173日目 異世界-2
「狭間様!?」
「トロゲンさん!! 新スキルを習得しました!!
【フィールドヒール】です!!
一度で騎士団全員を回復できるようです!!」
「おぉ!! それは素晴らしい!!」
戦闘中にトロゲンさんの大声が響く。
拡声器を使っているんじゃないだろうか。
「狭間様が新スキルを習得された!!
自己回復は8割程度にして、MPを温存しろ!!」
「「「オオオォォォ!!!」」」
地面が震えるほどの声が響く。
凄まじいな。
そしてトロゲンさんの判断も早い。
あえて全回復せずに、8割程度の回復量にすれば、僕の【フィールドヒール】に無駄が無くなる。
完全に統率されているあたり、一見体育会系のように思えるが、実はそうでもない。
戦闘や補給がロジカルに組まれているため、ルールが絶対ではないし、その都度臨機応変に対応しているのだ。
日本の体育会系のような、いいから黙って言うことを聞け的な感じがない。
トロゲンさんもそうだが、【聖騎士】一人一人が考えて行動しているのだろう。
まぁでなければこんなふざけた棺桶を中心に置かないよな。
ガギンッ!!
ドドド!!
「ウオォォ!!」
「ローシュ小隊長!!」
戦闘が激化し、ローシュさんが前に出る場面が増えてきた。
トロゲンさんもずっと僕のそばにいるわけではなく、前線での戦闘もおこなっている。
しかしすごいな。
ローシュさんとトロゲンさん、他に2名ほどカウンタースキルを発動させまくっている【聖騎士】の方がいる。
彼らはカウンタースキルをほぼ完璧に発動させるため、HPがほとんど減らないのだ。
そして、戦闘が激化するにつれ、道幅が広くなっている。
これは騎士団としては助かるだろう。
狭い道で戦闘が激しくなっては隊列を保つことができない。
道が広いということは、この先に何かあるのだろうか。
僕は【空間魔法】の【遠方認知】で進行方向、石畳の道の先を確認する。
うわ……
魔物がうじゃうじゃいる。
さすがは外界だ。
こんなところに人間が住めるわけがない。
肉眼では見えないが、奥は少し広場のようになっているのか?
人工物の残骸、そして大型の魔物がいる。
「トロゲンさん!!
奥に広場と人工物!!
大型の魔物が複数います!!
サイクロプスのように見えます!!」
第六戦線にいた魔物で、僕が【ギロチン】で仕留めた魔物だ。
あのときは一体だけだったが、少なくとも三体はいるぞ。
「承知しましたぁ!!」
バキンッ!!
氷の矢が飛んでくる。
【氷魔法】だな。
棺の蓋で受け止めるが、若干凍ってしまう。
このあたりになると、物理攻撃だけでなく、魔法攻撃も入ってくる。
ここまで攻撃魔法が来るということは、前線はもっと激しいだろう。
僕は再び【遠方認知】で前線を確認する。
ガキンッ!!
おぉ……すげぇ……
盾で魔法を振り払い、ダメージを抑えている。
盾系のスキルは極めると魔法まで弾けるんだな。
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