173日目 異世界-3

「うおぉぉ!!」

ガキンッ!!

ドゴッ!!


激しい戦闘音が響く。

かれこれ1時間くらいは戦いっぱなしだ。

前線の魔物は減ってきているが……


ドガッ!!


僕は前方から飛んでくる炎を棺の蓋で受け止める。


「狭間様!! 左です!!」


ピシィッ!!


今度は左から氷の矢だ。

まずいな。

近接攻撃の魔物は、前方の騎士や左右に展開している騎士のカウンターで徐々に減ってきているが、魔法攻撃は衰えていない。


さらに、前方と左右、僕たちを包み込むように魔法攻撃が繰り出されている。


バキンッ!!


盾スキルを極めた【聖騎士】は魔法攻撃をも弾くことができる。

しかし……


「はぁ……はぁ……」


魔法の遠距離攻撃を弾くことができても、反撃ができるわけではない。

100人の騎士団全体に、徐々に疲れが見えてくる。


「ローシュ!! こっちへ!!」

「はい!!」


トロゲンさんが前線からローシュさんを呼び寄せる。


「狭間様!! 【フィールドヒール】の消費はどれくらいでしょう?」

「はい!! 【エリアヒール】より多く、【エリアハイヒール】より少ないMP消費です!!」


「なるほど!! では、狭間様の回復は【フィールドヒール】のみでお願いします!!」

「え!? 大丈夫なんですか!?」

それだとMPの節約にはなるけれど、回復は間に合うのだろうか。


「どうだ? ローシュ」

「はい……問題ありません」

えぇ!?

マジかよ。

問題あるだろ。


「狭間様!! 前方とそこから左右の状況を教えてください!!」

「はい!!」

僕は前方と左右に【遠方認知】を使う。


「やはり、前方に魔物の集団があります!!

 大型の魔物もいて、待ち構えているようにも見えます!!

 左右にも少数ですが魔物がいます!!

 全部魔法を使ってこちらを狙っているようです!!」


「ありがとうございます!!」

「どうするんですか!?」

このままだと魔法の的だ。

どこかで距離を詰めないと反撃できない。


「………………」

トロゲンさんがローシュさんのほうを向く。


「守備隊系で、どれくらい持つ?」

「この攻撃がピークとするならば、持続可能です。

 狭間様のMPも【フィールドヒール】のみなら、一日中持つはずです」


「な!? ほ、本当ですか!?」

トロゲンさんが驚き、僕に確認する。

「はい!! 【フィールドヒール】のみなら、1日持ちます」

しかし、それは魔鉱石のMPや魔石を使っての話だ。

ローシュさんはそこまで考えたのだろうか。


トロゲンさんがローシュさんの方を向き、無言でうなずく。


「玄武陣形!!」

トロゲンさんがスキルを使ったのかと思うほどの大声を出す。


すると、騎士団全員が動き出し、これまで縦に伸びていた陣形が変化する。

僕を中心としたまま、正八角形の陣形となる。


「な!?」


さらに、僕の周囲の10人程度は、座り込み、目を閉じている。

この激戦の中で休憩!?


そして、正八角形の外側の【聖騎士】はカウンタースキルを使い続け、進軍は完全に停止する。


【フィールドヒール】!!


僕が【フィールドヒール】を使うと、全員が回復する。


たしかに、進軍を止め、完全に防御に徹すればかなりの時間持つと思うが……

これではひたすら敵の的なのでは……?

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