26 電子の荷電


ある日、小さな電子が自分の友達に話しかけました。

「ねえ、君、実は……私、君に荷電しているんだ」


友達は驚いて尋ねました。

「えっ、本当に? どうして?」


電子は微笑みながら答えました。

「君には言えなかったけれど、私、君に引かれているんだ」


友達は戸惑いながらも興味津々で聞きました。

「引かれているって、どういうこと?」


電子は照れくさそうに言いました。

「私たちは異業種交流会で出会ったんだ。君のプロトンの輝きに一目惚れしたんだよ」


友達は目を丸くして言いました「でも、私は陽子(ようし(+))だよ。君(−)とは違う性質の存在だよ」


電子はしっかりと言いました。

「でも、私たちはクーロン力(静電気(−と+))で引かれているんだ。それが愛だと思わないかい?」


友達は考え込んでから微笑みました。

「確かに、それは意外なオチだね。でも、君と一緒に荷電している時間が幸せだから、それでいいんじゃないかな」


そして、二つの粒子はクーロン力で引かれ合いながら、微笑み合ったのでした。


世界に物質が誕生した瞬間でした。

(中性子はどこ行った・・・)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る