178日目 異世界-8

「まずい!! MPが切れそうだ!!」

そう叫んだのはクラールだ。

彼はもともと【魔弓士】として、中衛や後衛をしている。


【魔弓士】はSPを消費して矢を作り出す。

そのため豊富なSPはあっても、MPはそれほど多くないのだ。


「これを使って!!」

僕は【ストレージ】から魔鉱石を出してクラールへと渡す。

「ありがとう!!」


「狭間、魔鉱石の量を確認させろ」

「い、今ですか!?」

サワナ様が僕に言う。

戦闘中だぞ。


「そうだ。後衛はそれくらい余裕を持っておけ」

マジかよ。


集中だ。

【補助魔法】はまだ大丈夫。

さっき使ったばかりだ。

【空間魔法】で周囲を確認しつつサワナ様に魔鉱石を見せる。

「ほぉ……まぁまぁあるな。

 そうか……お前、日本というところで魔石の補充や生成、そして魔鉱石の精錬もしているな?」


「は、はい……」

「これは騎士団が重宝するわけだな。

 お前、第五戦線での戦いを覚えているか?」


「【ハイヒール】!!

 え? なんですか?」

「第五戦線で、私が魔石を集めていただろう」


「ローシュさん、左前方から魔物2体!!

 そうでしたね」

確か、僕とショーン、クラール、フヨウでサソリ型の魔物と戦った。

サワナ様が奥義で大量の魔物を一掃したんだっけ。

「【ハイヒール】!!」

にしても、戦闘中は余裕がないぞ。


「なら、優先的にこいつを【金属精錬】で合成しろ」

「い、今ですか!?」


「違う、日本に行ったらだ」

「そ、そうですね。すみません」

いや、だから戦闘中はきつい。


サワナ様が、空間から魔鉱石の原石を取り出し、僕に渡す。

結構あるぞ。

「りょ、了解です。【ハイヒール】!!

 これを、日本で【金属精錬】すればいいんですね?」

「そうだ。まだまだあるぞ」


マジかよ。

サワナ様が空間からどんどん魔鉱石を出してくる。


「それから、合成が必要な魔石も大量にあるな。

 対シャール用にもっと揃えておくか……

 おい、今渡した分の【金属精錬】はどれくらい時間がかかるんだ?」

「2、3日かかると思います」


「なに!?」

サワナ様が珍しく驚く。


「たったの2、3日か?」

「はい!!

 それから、【魔導合成魔法陣】がありますので、魔石の合成は並行してできます」


「クソ!! シトンめ!! 黙っていたな!!」

サワナ様が眉間にシワをよせる。


「いや、しかし良い誤算だ。

 おい!! 一旦集合しろ!!」

「はぁ……はぁ……」

ショーン、クラール、ローシュさん全員に疲れが見える。

ローシュさんも表情こそ変わらないが疲労はかなりあるはずだ。


「【召喚】」

サワナ様が片手を上へと掲げる。

【召喚魔法】?

聞いたことないぞ。


周囲に魔法陣ができ、魔物が現れる。

「コオォォォン!!」

「おい、あれ三尾じゃねぇか」

ショーンの言う通り、僕たちが以前第三戦線で倒したボス、三尾だ。


「まぁ2、3体いればしばらく持つか……【召喚】」

「コオォォォン!!」

サワナ様が再び三尾を召喚する。


「【召喚】」

「コオォォォン!!」

続いてもう一体、合計で3体の三尾だ。


「休憩だ。休んでおけ」

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