第2話.戦いより同期が好き Aパート

 希望は、アスタロトと幻月の二人を自宅に案内した。途中、逃がした子供たちの安否確認の連絡も怠らない。

 下手な手をうってしまうと村八分になるらしいからだ。

 ひとまず、破けた服を着替え、話を聞くことにした。

 越してきたときからあったちゃぶ台に、お茶菓子とお茶を出す。


「……で、改めて教えてほしいんだけど。この身体ってどういう状態になるの?  貫かれて死んだ気はするんだよね。服も胸のあたり破けてるし」

「ああ、この『魔王キー』と呼ばれるアイテムを埋め込むことで君は生きながらえているんだ」


 アスタロトがサンプルに一つ取り出す。

 クリアカラーの素材で、変身ヒロインもののアイテムに見える。


「これは、適応者の次元力を使った生命維持装置であり、戦うための変換装置らしい。

 なので、次元力が多い君の生命維持装置になるってわけ。思いつきでやってみたら上手くいったよ。

 もちろん、これ壊されたら死ぬけどね」

「えっ、引き篭もろ」

「残念だが、そういうわけにもいかないんだ。君が魔王になれなければ、俺が死ぬ」


 希望は、アスタロトの言葉に一旦真剣に聞いたほうがいいなと思い、正座した。

 何もしないで死なれたら後味が悪い。


「俺は、魔王を見出せなければ処刑される身なんだ。

 一応、君が今弄り回してるそれでもう一人用意は出来るけど、君よりは劣る才能の子しかこの辺いなくてね。しかも出遅れているから多少の焦りはあるんだ」

「魔王になるにはどうすればいいのさ」

「幻夢を倒すか、他の魔王の器を倒して経験値を稼ぎ、レベル10になればいい。

 貰える経験値は、相手の持っている半分で残りは変換効率の問題でなくなるよ」


 要するに、奪い合いってことかと希望は一人つぶやいた。


「そこで、妾の出番というわけ。か弱いか弱い人の子をフォローして、上手く立ち回ってもらうと」

「俺としては、既に激戦な都心よりも田舎で才能ある子を見つけた方が安全ではあるからな。その上でフォローしてもらえればやりようはある」

「ふぅん……それで、手伝うことによるメリットは?」


 アスタロトは一瞬考える素振りをみせてから、答えた。


「そこまでは習ってないから断言できない。ただ、さっきみたいな場面で君は戦うことができる。

 研修で習った程度の知識しか与えられていなくてね」

「まぁ、それくらいなら自分のペースでやらせてはもらうかな。一応、助けてもらった恩もあるし」

「とりあえずはそれで十分。やってくれるならいいよ」


 話が終わり、アスタロトたちは出掛けた。

 どうやら情報収集らしい。

 希望としては、配信やる都合上安易に住ませるわけにもいかないので、一旦でも出ていってくれて助かった。

 出かける前に観ていたアーカイブの続きを見ようとすると、同期の一人である亜久ノ華あくのはなが耐久配信する通知が来た。

 彼女はこの耐久配信であと6000人登録者数を増やすつもりなようで、耐久で歌枠をやっていた。

 華は、よわよわな喉の割に歌枠をしたがるタイプで、ゲームの腕も同期目線で贔屓目に見てクソ雑魚だった。

 だからこそだろうか、頑張る姿は人々を魅了する。

 希望は、同期を応援する為、配信に張り付きコメントを送ることにした。


 ちなみに、同期はもう一人いる泊颯とまりはやてという、フィジカルつよつよ系ぽんこつお姉さんくノ一だ。

 はあと組というユニット名で活動している。

 でこぼこユニットで、三人とも両片思い系三角関係のような距離感を売りにしている。

 そんな、颯が今問題を抱えながら、この家に向かっていることを希望は知らない。

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