178日目 異世界-4

「実は、僕もこの前【結界魔法】を習得したんです」

「なに?」


「騎士団との外界遠征で魔法を数時間浴び続けたんです。

 そしたら【結界魔法師】と【結界魔法】、【広域耐魔法結界】を習得しました」

「ほぅ……」

「すげぇな、いよいよ万能お化けだ」


「さすがはケンだ!!

 サワナ様、ケンが【結界魔法】を使えるなら僕よりも適任です。

 魔法はケンに任せるべきですね」

クラールが生き生きとサワナ様に話す。

「いや、ダメだ。

 外界は持久戦だからな。

 【結界魔法】が使えるやつは多ければ多いほどいい」


「いや……でも……」

「往生際が悪いぞ。

 なんなら、泥じゃなくて糞にしたっていい」

何?

泥?

糞?

どういうことだ?


「はい……わかりました」

クラールがあからさまに落胆する。


「決まりだな。

 狭間とクラールは【結界魔法】の修行。

 ローシュとショーンは引き続きペアで狩りと組み手だ」










建物の外には、テーブルとティーセットがあり、サワナ様が優雅にお茶を飲む。


「狭間はとりあえず訓練の流れを見ておけ」

「はい」

【結界魔法】の修行か。

何か特別な鍛え方があるのだろうか。


「おい、さっさと【結界魔法】を使え」

「はい……」

クラールの周りに一瞬光の膜が見えた。

【結界魔法】を発動したのだろう。


「あれが【超狭域耐物理結界】だ。

 自分の周りのみに展開できる物理結界だな」

「なるほど……潔癖のクラールらしい魔法ですね」


「いくぞ」

サワナ様が合図すると、クラールの上2m程度から何か落ちてくる。

あれは【転移】か?


ボタボタ……


いや、【土魔法】だな。


「ひぃ……」


泥だ。

ただの泥がクラールの上から落ちてくる。


「あの、これが修行なんですか?」

「そうだ」


潔癖のクラールに泥がかかる。


「ひぃぃ……」

「クラールが汚れているところは初めて見ました」

ただの泥だが、彼にとっては相当苦痛なはずだ。


「いや、実際は汚れておらん。

 【超狭域耐物理結界】が発動しているからな。

 結界の上に泥が乗っているにすぎん」

「ひぃぃいぃぃ……」

「それでも相当嫌なんでしょうね」


「ぼ、僕の髪に泥がぁ!!」

「えっと、僕は何をしたらいいんでしょうか?」

同じ【結界魔法】を鍛えるとしても、僕が泥を被ったところで何も習得できる気がしない。


「お前は【広域耐魔法結界】を習得したと言っていたな。

 だったら魔法だな。

 お前、一番耐性の低い属性はなんだ?」

「【土耐性】は持ってないですね」


「ならお前も【土魔法】だな。

 クラールの横に行って【結界魔法】を使ってこい」

「はい!!」

「ひぃ……ひいぃぃ……」


僕は小走りでクラールの横へ行く。

「ひぃぃ……」

「僕の【結界魔法】は耐魔法用ですけど、使った方がいいんですか?」

「そうだ。使っておけ」


「ひぃぃ……」

僕は悲鳴を上げるクラールの横で【広域耐魔法結界】を使用する。

「できました」


「いくぞ、避けるなよ」


サワナ様が合図すると、石の塊が飛んでくる。


ドガッ!!


僕の右肩に石がめり込む。

これは【ショットストーン】なのか?

にしては威力が強いぞ……


「フフ……」

これは良い。

さすがサワナ様だ。

これを機に【土耐性】を習得できるし、HPも上がる。

その上新しい【結界魔法】まで習得できる可能性がある。


「サワナ様!! 次の【土魔法】お願いします!!」

「ダメだなこれは……魔法がご褒美になっている。

 拒絶反応がなければ新しい【結界魔法】の習得は厳しいぞ……

 (【狂戦士】が発動する懸念もあるな)」


「フフフ……」

「ひぃぃ……」

「………………」


「フフフフ……」

「ひぃ!! ひぃぃ!!」

「………………」


「次!! お願いします!!」

「ひぃ……あ!! 【狭域耐物理結界】習得しました!!」


「え!? もう!?」

さすがはクラールだ。

早くも新しい【結界魔法】を習得したのだ。


「なんなんだコイツらは……」

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