119 求人広告を信じた者の末路
その日、ネット掲示板で奇妙な求人広告を見つけた。
> 「生き残るだけで月収100万円。超簡単、初心者歓迎。」
怪しいのは百も承知だったが、最近失業して生活も苦しくなっていた俺は、ついその広告をクリックしてしまった。
応募フォームはやたらと簡素で、名前と年齢、電話番号、メールアドレスを入れて送信するだけだった。
翌日、見知らぬ番号からの電話が鳴った。出ると、不気味な低い声がこう言った。
「採用おめでとうございます、〇〇様。詳細をお伝えしますので、今からお近くの公園までお越しください。」
思わず顔が引きつったが、既にメールには詳細な住所が記されていた。何かのドッキリかもしれないと思いながらも、どこか期待する気持ちもあって、指定された公園へと向かった。
公園には黒スーツに身を包んだ男が一人、俺を待っていた。表情は見えないが、無機質な声で指示を出す。
「今からあなたにはある役を演じていただきます。」
「……役?」
男はただ「そうです」と答え、厚手の封筒を差し出した。中には小型のイヤホンと分厚いマニュアルが入っている。
「耳にイヤホンを装着し、指示に従ってください。今回の業務は非常にシンプルです――ただ、生き残るだけ。」
その瞬間、寒気が背中を走った。どこかで聞いたことのある言葉だが、実感が湧かない。手に汗を握りつつ、恐る恐るイヤホンを装着した。
途端に耳元から声が響いた。
「今から制限時間は一時間。周囲を見回してください。」
指示に従い、公園の周囲を見渡すと、遠くの茂みの中に男が一人、じっとこちらを見つめている。手にはナイフが光っていた。
「……まさか、これって……」
「安心してください。成功すれば報酬はお約束通りです。動いてください。迫ってきています。」
その言葉と同時に、男がこちらに向かって走り出した。逃げ出そうとする足が思うように動かない。心臓がドクドクと鼓動を刻み、息が荒くなっていく。
「生き残るだけで月収100万円、超簡単、初心者歓迎」
そんな言葉を、信じた俺がバカだった。
その日、深夜のニュースで、一人の遺体が発見されたと報じられた。
彼のポケットには、「募集中:生き残るだけの簡単なお仕事」と記された名刺が一枚、冷たく差し込まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます