第8話 王子side2

僕は騎士達の話を確かめたくて最初塔の前まで行ってみた。塔を確認したら帰ろうと思っていたんだけれど、塔の扉が気になってガチャガチャ触っているうちに扉が開いたんだ。


少し怖かったけれど、中に足を踏み入れた。塔の中は外とは違っていて驚いた。


螺旋階段があって部屋が一つだけなのかと思っていたけれど、部屋に繋がっているだろう扉が沢山あった。

一番近い部屋に入ってみると一番初めに目に飛び込んできたのが積み上げられた紙。父上も執務に追われている時は紙の山が出来ているけれど、ここは比較にならない位沢山ある。

手に取って見ると難しい字が沢山並んでいて読めない。僕は他の部屋も見たくてその部屋から出て次の部屋へと入ってみた。

骨董品が沢山並んでいて見たこともないような物が沢山あった。他の部屋はどうやら鍵が掛っているみたい。


僕はドキドキしながら探索を続け、階段を上がっていく。ここの部屋は扉に鍵が掛かっていない。ガチャリと扉を開けて入ってみる。さっきまでの部屋とは違い整頓されて今まで使っていたような生活感のある部屋になっていた。

僕は物珍しさから色んなものを手に取って見ていると窓の方で何かが動いた。

!!生首だ!!

僕は驚いて叫んだ。

その様子を見ていた生首が何かをしたようで僕はバチンッ光ると何かに叩かれたような感じがした。

今のは、もしや、魔法、なのかな??


「お前!魔法が使えるのか!?」

「えぇ。そうよ?それがどうしたの?」


凄い!生首は魔法使いだった。魔法が使える。凄いや!そこからの僕は興奮しっぱなしだった。ラナに魔法で塔の外へと追い出された事にも驚いた。

今度またラナに会いに行こうと考えて自分の部屋に戻ってみると、グリーヌが大泣きしていた。どうやら僕が消えて大騒ぎになっていたみたい。僕は一杯謝ったのは言うまでもない。そしてグリーヌに忘却の塔に行ったことを話した。


グリーヌは恐ろしい場所だから近づいてはいけないと言っていたけれど、僕は歴史書を持っていく約束をしたと話をすると、次回はグリーヌも一緒に付いていくと言い張った。そして今度はグリーヌと一緒に忘却の塔へと向かう事になった。

グリーヌはラナを見て震えあがっていた。僕も生首は正直言うと怖い。けれど、恐怖よりも興味が強くてもっと知りたいと思ったんだ。

魔女はグリーヌに魔法を掛けた。凄い!僕は魔法を見ただけで大興奮だった。聖女が祈る時に光る色よりも幾分強く感じた。

グリーヌの腰や手荒れはすっかり綺麗になっていてシャキッと姿勢を正している所を見ると十歳は若返ったんじゃないかと思う。


グリーヌはラナを怖いと思いながらもとても感謝していて今、令嬢達の中で流行っているというヘッドドレスという物をチクチクと僕が勉強している間に縫っていた。


そうして何日か過ぎた時、父の執務室へ呼び出された。

僕はグリーヌと一緒に父の執務室へと入ると、そこには仕事をしている父と騎士団長が部屋の中にいた。


「父上、お呼びでしょうか」


父は仕事の手を止めて僕を見て言った。


「ツィリルよ、お前ももうすぐ十歳になる。王太子になるためには騎士達の大変さを知らねばならぬ。今度の魔獣討伐に付いていくように」

「わかりました」


これは父からの命令。行きたくないなんて文句は言えない。分かってはいるんだ。まだ僕は大人ではないから戦闘に参加することはない。

魔獣を見るなんて初めてだし、騎士達がいつも傷つき戻ってくる様子を見ているので正直言うと、怖い。僕が心も身体ももっと強ければきっと戦闘に参加したのだと思う。

これでも僕は自分自身のことはよくわかっているつもりだ。

何も出来ない、ただ見ているだけになる。

僕は不安しかなかった。

僕は討伐前にラナの所に向かった。

そして一か八かラナに魔法が使えるか聞いてみた。ヘッドドレスを着けて上機嫌なラナから無理だと即答されてしまった。

……だよね。

そんなに簡単に魔法が使えたなら魔法使いがこの時代に居ないなんて事はないと思う。がっかりしていると、ラナは僕に指輪と首飾りをくれた。そしていつものように塔からビュンと押し出されるように追い出された。でもね、僕は嬉しくて、嬉しくて泣きそうになった。

言ってよかった。

ラナがくれた指輪と首飾りを肌身離さず付けている事にしたよ。グリーヌもそうした方が良いって言っていたし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る