第12話

そこからの数か月間のんびりと眠り、読書を楽しみ、植物を育てていると、またノック音が聞こえてきた。やはり部屋に入ってきたのはツィリル王子だった。


「ラナ!!! 魔力循環が出来る様になってきた。魔法を教えて欲しい」

「あら、早かったわね。半年くらいかかると思っていたのだけれど」

「僕はもう十歳になったし、頑張るって決めた事は手を抜かずに頑張ってるんだよ。それでも五か月も掛かっちゃったけど」

「どれ、見せてちょうだい」


私がそう言うと、三人は魔力循環をそれぞれ行い始めた。王子の魔力は多い分循環が難しいけれど五か月でこれなら十分頑張っているわ。その点乳母は魔力が一番少ないけれど、丁寧にやれている。

護衛騎士はやはり根っからの武人なのね。一番上手に循環出来ている。これなら身体強化も問題なく使えそうね。問題だった魔力塊も無い様子。


「そこの護衛騎士。もう指輪の必要は無いわ。返してちょうだい。調子はどうかしら?」

「ラナ様からご指導いただいた後からとても体調が良く、今までにない程身体が軽く感じます」

「三人とも良くできているわ。……そうね、手始めに【ライト】を唱えて出してみなさい」


私は目の前に小さな光を出すと、ツィリル王子は本格的な魔法の勉強に入ってとても嬉しそうだ。すぐにノートに書き込むあたり、偉いと思う。他の二人も同じように書いている。きっとこういうのが後世に残っていくのだと思うと微笑ましく思うわ。

そして三人とも唱えるけれど、全く出来ない様子。


「体内の魔力を感じながらそれを指先に持っていくのよ?一点に集中してから唱える」


私の説明で乳母がポンッと小さな光の玉を出すことに成功した。


「グリーヌ、ずるい!」


乳母は苦笑いだ。何度もやってみるが光の玉はまだ出てこない。護衛騎士もまだ出来ていない様子。


「ツィリル王子は魔力が多いから扱いになれるまで大変だと思うわ。けれど、魔力循環がきっちりと出来る様になれば誰よりも強い魔法を使えるの。今は地道に頑張るしかないわね。

さて、今日の所はこんな感じでおしまい。魔力循環は毎日続けるのよ? そしてライト魔法は出来たら光の強弱の練習もしておいて」


私は小さな光にしたり、太陽の様に明るく光らせたりして見本を見せてみる。


「これが出来れば夜も本が読めるわ。じゃぁ、頑張ってきなさいね」


そうして彼等をいつものように追い出した。

また当分彼等は来ないわね。


私は久々に最上階の部屋へと入る。


……そろそろ、なのかしら。


私は感慨深げに窓の外を眺める。


その後は屋上に上がり、育てている植物を摘む。私はよく眠りについているけれど、一緒に塔も眠りについているため、枯れる事はない。

そしてフッと息を吹きかけ、緑の雫を一滴取り出す。そして小瓶に詰める。一度に一滴しか出来ない貴重な物。私はそうして薬を作り続けているの。

これが完成すれば世界が一変するに違いない! ふふふっ。

私はそう思いながら数日毎に一滴ずつ採取していく。




そうして半月は過ぎたかしら。

王子達はまた塔へとやってきた。どうやら三人ともライト魔法は使いこなせるようになったようだ。だが、ここからが本番。

初級魔法を教えていく。

闇は【暗闇】火は【ファイヤ】水は【ウォーター】植物は【グリーンウィップ】土は【掘り返し】光は【解毒】かしら。もちろん出来ない魔法はある。とりあえずやらせてみて自分が一番使いやすい魔法を伸ばしていくのが一番だと思う。

護衛騎士には【身体強化】を教えておいた。

因みにツィリル王子は部屋で力いっぱいファイアを出そうとして私に頭から水を掛けられたのはい言うまでもないわね。

王子はなんで土魔法だけ掘り返しなんだ? って疑問に思っていたみたい。基本的に土魔法は農業に活躍する魔法なので初歩はやはり農業用の魔法になっているのだと思う。


土魔法を私も普段使う事がないから疑問にさえ感じなかったわ。それでも上級魔法は十分強い。ゴーレムや土壁を作り、城壁も一瞬にして作り上げる事が出来る。馬鹿には出来ないの。

ライト魔法が出せるようになった彼等はすぐに初級魔法を使う事が出来た。やはり闇魔法は三人とも使う事が出来なかったみたい。土魔法も見ていると魔力のロスが大きいわ。初級止まりね。

ツィリル王子はやはり植物と光魔法が得意属性ね。乳母は植物と水が少しかしら。魔力量自体が少ないから植物魔法のみ伸ばした方が良さそう。

護衛騎士はやはり火が得意ね。魔力も多いから他の属性は使えるけれど効果は微々たるもの。その点王子は魔力量でごり押し出来そうね。闇魔法以外は。


私は見たままを三人に伝える。彼等も各属性の魔法を使用した時に使えるかどうかが感覚的に分かったようだ。飛び上がり喜んだのは言うまでもなくツィリル王子。

このまま頑張って貰いたいわね。

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