊流忍術パートワン……打ち上げ花火!」
そのまま相手の懐に飛び込んだ颯は、相手の鳩尾に一撃叩き込み、浮かび上がせ蹴り上げる。
そして、質量のある残像を伴い、ナイフによる斬撃の乱舞を繰り出した。
そのさまは、遠くから見れば花火が上がる瞬間のように見えていた。
「はい、ざぁこざぁこ」
大技を決め、相手の変身が解除されたことを確認した颯は、空中でキャッチした。お姫様抱っこの構図である。
「これはその辺にくくりつけて……っと」
近場にあった木に、颯は自前の縄で相手を縛り付けておいた。
「とどめはささなくても?」
戦闘が終わり、いつの間にかアスタロトを右肩に乗せていた幻月が話しかける。
「え、一々ざこ倒しても意味ないしいいよ。名前も聞いてないから墓標に刻む文字も困るし」
「うん、いいね君。戦闘のセンスがいい。所で時間いいかな?」
颯は、一瞬考えて、考えるのをやめた様子だ。
「これから、颯のだいだいだーい好きな輝羅きゅんとこ行くからだめ」
「あっ、じゃあ目的地一緒じゃん」
「なら、いいよ」
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