敬老の日の朝、孫の健太は、特大の花束を持って祖父の家を訪れた。小さな町の一軒家で一人暮らしをしている祖父は、健康で元気だが、少し寂しそうだった。

健太は敬老の日に特別なことをしようと思い、早朝から手作りのケーキまで用意していた。

玄関を開けると、祖父は大きな笑顔で迎え入れた。

「おお、健太！来てくれてありがとう！」

リビングに通され、健太は花束を差し出しながら言った。

「敬老の日だから、おじいちゃんに感謝を伝えたくてさ。これ、僕からのプレゼント！」

祖父は笑顔を見せたが、ふと腕時計をちらりと見た。

「ありがとう、健太。だけど……今日は敬老の日じゃないぞ？」

健太は驚いてスマホでカレンダーを確認した。確かに、敬老の日は翌日だった。

「あれ、間違えちゃった……！」

その瞬間、玄関のチャイムが鳴った。戸惑う健太の目の前で、祖父は嬉しそうに玄関に向かい、ドアを開けた。すると、近所の老人会のメンバーがぞろぞろと入ってくる。手にはワインやら菓子やらを持って。

「おいおい、健太。実は今日は老人会の"敬孫の日"なんだよ。孫に感謝する日さ！さあ、一緒にお祝いしようじゃないか！」

健太はぽかんとした顔で、老人たちに囲まれた。どうやら彼が感謝するのではなく、感謝される側になってしまったらしい。

こうして、健太の用意したケーキは老人たちの手によって、賑やかな宴の主役になった。

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