RAT狩り

20××年9月4日 午前9時 レオのアジト


「お帰りなさいませ、レオ様」

「ああ、ただいま。」


朝の会合が終わり、レオが所持しているアジトに帰ってきた。出迎えてくれたのは、レオの補佐の吸血鬼の双子の妹のライラだ。シルクのレースのように透明感のあるプラチナブロンドの髪を先の方で緩く巻き、雪のように白い肌の少女だ。

アジトの外見は、古びたアンティークな屋敷に、全ての窓に赤いカーテンが閉められ、庭には血のように真っ赤な薔薇が咲き誇っている。


「BOSSからミッションが出た。今すぐ俺の部屋にライトと一緒に来てくれ」

「仰せの通りに」


優雅な礼をした後、兄を呼びに駆けていった。



レオが率いるこの隊は、幹部のレオの他に幹部補佐のライトとライラ、その他多勢は下級構成員で構成されている。

真っ赤なカーテンを開き外を眺めていると、コンコンと部屋の扉を叩く音がした。


「レオ様、ライラです」

「入っていいよ」


そうして、部屋に入ってきたのは先程招集したライラとライトだった。


「急に呼び出してごめんな。今日の会合で話された内容が結構重要な話だったからさ、会議室じゃなくて俺の部屋にしちゃった」

「ほんとレオの部屋って聞いてびっくりしちゃったんですけどー?」


緩く言葉に答えたのはライトだ。二人はレオよりも年上で、いつも気分屋のライトは、どんな困難な壁にぶち当たってもずっと傍で支えてくれる存在だ。


「ごめんって。じゃあ、早速本題に入るけどさ、この事は俺たち以外の誰にも話さないでな。絶対に」

「わかっております。神に誓って誰にも公言致しません」

「もちろんだよ」


二人はきちんとレオの目を見てそう宣言した。


「ありがとう。今日BOSSがおっしゃったことは、2つあって1つ目はRAT狩り。そして俺的にはこっちの方が大事なんだけど、一番いい働きをした幹部が次期BOSSになるんだってさ」


ずっとこの時を待ち望んでいた。正直BOSSになることはどうだって良かった。未来視。その特別な能力があればどんなことだって可能になるだろう。未来視は、本来持っている能力と並行して使う事ができる。レオの所持してる能力は骸骨だ。基本、いつも鞄の中にいれて保管している骸骨を自分の好きなサイズに調節し、それを武器として使うことが出来る。骨が砕かれていたとしても、それを一時的に元の姿に戻し使用することも可能だ。この能力を最大限引き出せる場所は、想像通り墓場の近くだ。そのためこの屋敷の裏には、死んで行った仲間たちの墓がある。俺は負け犬なんかにはなりたくない。常に勝者でいたい。大切なものを守るために。


「次期BOSSにレオがなれるチャンスってわけか。そりゃあ張り切らないとな」

「レオ様以外誰が適任するんですか!レオ様一択ですよ。私、レオ様の為ならどんなことでも出来ます!精一杯サポートするので何でも申してくださいね。」


本当に尽くしてくれて一番頼りになる最強で最高の仲間だ。こうして背中を押してくれるだけで、何でも出来そうな錯覚になる。


「おう、それじゃあまずはRAT狩りだ。どこにRATネズミが潜んでいるか分からない。ライラは内部を。ライトは外部を頼めるか。」

「了解。確かに内部はライラが適任だね。レオが居ない時は基本ライラが管理してるからね。俺達はテレパシーで交信出来るから離れてる時こそ効果発揮できるしね。レオはどうすんの?」

「…俺はまだ迷ってる。もちろんこの隊にRATが居ないことも仲間たちのことも信じてるからさ」


これは先程の会合から悩んでいたことだ。 二人に何処を任せるかは特に迷いも無く直ぐに決まった。下級構成員も根はみんな良い奴で、俺が誇りに思う仲間だ。力の差はあるが、一人一人自分の役割を全うし、他の隊と比べて責任感の強い者が集まっている。


「そうですよね、一旦作戦立てつつ一番最後にレオ様の担当を決めましょう。なので、まだ悩んでいていいですからね」

「すまない、いつもお前たちには苦労かけてばっかだな」

「いいや、いいんだよ。もっと頼んなさいな。1人で抱え込むよりずっとね。」

「そうですよ!レオ様。私たちはレオ様のこと大好きですから」


やはりこの2人にはお見通しってわけか。


「それはそうと、本来のRAT狩りは適当に他の隊と協力したりするけど今回はイレギュラーだから、極力自分の隊で完結させないとだね」

「そうなんだよな…本当に困った時にリアムに助言貰おうかなとは思ってるんだけど」


リアム___ 完全記憶能力を持っていて組織の情報担当だ。なにかあったらとりあえずリアムに相談すれば何とかしてくれる為、レオは頼ることが多かった。


「うーん、そうですね。今のとこまだBOSSの未来視でRATがいることが分かったのですよね?」

「なら、あちらが行動を起こすまで待機はどうでしょう」

「確かにね。まだほとんど情報がないんだ。今は内部に集中する、ってのも1つの手だと思うよ」


二人がそう助言する。レオよりも長く生きている分、こういう時の対応に慣れている気がした。


「じゃあ、俺も事が起き次第らライトと同じく外部の幹部補佐とか地位の高い奴ら探ってみる。だから今はライラと一緒に内部に目を凝らしてみようかな」

「うん、それがいいね」

「かしこまりました、では私はレオ様にいい報告出来るよう精一杯頑張りますね」

「うん、助かる。…あ、でもくれぐれも無茶だけはしないようにね。約束だよ」


そう言うと、ライラは頬を赤らめてレオを見つめた。


「…は、はい。心得てます」

「うん、いい返事だ。じゃあ、二人とも気をつけて」

「ああ、レオもな」


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