9 ヴァルプルギスの夜の意外性
ドイツに旅行中の男性が、友人とこれからどうするか、計画を立てていた。
「今夜はヴァルプルギスの夜だよ。北欧で春の魔女達の祭りなんだって」
「へえ、そうなの?」
「うん。ブロッケン山に行けば、魔女たちが見られるらしいよ」
「じゃあ、行ってみようか」
「え、本当に?」
「うん。面白そうだし」
「でも、危ないかもしれないよ」
「大丈夫だって。魔女なんていないんだから」
「そうかなあ」
二人はブロッケン山に向かった。夜は暗くて寒かったが、星はきれいに輝いていた。
「ねえ、あれ見て」
「何?」
「あそこに火がついてるよ」
「本当だ。魔女の火かな?」
「さあ、行ってみよう」
二人は火の方に歩いた。やがて、火の周りに人影が見えた。
「あれが魔女たちかな?」
「うわあ、本当だ。魔女の帽子とほうきを持ってるよ」
「すごいね。でも、どうしてこんなに静かなの?」
「さあ、近づいてみよう」
二人は魔女たちの近くまで来た。
しかし、そのとき、
「バカッ! 動くな!」
突然、声がした。二人は驚いて振り返った。
そこには、カメラと三脚を持った男が立っていた。
「何してるんですか?」
「写真を撮ってるんだよ。ヴァルプルギスの夜の魔女たちを」
「え? でも、あれは本物の魔女じゃないでしょ」
「そりゃあ、そうだよ。コスプレイヤーだよ。でも、写真に撮れば本物みたいに見えるんだよ」
「そうなんですか?」
「そうさ。これが俺の趣味なんだよ。ヴァルプルギスの夜にコスプレした魔女たちを撮ることだよ」
男は得意げに言った。
二人は呆然とした。
コスプレイヤーが、ヴァルプルギスの夜の、伝説の正体だったのだ。
と、二人は誤解したまま帰路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます