10 狐の正体
私はその日、久しぶりに山道で散歩をしていました。
すると偶然美しい女性に出会いました。ほとんど一目惚れでした。
お互いに名前を名乗って、楽しく雑談して歩き続けました。
そういうわけで、よもや彼女が狐が化けている姿だとは、思いもしませんでした。
彼女の話はとても興味深く、魅力的でした。私は彼女に心を奪われていきました。彼女も私に好意を持ってくれているようでした。
私たちは手をつなぎ、幸せな気持ちでいっぱいでした。
やがて、私たちは狐の神様を祀る小さな祠に着きました。
「ここで一休みしましょう」
と彼女は言いました。
私は
「いいですね」
と言って、祠の前に座りました。
彼女は私の隣に座り、私の腕にもたれかかりました。
「美咲さん、あなたと一緒になりたいです」
と私は言って、彼女の手を握りました。
「俊太郎さん、私もあなたと一緒になりたいです」
彼女も言って、私の目を見つめました。
そのとき、突然、祠の中から老人が現れました。
「おやおや、ここで何をしているのだね?」
と老人は言いました。
「すみません」
と私は言って立ち上がりました。
「邪魔ではないよ。君たちは運命の人だよ」
と老人は言って笑いました。
「君たちはお互いに狐だからね」
「狐?!」
と私も彼女も同時に叫びました。
「そうだよ」
と老人は言って肯定しました。
「君たちは人間に化けている狐だよ。君たちはこの祠に来たとき、お互いの狐の匂いを感じたんだよ」
私も彼女も信じられない顔をしました。老人は祠の中から小さな鏡を取り出しました。
「これで自分の姿を見てごらん」
と老人は言って、鏡を私たちに差し出しました。
私も彼女も恐る恐る鏡を見ました。
そして、驚愕しました。鏡に映っていたのは、人間ではなく、狐でした。
そういえば、長らく人間に化けているうちに、自分は人間だと思い込んでいたということを・・・。
思い出してきた、ような、気がしてくるのでした。
彼女は狐でした。
私は狐になりました。
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