第48話 アリーズの演説
「ナタ。行こう」
僕は騒然とする現場を逃げるように後にした。
なぜなら、ジャッカルとセアルが剣舞を披露している横で、笑い顔の仮面が僕に手をふったように見えたからだ。
僕は変装をしていたし、とりわけ目立つ行動をしていたわけではない。大勢が見守る中で仮面の道化師がどうやって僕を見つけたのかはわからない。彼はどこまでも見ているようで、どこも見ていないのだから、それは僕の気のせいだったかもしれない。
怖い。
「ナタ。あれ見た? 笑い顔の仮面――」
僕は安全だと思える距離を歩いた後で、ナタにだけ聞こえる声を出した。
笑い顔の道化師は、ノウルの王様を殺し、ザッハダエルでは王の妃を殺して周囲の人間の気持ちを弄んだ悪人だ。各地で彼が戦争を起こしている。
「あいつ、ヘルメスを占った奴だろ?」
ナタは、僕たちが出会った占い師こそ、話題の道化師だと指摘した。
「うん。そうかも。同じ仮面をした別人ってことはないと思う」
実際に笑い顔の道化師をクジャアザゼルの傍で見てしまうと、その禍々しい気配がまぎれもなく殺人鬼のものだと確信できた。
僕が急いだ理由はそれだけじゃない。
僕は次に口元を覆ってしまう。
「どこかで火事?」
そんな匂いがした。呼吸が苦しくなるのは、燃えた灰の欠片が僕の喉を刺激するからだ。焚火の煙を正面に浴びれば似たような状況にもなるだろう。
だけどこの人混みの中、焚火は不自然だった。火を扱う露店はあったが、煙からは食欲をそそる香ばしい匂いはしてこない。
「火事?」
ナタは人だかりの先を見るが、火の出所はわからないらしい。
「この焼けるような匂い」
「そうか?」
「ナタは匂わない?」
僕は、ふいにイザリースが炎の中に消えた日を思いだした。これが僕だけが感じる匂いならば、それはあの日に繋がっている匂い。
つまり、僕はクジャアザゼルやアリーズを近く感じただけで、僕の身体が記憶した苦しみを思いだしてしまうのかもしれない。
イザリースの全てが燃えて消えたあの時の――。
僕の意志とは関係なく、
気がつかない内に、僕の魂は悲鳴をあげる――。
そんな僕を見て、シェズやリッリも世界の歪みを感じただろう。
僕が小舟に戻ってクジャアザゼルやアリーズのことを話すと、
「遠目に見ている分には、あいつら、まるで英雄だな」
そんな光景があるだけだとシェズは言った。
傍目には格好いい集団が王様にも物怖じせずに挨拶していく姿があって、それを人は英雄と呼んでしまうのだろう。
僕たちはリッリやシェズを引き連れて、謁見待ちをする人だかりの広場を遠巻きに眺めていた。そこには、ヒルデダイト皇帝を追いかけて集まったきた民衆もいる。
僕は近づきたくないと一度は断ったが、
「ヘルメスが見たという火の神やアザゼルという男を一度見てみたりや。出てきたら教えてくりゃ」
とごねるリッリを説得するためには、一度彼らと引き合わせるしか方法がないのも事実だった。
「ここから見えるかどうかわかりませんけど」
と僕はリッリたちを案内する。
「よいよ。セイズを見ればだいたいのことは察しやり」
賢者はそれで納得してくれただろうか。
キマイラを図柄にするヒルデダイト国旗が広場にも並びはためいた。黒や赤色の鎧をまとった戦士たちが民衆をおしのけて舞台を作った。
これを見ようと集まってくる野次馬たち。多くの参列者はまだ貢ぎ物を抱えて並んでいただろうが、それどころではない。
「ヒルデダイトの奴らが出てきたか」
ナタは、赤い制服の戦士たちが出てきたところで群衆の中で背伸びした。僕はリッリにせがまれて、彼女を肩車する。
振り返っても、祭りの景色は変わらない。そこは未だにミツライムの神々の見守る中、ファラオの栄光は色あせてはいなかった。人々が期待していたのはファラオのほうだったか。
「セアル……」
シェズはそこに友人の姿を見つけただろう。もともとシェズもヒルデダイトで騎士をしていた過去がある。
「知り合い?」
「昔一緒に騎士をしていた奴がいる。だけど、あたしのほうは指名手配されてて、たぶん死んだことになってるんだよね」
それは哀しい過去かもしれないが、今は隣に友人たちがいるから大丈夫だとシェズは答えた。
そのシェズが隣を見るに、
「お前のほうこそどうなんだ。知り合いでもいたか?」と言いたくなるナタ顔があった。
「知り合いっていうか、アリーズって奴。イザリースに攻め込んできた奴だ。アーセナの兄らしい。あいつ火の剣持ってるぞ。それに笑ってる顔をした占い師がいる。あの時のやつだ。やっぱりあいつヒルデダイトの奴か」
アリーズやクジャアザゼルのほうは、イザリースを滅亡させた張本人たちで、彼らがどれくらいの人間の命を奪ったかは計り知れない。
だけど、彼らがヒルデダイトの国旗を背景にして巨大な柱の並ぶ道に並ぶと、ミツライムの群衆は歓声をあげる。ファラオを崇拝するのと同じだけの声援がそこにあった。
僕には納得できないことだが、ミツライムの民衆からすればヒルデダイト国の戦士たちもそこでは英雄になるらしい。
クシャラアザゼルが赤いマントを翻し、
軍師アリーズが傍らに立つ。
アリーズの纏う赤いコートは燃えるように鮮やか。今にも燃え上がりそうなそんな空気が纏わり付いていれば、人はそこにミツライムの神々とは違う力を感じただろう。
それはヒルデダイトをよく知るシェズをも黙らせる布陣。
ヒルデダイト軍の幕僚であるシャックスやハルファスと言った騎士が並び、剣聖グラシャラフラースと美しい剣士セアルが護衛として横を固めた。シェズが冗談さえ言わないのだから、それだけで彼らの実力は計り知れる。
端には笑い顔の道化師。
彼らが携える武器はすべてが燃えるような鉄の輝きを持つ。
ミツライムであるのに、その場所だけはまさにヒルデダイトの天下にあった。
アザゼルはそこで宣言した。いや正確には、アリーズだ。彼がアザゼルの前に出た。
「我らはヒルデダイト帝国からオプト祭を祝福に来た。これまで我が帝国とミツライム国の民は長きにわたって平和条約を遵守してきた。我らは、ファラオラムセス二世と歓談しこの誓いが永遠であることを確認した。ゆえにミツライムの民はヒルデダイト帝国のアザゼルにとっても等しく宝である」
この言葉に、ミツライムの誰もが酔いしれたことだろう。
僕が耳を疑ったのは次の内容だ。
「ファラオから話は聞いた。今このミツライム国では子供たちが攫われていくという大事件に、多くの民が嘆き悲しんでいると言う。我々としてもミツライム国の盟友として心が痛むところである。ミツライムの子供たちが損なわれるのは、我らアザゼルの子が失われるのも同じ。今回の事件の概要を聞いた時、私にはとても耐えがたいものがあった」
アリーズは火の剣を抜いた。
眼前に掲げるのは、炎がほとばしるような赤い剣だ。
それは見るものを炎で照らし、心を熱くするようにも思えた。
奴隷たちの間で歓喜する声が溢れた。彼らはついに救いが来たと歌う。
「今ここには私たちがいる。これは偶然ではないと思いたい。アザゼルとこの剣に誓って、我々が子供たちを取り返す」
アリーズのその目は民衆を見ていない。世界を見ていただろうか。
「あいつらが子供を攫わせたんじゃないのか。ど、どういう風の吹き回し?」
シェズが首を傾げれば、
「聞きたいのは俺のほうだ。あいつらイザリースで何をやったか忘れたわけじゃないだろう。人間を殺しまくっていたはずだぞ。そんな奴らが子供たちを助けるって、どうなっている?」
ナタも聞き間違いかと僕に確認してくる。
「わからないよ。こう言う場所だから、あの人たちも本当のことを言ってるとは限らないし」
僕には何も判断できなかった。
しかもだ。
「人攫い事件の犯人ってウバル将軍だったでしょ。ううん、ウバル将軍はすでにいないのかもしれないけど、ミツライム軍の中に協力者がたくさんいるはず。それってヒルデダイト軍と協力していて、でも一部の人が勝手にやっていただけってことかな」
と、ミツハ。僕たちが、こんなことを考え始めると何が起きているのかがわからなくなる。
つまり、
「リッリさんはどう思います?」
僕は賢者の意見に耳を傾けることになる。
だけど、
「そろそろワレの結界も限界。話したいことは山ほどありき、まずはここを離れりや」
リッリは僕の耳元で囁いた。
「何が限界なんです?」
「結界」
「それが限界だとどうなるんです?」
「精神に異常を来したり、身体に不調が出やりや。ワレが目をつけられれば、平穏も失われり」
それを聞いて、
僕はアザゼルを前にした貴族三人組を思いだした。突然泣き始めたり、床に這いつくばったりしたのは彼らだけではない。僕は距離をとっていたからそうならなかっただけで――。
あんな世界に呑み込まれるのはごめん。
「ナタ、シェズさん、ミツハちゃん。モーセさん」
僕は仲間を呼んだ。「リッリさんが逃げたほうがいいって」と催促すれば彼らにも状況はわかるだろうか。
「何、もう行くのか? あいつらの演説最後まで聞いていこうぜ。クジャとかアリーズって奴の名前はちらほら聞いていたけど、実際に見るのとでは随分違うな。なんかヘルメスと違ってさ、本物の英雄って感じじゃない?」
シェズはそんな風に言うが、
ナタが無言で彼女の肩を押せば、そこまでだ。
この一日でいろいろ動きはあったと思う。
「改めてファラオの返事を聞かせてくりゃり」
小舟に戻ったところで、リッリは杖を握ったまま、僕に問いかけていた。
「ファラオの返事なんてありませんよ。もう面会は終わったから出て行けっていわれただけで」
僕が言えば、
モーセは深いため息をついた。思い返したところで、僕たちの話に実りはない。
「相手にもされておらん」
それはファラオを怒らせる以上にモーセには辛いことだったかもしれない。勇気を出して直談判したのに、まるで意味がなかったのだから。
「相手にされてりかどうかは、これから分かること。しばらく様子をみりゃりや」
リッリは、「それはそれとして」と、ここから見えるヒルデダイトの軍船を睨んだ。
軍船には僕にも警戒感がある。
「それよりさっきの話。ヒルデダイトの皇帝が子供を取り返すって約束をしてましたけど。あれって信用していいんでしょうか」
僕たちにとってこの話もまた重要だった。
「ワレにもそう聞こえやり」
リッリが頷くのならば、僕は次の疑問をぶつけるだけ。
「僕たちって攫われた子どもたちを助けるつもりでしたよね。もうその必要はなくなって、良かったってこと?」
「子供らが見つかれば、そうなりん」
「でも子供を攫っていたのって、ムルムルとかエキドナ。あれってヒルデダイトの人たちでしたよね。それをヒルデダイトの皇帝が探すってことは、意味があることなんでしょうか――」
「十中八九、必ず子供は出てきやり。子供を外国に売り飛ばすにしてもその先はおそらくヒルデダイトあたりやり。自分で自分の部下がやったことを晒したりや、そりゃあ事件の解決ものぞめり」
「ですよね?」
僕がここで安堵した顔をしようとすると、
軽蔑した視線になるのはミツハだ。
「うさんくさい話。どうしてヒルデダイトの皇帝が出てきて、わざわざそれをするの? これはミツライム人の問題じゃない。あいつらには関係ないわ」
「そんなこと言われても、案外ヒルデダイトの皇帝にも良いところがあるとか? 自分の部下がミツライムで犯罪をやっているのがわかって慌てているとか?」
僕の言葉に、ミツハは頷かない。
むしろ彼女がナタに寄り添うのはいつものこと。
「ヒルデダイトが子供を人質にして何か交渉したのかもしれない」
ナタはこう考えたのだろうけど、
僕はその推測はどうかと思う。
「人質をとって交渉するのに奴隷の子供を使う? 人質ならファラオの妃とか他に利用したい人はいると思うけど」
「だけど、部下が子供を攫って儲けていたとして、それを帰す必要があいつらにあるのか?」
「盗んだものを返さないってこと?」
僕の疑問には、
リッリが即答だ。
「返せば、盗んだことを認めるようなものなや。ヒルデダイトのあのクジャアザゼルがそのような弱みを見せるとは思えやりん」
「だからさ、自分で探して、違う場所から見つけましたってことにして――」
「子供はもの言わぬ石ではなかりや。証拠を残してどうしやり? 見つかって困るなら、消し去りや」
「そんなことできる人間って」
「あれはイザリースも消し去りや」
それを言われると、僕は返事に困った。アザゼルが過ちを冒したとして、歴史ごと消し去るのがアザゼルのやり方に違いない。
「じゃあ、これって子供が戻ってきて良かったねってことにはならないってこと?」
僕はリッリに問う。
リッリは可能性を考えて、余計な推測を口には出さないが、
ナタは僕に期待するなと言った。
「ヒルデダイトがこの事件に噛んでいるのは違いないだろ。あそこまで見栄を張って演説しておいて、駄目でしたって結末はない」
「最初から成果が約束された演説?」
だからアリーズたちは自信に満ちあふれて、まるで英雄のようにも見えたわけだ。
「ヒルデダイトが何を考えているのかがわからないなら、ファラオ側から何かわかることはないか?」
「ファラオ側って」
「ファラオはヒルデダイトにこの案件の解決を投げたわけだろ。猫の手も借りたいって状況だったか、あるいはファラオとヒルデダイトの間で話がまとまっているのか」
ナタの疑問に付け加えるなら、
リッリの言葉。
「子供攫いは愉快犯ではなき。利益がでるからウバル将軍が動いてり? この結末で誰がどんな利益を手にしやり。それを考えれば、あるいは――」
僕には聞いたことのあるロジックだった。
「利益って商売の基本だったね。そっか、それを見れば何が起きているのかわかるかも?」
「わかれば、ワレらで結末に先周りできりや」
「僕たちで結末を変えられるんだ」
これは僕の得意分野じゃなかっただろうか。
僕が前向きになったところで、
「次の準備ありや。さっさとそれも支度しおれ」
賢者はこうなると俄然元気だ。モーセが落胆する暇もない。
「どこに行くんです?」
次の展開はすぐ。
リッリは得意げに言った。
「クフ王のピラミッドというものありや。壮大なものらしき。ワレは是非行ってみたいと思うてり」
「それ事件に関係あるの?」
「事件はヒルデダイトが調査して解決しやりや。解決を待っている間、ここでぼうっとしておりんや? もっと有意義な時間が使い方がありん。わかったらそれもワレを手伝うり」
これが賢者の主張だった。
「ミツハちゃんが納得する結末になるかわからないから、僕たちで調べてみようってことじゃなかったの?」
僕は小舟にしがみつく。ミツハやモーセが見ている中で、諦めるという言葉はなかなか出てこなかった。
「物には順番ありけりや。まずは人攫いの事件を解決しやり。これは少し待っていれば良き。カラクリも待っているだけで判明しやりや。その後で奴隷を解放してカナンに連れ帰る道を探れり」
賢者は杖で僕の指先を叩いた。早く支度しろと催促する動きだ。もうピラミッドに行く気まんまんな様子だった。
「ピラミッドなんかに行ったら、数週間は出てこないじゃないか」
リッリが必死なら、僕も必死だった。一度リッリがピラミッドに張り付いたら、それを剥がすのにどんなに苦労するのか。
「もしやと思うてりが」
「何?」
「子供らを隠す場所に心当たりがありんや」
「え?」
僕は賢者の言葉に手を緩めてしまった。「どこ?」と聞いた僕の顔はまぬけだっただろうか。
「あれだけ大勢の子供らや。ピラミッドのような建物でもなきゃ無理というもの」
「ピラミッドより怪しいところはたくさんあるじゃないか」
僕は叫びそうになった。
とにかくピラミッドじゃないと言いたい。もしピラミッドだったとしても確証を持たなければ納得なんでできなかった。
「ピラミッドが一番怪しかろが」
それはリッリの願望。
「他にも怪しいところはあるよ」
「ヘルメス、それが考える怪しきところとはどこなり?}
言ってみろと賢者は意地悪な言いよう。もし僕が答えられなければ、ピラミッド旅行にでも行ってしまいそうだった。
だから、僕は、
「どこにでもあるよ」
と、ヒルデダイトの船を指差してしまう。それはずっと僕たちの目の前にあるのだから。
「船?」
この時、ナタが僕とリッリの顔を見た。「あの船、そう言えばやけに数が多いな。あの船に貢ぎ物を満載していたとも思えない。貢ぎ物を運んでいたわけじゃないとすれば」それは何が積まれているのか。
ナタは、クフ王のピラミッドまでの道のりを地図で確認しようとしていた賢者の耳を引っ張った。「あの船、一緒に見にいこうぜ」と賢者を誘うのは、賢者の知恵がほしいからだ。
しかし、リッリはそんなナタの手を払いのける。
「本当にあれに子供らなど積んでやり? 朝から誰も警備している様子がなきが? 子供らを閉じ込めておりゃ、この時点ではどうしても知られるわけにはいくまいよ。もっと厳重に警備する必要が出てくり?」
それが賢者の指摘。
「警備してる人いるんじゃない? 上に赤い服着てる人がいたよ。時々見えてたもん」
僕はちらちらと赤い衣装が見えていたことを報告した。
「無人というわけにはいかんやり。程度が問題だと言ってり」
「じゃあ中にたくさん兵士が入っているのかも」
僕の視線はヒルデダイトの軍船に釘付けだった。
「あの船怪しいぞ」
ナタと意見が合えばもう怖い物なし。
「中の兵士たちだって休憩とか交代とかするんじゃない? ちょっと待ってみようよ。そしたら中に何人居るかくらいはわかるかも」
僕はこれでリッリを引き留めることに成功した。
実際に交代要員が乗り込むことになると、入れ違いで財宝を守っていた戦士が船の上で立ち上がる。それは遠目にもやっぱり赤い制服を着ているように見えた。
「赤い制服は将校だ」
シェズはその人影を睨みつけた。しかもこの人影、船の上から槍を使って大きく跳躍すると、次の瞬間にはミツライム兵士の頭上を飛び越えて船を繋ぎとめる縄のかかった杭の上に座っている。おおよそ人間ばなれした体術だった。そして面倒くさそうに顔を斜めにする。
それは長い髪を束ねて蛇のように背中に垂らした少女のように見えた。
警備はたった一人。
英雄の演説会に参加できなくて欠伸しているようにも見えた。
「おい。あれ」
ナタは、リッリの首根っこを掴んだ。そしてヒルデダイトの将校を見ろと促す。
「あの人見たことがあります」
僕はリッリに顔を寄せていた。
「あいつ人攫いの護衛をしていたやつだ。なんつったか。エキドナだっけ。あいつらが人攫いだろ」
ナタが指摘した通り、
「あの人が人攫いです」
僕も声を殺してリッリにそれを伝えていた。
リッリはこれを受けて答える。
「冷静になりや。うみゅ、詳しくはクフ王のピラミッドに到着してから考えりや」
「そんなわけにいくか」
「違うよ、ピラミッド行く前にやることあるじゃん」
とナタと僕が言う。
「うみゅ」
賢者に長考はなかった。
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