11 締め切りの奇跡

出版社に提出する原稿の締め切りは今日だった。

彼は必死に原稿を書き上げた。一晩中眠らずに、コーヒーを飲みながら、キーボードを叩いた。

やっとのことで最後のページにたどり着いた。あとは印刷して出版社に持っていけばいい。彼は満足げにプリンターのボタンを押した。


しかし、何も起こらなかった。プリンターは動かなかった。彼は焦って、電源やケーブルを確認した。どうやらインクが切れていたらしい。

彼は慌てて近くのコンビニに走った。インクカートリッジを買って、部屋に戻った。


しかし、部屋のドアが開かなかった。鍵を忘れてきたのだ。彼は泣きそうになった。時間は残りわずかだった。

彼は隣人に助けを求めた。隣人は優しく、ドアをこじ開ける道具を貸してくれた。


しかし、ドアが開いたとき、彼は驚愕した。部屋の中には警察官が何人もいた。彼らは彼のパソコンやプリンターを押収していた。彼は何が起こったのか分からなかった。


「あなたは逮捕です」

と警察官が言った。

「あなたが書いていたのは小説ではありません。それは国家機密です」


彼は信じられなかった。彼が書いていたのはSF小説だった。未来の世界で起こる出来事を想像して書いていただけだった。


しかし、その想像が現実と一致していたのだ。


締め切りは今日だった。

でも、彼はもう小説家ではなかった。

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