風邪の日のオークション

神田 真

競売

「36.9」

「36.9がでた!さあ他居ませんか?」

 スーツを着こなした大人たちが、次々に手を挙げていく。

「37.3」「37.6」「38.0」「38.5」

 どんどんと値は釣り上がって、彼らの手も勢いを増している。

 やめて、それ以上は、__怖い。

 僕はもう見たくなくて目を閉じた。

「40.0」

 会場がどよめいた。おそるおそる声の方を見る。挙げた者は最近世間を騒がせている男だ。嘘ではなくそこには40.0と異常な数字が輝いていた。司会も余りの値に目を丸くしていた。

「40.1ッ!」

 前列、くたびれたスーツの男が喰らい付いてきた。だが、それを嘲笑うように、

「…41.0」

 会場からはもう出せないと、落胆のため息が聞こえた

「では41.0で、後列右端の彼が落札です!」

 パラパラと元気のない拍手が聞こえ、その男は嬉しそうに席を立ち、僕の方へ向かってきた。

___「あんた、熱測ったか?」

 財布と保険証を持ち、マスクをした母さんがドアを開けた。

「うん、41.0度だった」

「あら〜ほんまにインフルちゃうん?ほら、病院いくで。準備しぃ」

 僕は脇に挟んでいた体温計を置いて、ベッドを出る。液晶には41.0°cとかなり高い数値がでていた。

 オークション、風邪。

 インフルエンザにより、落札

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風邪の日のオークション 神田 真 @wakana0624

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