178日目 異世界-3

ショーンが本気で構えると、ビリビリと周囲に威圧感が伝わる。

彼の周辺の小石がカタカタと震え出す。


「あ、あれ……大丈夫なの?」

僕はクラールに聞く。

「さぁ……?」

クラールも苦笑いだ。

サワナ様がすごいのは知っているけど、強力な近接攻撃に対応できるのか?


「この技はタメが必要なんだよな……」

ザァ……

水だ。

ショーンの周りに水が集まっていく。


ダッ!!

ショーンが踏み出すと、その後を水が渦を巻いて追う。


「【水龍天衝撃】!!」


バキッ!!ズドーン!!


凄まじい衝撃があたりに響き渡る。


ビキビキ……

サワナ様の前に半透明の結界のようなものができている。


ヒビだ。

結界にビキビキとヒビが入り、さらに、ショーンの槍の後ろには水が渦を巻きながら尖っていく。


これは……槍と水の連撃か?


ズドオォォォ!!


鋭い水流がサワナ様のシールドにめり込んでいく。


ビキビキ……


げ……


二重だ。

サワナ様の目の前にあるシールドのようなものが2層になっている。

表面のシールドを突き破るが、2層目のシールドにショーンの技が止められている。


「ぐ……うおぉぉぉ!!」


ビキビキ……


ショーンがさらに踏み込む。


2層目にもヒビが入っているぞ!!


「ほぉ……」

しかし、サワナ様は涼しい顔をしている。


「はぁ……はぁ……ダメか……」

ショーンの攻撃が終わる。


「今のはなんですか?」

クラールがサワナ様に聞く。


「【魔法障壁】だ。物理だけでなく、魔法や属性攻撃全てを防ぐ魔法だな。

 無意識に5枚は展開している。

 その気になれば200枚程度【魔法障壁】を展開することが可能だ」

「「「なっ!!」」」

それは無理だ。

どうにもならない。


「くっそぉ……」

ショーンは悔しそうにしているが、200枚は規格外だろ。


見た感じフル補助【魔影装】の【フレアバースト】で1枚目にヒビが入るかどうかってレベルだと思う。

仮にあのときの人面が猛攻したとしても、サワナ様には全く届かないだろうな。


「わかったら人の心配なんぞせずに、自分の修行をするんだな」

「へいへーい」


「さて、狭間はどうするか……」

サワナ様は僕を見て上唇を舐める。

なんだか嫌な予感しかしなんだが……


「えっと……サワナ様の目的は、外界の調査とシャールさんを誘き出すためなんですよね?」

「そうだ。まぁ誘き出すといってもやることはないからな。

 当面は外界の調査だ」


「なるほど」

「しかし、お前らを連れて外界への調査はいけない」


「え?」

「お前ら全員を守りながら進んでは、流石に私のMPが持たないからな」

守る?

マジかよ……


「狭間、お前も外界の魔物の多さは知っているだろ?

 外界では、魔物の殲滅力と同時に、戦い続ける持久力が必要だ」

「はい」

確かに、騎士団はその持久力がずば抜けていた。

永遠と戦っていられるからな。


「騎士団の人数と役割ならば、戦い続けることが可能だが、このような少人数パーティでそれは無理だ」

「確かにそうですね……えっと、サワナ様は今までどうやって外界の調査を?」


「【結界魔法】だ。ある程度魔物を殲滅した後に【結界魔法】で休息をとる。

 ま、それの繰り返しだな。

 お前らを連れていくとしたら、その【結界魔法】での消費が激しくなるからな。

 そこで、今こいつの【結界魔法】を訓練している」

サワナ様が親指でクラールを指す。


「え? クラールが魔法を?」

「あはは……」

クラールは乾いた苦笑いをする。


「どっかの誰かさんが、第六戦線洞窟内で魔物の内臓をばら撒いただろ?

 それに過剰な拒否反応が出て、【結界魔法】を習得したらしいぜ」

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