118 面倒くさい王国
ある日、タケシはなぜか突然、「面倒くさがり王国」の国王に任命された。
毎日何をするにも「面倒くさい」と口癖のように言っていた彼を、どこからか見つけ出した元国王が「面倒くさいを極めし者にのみ許される地位」として与えたのだ。国民ももちろん、みんなタケシに負けないくらいの面倒くさがりだった。
タケシが王位に就いた翌日、早速王宮に相談に来る者が現れた。隣村まで1kmほどの道がぬかるんでいるので舗装してほしいと言う。しかし、タケシは「いや、それ、面倒くさいから自分たちでやって」とあっさり断った。村人はしばらく悩んだ末、結局道など通らずに空を飛ぶ「手作りグライダー」を発明してしまった。
別の日、別の村人が「水を汲みに行くのが面倒くさい」と訴えたが、タケシはまたも「いやいや、それも自分たちで解決してよ」と冷たく返した。村人たちは仕方なく、山から水を引いてくる巨大な水路を作ってしまい、ついでに温泉まで作ってしまった。
そのうちに王国は、次々と「面倒くさい」を解決するために画期的な技術とシステムを開発し、誰もが驚くような発展を遂げた。国境を越えて噂が広がり、各地の学者たちがその知恵を学びにやって来たが、タケシは面倒くさいと言って、彼らに一切会おうとはしなかった。
ついには、周辺の国々が「面倒くさがり王国」と同盟を結びたいと願うようになり、タケシはしぶしぶ契約書にサインをした。それでも彼は王国の発展を誇りに思うわけでもなく、ただ「面倒くさい」を理由にあらゆる仕事を他人に任せ続けた。
そして数年後、タケシが自分の部屋で昼寝をしていると、家来が慌てて駆け込んできた。
「王様! ついに世界中が、面倒くさがり王国に服従しました!」
タケシは布団にくるまりながら、ただ一言。
「それ、ちょっと面倒くさいな」
こうしてタケシは、面倒くささゆえに王として史上最大の偉業を成し遂げたのだった。しかし、彼にとってはそれすらも面倒くさい日常の一コマでしかなかった。
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