第4話 好きのその先

「ふぁ!?」


 楓が頬を赤くしている中、俺は驚いていた。

 気まづくなって黙ってそれから気づくと、俺と楓は小田急の改札の前に再度来ていた。


「乗るわよ」


 そう言い、楓は改札にハスモをかざす。


「なぁおい、急にそんな事言われたからって付いていくかよ。もう小田急乗んねぇよ?」


 俺が少し大きな声で言うと、楓は財布を仕舞いながら此方を向いた。


「なら、置いて行くわよ。……貴方の性格上、『置いてく』言われたら付いていくしか無いでしょ? ……来なさい」


 そう言うと楓は向こうを向いて歩いて行った。

 そんな中、俺は——


「なんでそこまで分かるんだよ、付いていくしかねぇじゃねーかよ……」


 と、頭を欠きながら小さく呟いた。


           *


「どこ行くん……ですか?」


 改札を抜け、エスカレーターを降りると、楓は待合室の横を歩いていたので其方まで行き、声を掛ける。

 その時、そういえば楓が初対面なのだと思い出し、敬語を使う。


「敬語なんて急だわね。どうしたのかしら」


 そう言い、楓は小悪魔気に笑う。


「いや、そう言えば俺と楓って初対面だしなーって思ってさ」


「たしかに、そう、ね。私も敬語使った方がいいかしら」


「ん、ううん、良いよ別に。そっちの方が楓っぽいし」


「そ、そう? でも、私も直人に敬語使われるの嫌だわ。……普通に話しましょ」


「……そうだな」


 そうして楓と話していると、発車ベルがホームに鳴り響いた。


「行くわよ」


 そう言い、楓は走り出していたので、俺も走る事にした。


           *


「電車、乗れて良かったわね」


 車内にて。

 ギリギリ電車に乗る事ができ、空いてる席を探していた。

 まぁまぁ混んでいる……いや、座れる席は探せばありそうなレベルの混みだった。

 1分程歩き、前の方の座席へ行くと、


「っあ、あった」


 1つだけ、向かい合って座れる席があった。

 俺と楓は席の前に立ち、俺は

 

「ど、どうする?」


 と言った。

 すると楓は


「どうするもこうするも無いわよ、座るわよ」


 と言い、スカートを抑えながら席に座った。

 そして、俺は楓と向かい合って座った。


「そういえばさ、これからどこ行くの?」


 俺が突然楓にそう聞くと、楓はスマホを仕舞い、此方を見る。


「どこって……箱根湯本よ。知ってるでしょう? 箱根の玄関口」


 そう言い、楓は窓枠から外を覗く。


「あぁ。湯本、かぁ」


 そう言い、俺も窓枠から外を覗いた。

 暗がりながらも、外の景色が見える。月光のお陰だからだろうか。夜なのに紅葉がよく見える。

 赤く染まった木達。

 それらを見て、俺はつい


「紅葉、綺麗ですね。特に楓とか」


 と言い、楓の方をニヤニヤしながら見ると、楓は顔を真っ赤にした。


「馬鹿っ! そんなの、丸いっきり告白じゃないっ!」


 その言葉を聞き、俺は


「今日初めて会った人に告白とか、する訳ないでしょう?」


 と、言った。

 すると楓は少し悲しそうに、


「確かに……そう、ね」


 と、言った。

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