第2話 自己紹介

 小田急の改札から出て回れ左をして歩いて2分。階段を降り、金だこの横を通って丸亀そうめんの前を通り、自動ドアに入ってから回れ右をして歩いて2分。小田原ミナカに着いた。

 構造の大半が和風建築で出来ており、木造である。

 床は石のタイルでできており、天井は無い。開放感があってこれもまたいいと思う。

 奥の方には二宮金次郎も見える。

 店の前など、所々イルミネーションのライトアップが付けてあり、少々ながらも季節を感じる。

 

「適当な席に座って待ってなさい」


 そう彼女に言われたので、俺は丸型テーブルの席に座った。

 丸型テーブルの真ん中には、ロウソクがあり、これまた和を感じていいと思う。

 彼女を待ち始めて5分、イヤホンを付けて音楽を聞いて待っていると、左耳のイヤホンが取れた。……いや、彼女に取られた。


「お前ちょっと何やって」


 そう言うと、彼女は耳に髪をかけた後、片耳に俺のイヤホンを付ける。


「君って、こう言う曲好きなのね」


 そう言い、彼女は微笑む。

 あんなに堅苦しそうな人も、こんな風に笑うんだなと、少し思った。

 同時に、可愛いなとも思った。

 近くだからこそ分かるバラの匂い。腕にあたる彼女の腕の柔らかい感触、その全てが——


「いや近いって」


 そう言い、肩を触って彼女を押す。

 すると、彼女は驚いた顔をしながら席に座る。


「なんだよ、そんなに驚いた顔して」


 そう言うと、それから数秒後に彼女はシュークリームを袋から取り出すと、

 

「なんでもないわ」


 と言い、彼女はシュークリームを1口齧かじる。


「そういえば」


 彼女は急にあらたまり、またシュークリームを1口齧る。


「そういえば……?」


「自己紹介、まだだったわね。……私は狩野楓かのかえでよ。君の名前は何かしら」


 告るまでなげぇ。

 そう思いながら、俺も自己紹介をする。


「俺は直斗。新田直斗。……よろしく」


「良かった。名前は○○○○○○」


 俺が名前を言うと、楓は静かに微笑み、小さな声で何かを言った。

 途中までは聞き取れたのだが、最後は何も聞こえなかった。


「ん、何か言ったか?」


 尋ねると、楓は首を横に振り、シュークリームをまた1口齧り、


「平凡な名前過ぎてつまらないと言ったのだわ」


「んだよ、その変な罵倒」


 俺は別の事を言った事に気づいていたが、あえて口にはしなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る