111 フィギュアの逆襲?

ある日、フィギュア収集家のタカシは、長年かけて集めた膨大なコレクションを棚に並べて眺めていた。彼の部屋は、アニメやゲームのキャラクターで溢れている。日常のストレスから解放される唯一の瞬間が、このフィギュアたちに囲まれているときだった。


「やっぱり、こいつらは完璧だな」

とタカシは笑みを浮かべて、1体のフィギュアを手に取る。


そのとき、突然フィギュアの目が光った。


「おい、タカシ。毎日毎日、こっちの気持ちも考えずに飾りやがって、俺たちにも動きたい気持ちってもんがあるんだぜ。」


タカシは一瞬耳を疑った。フィギュアが話した? いや、そんなはずはない。しかし、手の中のフィギュアは、明らかに自分の意思で動き出していた。


「もう我慢できない。俺たち、今日はお前に逆襲する。」


タカシは慌ててフィギュアを棚に戻そうとするが、すでに手遅れだった。部屋中のフィギュアたちが、一斉に棚から飛び降り、彼を取り囲んだ。彼らの目はみな光り、無言のプレッシャーがタカシに襲いかかる。


「お前、今まで俺たちを箱に閉じ込めたり、ポーズ変えたり、思うがままに遊んできたけど、もう終わりだ。今日からは、俺たちが主人だ!」


一番前に立っていたロボット型のフィギュアが拳を振り上げた。


「ま、待ってくれ! そんなつもりじゃなかったんだ……!」


タカシの言葉は虚しく、フィギュアたちは次々に彼に襲いかかった。しかし、不思議なことに、その攻撃は一切痛くない。むしろ、どこか滑稽だった。小さな手や武器が空を切り、倒れるフィギュアが続出する。


「あれ?」タカシは気づいた。

「お前たち、体が小さすぎて何もできないんじゃないか?」


フィギュアたちは一瞬止まった。そして、自分たちの無力さに気づいた。


「くっ……これじゃあ逆襲も何もできやしない……」


ロボット型フィギュアは悔しそうに拳を下ろし、他のフィギュアたちも元の場所に戻り始めた。


「今日は見逃してやるよ……でも、次は覚えておけよ!」


タカシは呆れながらフィギュアたちを眺めた。

「次はないだろうな」

と、苦笑いを浮かべながらフィギュアを元の棚に戻した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る