167日目 異世界 後編-2
「誰か、攻撃で手のあいている者はいるか!?」
騎士団の訓練の中、トロゲンさんがよく通る大きな声で呼びかける。
ここの訓練場は、カウンタースキルを習得するためのものだ。
攻撃側と防御側がおり、防御側が盾スキルを使用し、カウンタースキルの習得を目指している。
攻撃側の騎士数人が、トロゲンさんの呼びかけに反応し、近づいてくる。
「この方へ攻撃をおこなってもらいたい」
トロゲンさんが、僕のほうへ手を広げ、促してくれる。
「華奢ですね」
「怪我させても構わないならやりますよ」
確かに、ここの騎士団の方々に比べると僕は小さい方に入るな。
華奢と言われても仕方ない。
ここの人たちは平均180cmくらいあるんじゃないだろうか。
「狭間です!! よろしくお願いします!!」
僕は頭を下げて挨拶をする。
「……え?」
訓練で騒がしかったあたりが静まり返る。
あれ?
なんで?
「狭間って……あの?」
騎士団の一人がトロゲンさんへ問いかける。
「………………」
トロゲンさんが無言でうなずく。
「おい……」
「サワナ様の弟子っていう?」
「そうらしいな」
「ミドーさんを半殺しにしたって噂だ」
「いや、ミドーさんは死んだって聞いたぞ」
「嘘だろ……」
「俺もだ」
「狂ったように笑いながら戦ってたんだろ?」
「らしいな……」
「拳が爆発するって話だ」
「マジかよ。そんなスキルあるのか?」
「ミドーさんの腹が爆発して、内臓が飛び散ったって聞いたぞ」
「………………」
いや、おかしいだろ……
ミドーさん生きてるし。
確かに拳は爆発するけど、内臓は飛び散ってない。
中央東の情報どうなってんだよ……
「ゴホン!! では、マッソ。お前が攻撃してくれ」
「えぇ!? ちょっと待ってくださいよ!!」
「なんだ? 先程構わないと言っていただろう」
「いや、聞いてないっていうか……」
「あの、ミドーさん死んでませんよね?
誤解を解いていただければ……」
僕はトロゲンさんに言う。
「わかりました」
マジで頼むよトロゲンさん。
ミドーさんが死んだなんて噂は即否定してくれよ……
「あぁーいいか、お前ら。
ミドーは死んで無い。死んではいないのだ!!
だがくれぐれも狭間様を怒らせるなよ!!」
「え…………?」
いや、何その言い方……
確かに死んでないけど、噂の否定が弱い。
あと僕が危険人物みたいな誤解はより深まらないか?
「内臓も飛び散ってませんけど……」
「いいかお前ら!!
内臓は飛び散ってない!!
ミドーの内臓は飛び散って無いぞ!!
だがくれぐれも狭間様を怒らせるな!!」
いや、待て待て。
言い方、言い方よ。
最後のいらなくない?
「僕はそんなに怒りませんけど……」
「いいかお前ら!!
狭間様はめったに怒らない!!
だからくれぐれも怒らせるな!!」
この野郎……
わざとやってるんじゃないだろうか。
いや、しかしイライラしてしまうとさっき言っていた怒らないを即否定してしまうことになる。
「よ、よろしくお願いします」
僕は深々と頭を下げる。
今後の行動で誤解を解いていくしか無い。
「やけに低姿勢だな……」
「怒らせるとまずそうだ……」
……時間はかかりそうだ。
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