178日目 異世界-5

ボトリ……


「おぉ!!」


クラールの上部1mあたりに泥が落ちる。

彼が新たに習得した【狭域耐物理結界】により、泥が遮断される。


「………………」

クラールが目を輝かせ拳を握る。

このやり切った感はなんだろうか……


「しかし、【土魔法】って特殊なんですね」

「何故だ?」


「発動するまでは魔法なのに、発動した土や泥、石は物理攻撃に近いというか」

「そうだな。

 しかし、魔法であることに変わりはない。

 そこらへんに転がっている岩をぶん投げるのと、【土魔法】で生成した岩をぶん投げた場合に違いはきっちり出るぞ」


「そうなんですか?」

「あぁ、前者の威力は力に依存し、後者の威力は魔力に依存する。

 それに、【土耐性】は魔法にのみ有効だ」


「なるほど」

しかし、どういう原理なのだろうか。

岩や土と魔素の関係っぽいな。


「確かに……だとすれば【土魔法】の泥は見た目ほど不潔ではありませんね」

クラールが顎に手を当てて考え込む。

「そういうのって知ってると、泥への嫌悪感が下がるの?」


「あぁ、そうだね。

 自然の泥の場合、【浄化魔法】を使うなりしないと、小さな虫がいたりするだろう?

 【土魔法】で発動させた泥の場合は、そもそもそこに生物はいないからね」

「なるほど。じゃ、そもそもクラールは虫が嫌いってこと?」


「いや……醜いものは全般的に好きではないよ」

「じゃぁ結局【土魔法】の泥もアウトって感じか」

「おい、究極にどうでもいい話をしてるんじゃない。

 【結界魔法】の修行を根本から見直す必要がある」


「え? これからじゃないんですか?」

サワナ様にバンバン【土魔法】を撃ってもらえば、かなりの強化が期待できる。


「ダメだ。

 お前に魔法を撃ち込んでも拒絶反応がないからな、【土耐性】が上がって終わりだろ。

 【結界魔法】の強化や習得につながらないわけではないが、もっと効率が上げられるはずだ」

「えぇー……」

それは残念だ。


「それからクラール」

サワナ様は僕のリアクションを無視して話を続ける。

「はい」


「【狭域耐物理結界】の習得で一旦この訓練は終わりだ。

 外界で最も必要な【結界魔法】は【対魔結界】だからな。

 魔物の侵入を防ぐことができれば、外界へ遠征できる」


「では、次は?」

「ふふふ……」

サワナ様が不敵に笑う。

どうせろくなことを考えていないのだろう。

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