178日目 異世界-6
美味い。
僕たちは今、ショーンとローシュさんが倒してきた魔物の肉を食っている。
「野菜どうぞ」
僕は日本で育てた野菜を取り出し、【エアカッター】でスパスパと切る。
しかし美味い。
そもそも魔物の肉は美味いのだが、外界の魔物はさらに美味いな。
「野菜はありがたいね」
クラールとサワナ様は栄養バランスにこだわっているのだろう。
野菜も結構食べる。
「食い終わったら外界へ行くぞ」
「え? でもまだ僕たち【対魔結界】を習得していませんよ」
「そうだ。だから習得しに行くんだ」
サワナ様は生野菜にドレッシングをかける。
このドレッシングもかなり美味い。
ちなみにクラールが様々な調味料やドレッシングを常に持っているのだ。
「【結界魔法】の肝は拒絶だ。
お前らを魔物の中にぶち込む」
「え……」
「正気かよ」
「正気だ」
サワナ様は生野菜をもしゃもしゃ食べながら話す。
「この拠点から外に出て、ひたすら魔物と戦ってもらう。
条件付きでな」
条件て……嫌な予感しかしないんだが……
「お前ら全員で私と狭間を中心に戦ってもらう。
私と狭間に絶対に攻撃が来ないようにしろ。
狭間とクラールは常に全ての【結界魔法】を使いながら戦え」
「「はい」」
あれ?
意外と普通だな。
◇
食事の後、サワナ様の拠点の結界から出る。
ローシュさんが先頭、その右後ろにショーン、少し間を開けて左にクラール、中央に僕とサワナ様だ。
「いいか、極力魔物を近寄らせるな。
魔物とその攻撃、魔法まもちろん、塵一つこちらに流れないように注意しろ。
特にクラールと狭間は、【結界魔法】を使いつつ、徹底して意識しろ」
「「はい」」
なんとなくわかったぞ。
「何かを守りながら戦うことで【結界魔法】の習得を目指すってことです?」
「そうだ。そして、魔物への拒絶も同時にあった方が良い。
いいか、もし私や狭間に攻撃がきたらペナルティがあるからな」
「「………………」」
「うわ……最悪……」
僕とクラール、ショーンはなんとなく察する。
そして、ショーンは口に出してしまう。
ローシュさんはサワナ様の異常性を知っているのだろうか。
中央東の騎士団のリアクションでは、周知のようだったが……
「少しでもこちらに攻撃がきたら、お前らにはこれを装備してもらう」
サワナ様はそういうと、【ストレージ】からアイテムを出す。
黒いブーメランパンツと、同じく黒いスケスケのシャツ。
何故か背中に羽がついており、クソダサいデザインだ。
ラメが入っているのだろうか、若干キラキラしていてダサさを上乗せしている。
「「「………………」」」
僕はローシュさんのほうを見る。
ノーリアクションだ。
相変わらず無表情で何を考えているかわからない。
「あの、ローシュさんはそういうキャラじゃないですよ」
サワナ様に言っておく。
「いや、僕だってそういうキャラじゃないよ」
「てゆうか、これを好んで着るやつなんていねぇよ」
クラールもショーンもあからさまに嫌がっている。
「知ったことか」
サワナ様は不敵に笑う。
「………………」
ローシュさんは終始無表情のノーリアクションだ。
一体何を考えているのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます