19 現実と妄想のあいまいさ
「あなたは私のことを愛していますか?」
彼女は彼の目をじっと見つめて、真剣な表情で尋ねた。
彼は少し驚いたようだが、すぐに笑顔になって、彼女の手を握った。
「もちろん愛してるよ。君は僕の一番大切な人だから」
彼女は嬉しそうに微笑んだが、すぐにまた不安そうに顔を曇らせた。
「本当ですか? 嘘じゃないですよね? あなたは私以外の誰かと浮気したりしていませんよね?」
彼は呆れたように首を振った。
「そんなことないよ。君だけを愛してるって何度も言ってるじゃないか。信じてくれないの?」
彼女は涙ぐんだ目で彼を見つめた。
「ごめんなさい。でも、あなたが私に嘘をついているかもしれないと思うと、怖くてたまらないんです。私はあなたがいないと生きていけません」
彼は心配そうに彼女の頬にキスをした。
「大丈夫だよ。僕は君を裏切らないし、離れたりしないよ。君は僕の命よりも大事だから。ずっと一緒にいよう」
彼女は感動して彼に抱きついた。
「ありがとう。あなたは私の夢の王子様です」
彼は優しく彼女の髪を撫でた。
「僕も君に幸せにしてもらえると信じてるよ。君は僕の夢のお姫様だから」
二人は幸せそうに抱き合っていたが、その時、突然、ドアが開かれた。
「おやおや、どうしたの? こんな時間に遊んでるとは思わなかったよ」
入ってきたのは白衣を着た男性で、彼の胸には「精神科医」という名札が付いていた。
彼女は驚いて飛び起きた。
「先生! どうしてここに?」
男性は苦笑しながら言った。
「今日は定期診察の日だったでしょ? 忘れてたかな? それとも、この人形さんと遊んでる方が楽しかったかな?」
男性は彼女の隣に座っていた人形を指さした。
人形は男性の顔と同じ顔をしており、服も同じだった。
人形は無表情で動かず、口から糸が出ていた。
彼女は悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「あなた・・・あなただったの?!」
彼女は叶わぬ恋のために、手作りの人形を恋人として接していた。
強い思い込みだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます