27 学校の幽霊


「もう帰ろうよ」

彼は彼女の手を引っ張って、廃墟になった学校から出ようとした。

彼らは友達と一緒に肝試しに来ていたが、途中ではぐれてしまった。携帯電話も圏外で、時計も壊れていた。どれくらい時間が経ったのかわからなかった。

「ちょっと待ってよ。あそこに何かあるよ」

彼女は彼の手を振りほどいて、教室の中に入って行った。彼は仕方なくついて行った。教室の中には机や椅子や黒板が散乱していた。

彼女は机の上に置かれたノートを見つけて、手に取った。

「これ、見て。生徒の日記みたいだよ」

彼女はノートを開いて、目を通した。ノートには赤いペンで書かれた文字がぎっしりと詰まっていた。

「私はこの学校が嫌いだ。先生もクラスメートも嫌いだ。みんな私をいじめる。だから、みんな殺してやる。今日は最後の日だ。私は爆弾を仕掛けた。放課後に爆発する。みんな死ねばいい」

「これは……」

彼は言葉を失った。彼女も同じだった。

「これは本当なのかな? 嘘だよね? でも、この学校が廃墟になった理由って何だっけ?」

彼女は不安そうに尋ねた。

「それは……」

彼は思い出そうとしたが、思い出せなかった。

この学校のことを知っているはずなのに、何も思い出せなかった。

そのとき、遠くから鐘の音が鳴り響いた。

「あれは……放課後のチャイム?」

彼女は恐怖に顔を歪めた。

「でも、今日は日曜日だよ……」

彼も同じくらい恐怖に震えた。

「それじゃあ……」

二人は同時に気づいた。

「ここは……」

二人は同時に叫んだ。

「学校の幽霊だ!」


いやいやいや!、むしろ二人が幽霊ですから!

いい加減気づきましょうよ。二人とも。

学校に囚われた幽霊だったのだ。


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