第11話 ひめゆり野② 冬の訪れ

 ドギンは風で靡く草のように、アムファンの背に揺られながら、どこまでも続く大草原の先に、ウガル高原と雄大な山脈があり、ここからでも目を凝らせば石の裂け目山の恐ろしい姿を見て、我ながら遠くへ来たものだ、と自分自身の旅を思い返しました。

 ドギンは、自分こそが悪では無いか、と束の間の陰りで自分を見失っておりました。

 しかし、本当の悪とは、エンギレンで対峙した吸血鬼のような、人の心に囁き、心と結び付けられるありとあらゆる情動をバラバラにし、歪ませてしまう、その身を持って体験した事で、銀の君の言葉やヒンデンブルクの王の説教の意味を実感したわけです。

 よくよく思い返せば、自分が始めた旅では無いか、と笑い飛ばす気にはなれませんでした。

 少なくとも、アムファンの優しさがなければ、それすら思い出すことは叶わず、自身もまた、悪の側に屈するところだったからでした。

 そう思うと、ドギンは、このアムファンが銀の君の話す草原の民とは、全くかけ離れているように感じられ、彼らへの興味が湧いてきたのでした。

「私は彼女のように、優しい只人はこれで二回目ですけど、見ず知らずの小鬼に優しくして貰えたのは初めての出来事でした。というのも、ご存知の通り、私は小鬼ですから、どこへ行っても、邪魔者扱いされてしまうわけです。それをわかっているから、私も只人には近づかなかったわけです。でも、我が友デーンと、こちらにいらっしゃるアムファンさんは違いました。只人への認識は間違っていたのかと驚かされてばかりです」

 そう話すドギンに、先程までにへら顔だったジャムカが、少しなんとも言えない笑みを浮かべて、ドギンを見ずに答えました。

「あなたの認識はそこまで間違いではありませんよ」

 驚いたドギンはジャムカを見ました。

 この間にもアムファンは何を言ってるのか理解しようと、ドギンを抱きしめながら難しい顔をしていました。

「きっと、貴方一人が歩いているのを見かけた時には、二頭の牛に括りつけて、八つ裂きにしていた事でしょう」

「ジャムカ!」

 ジャムカの言葉は聞き取れたのか、アムファンは可愛らしい顔を引っ込めて、気品ある者の堂々たる面構えをしていました。

 また、額を搔くジャムカと強く抱きしめるアムファンを宥めながらドギンは言いました。

「そうなることはよく分かっていますから、ジャムカさんもアムファンさんも気になさらないで」

 すると、アムファンは一生懸命に話しました。

「私たち、他と、違う。私たち、勇敢、強い!」

 ドギンも必死になって理解しようとしますが、如何せん、アムファンの森人語は(頑張ってはいるのですが)拙く、知っている範囲の言葉だけでは上手く汲み取れなかったのです。

 すると、ジャムカはおずおずと言いました。

「恐らく、我らジョチフ族の起こりを説明したいのだと思います」

 そう言うと、ジャムカは咳払いをして語り始めました。


 彼ら、草原の民は、草原を自由に駆るだけの、そういう矮小で、健気な只人達でした。日の下で馬と共に走り、地平線に沈むヘルロス様の御光を拝み、夕餉には横笛と唄、煙草を楽しみながら火を囲み、その場に留まることなく、自由な民でした。

 しかし、太古の時代の終わり、つまりは一つだった人間の楽園、バルブロンドの崩壊が、恐らくドギンさんも耳にしたであろう血塗られた野蛮な民達が生まれる全ての始まりだったのです。

 大陸は分かたれ、皆がバルブロンドの栄光を求めたのです。

 森人達は西方を離れて闇の森(只人はエンギレンの事をそう呼びます)の方へ向かい、只人は西のエリアドール、南のパラメシア、極東のオルアヌにそれぞれのかつての栄光を求めて大きな国を作り上げました。

 オルアヌに作られた国は、初めは平原の民に助力する形で草原の民もその国の起こりの主導に付き合っていました。

 というのもオルアヌは豊かな草原が沢山あったからです。

 協力すれば、共にその豊かな土地を分け合う事を約束していたのです。

 しかし、大国、雀が建国された時には思わぬ形で裏切られたのでした。

 平原の民が、豊かな土地のほとんどを治め、草原の民には僅かな草原だけを与えて、追い出してしまった。

 国境沿いは厳重な守りが置かれ、草原の民だと分かれば矢を射掛けた。

 そして、彼らは草原の民を蛮族と呼び、実権もその自由も奪ってしまいました。

 その生活はとても苦しく、蛮族にならざるを得ない程でした。

 商隊を襲わねば、建国のために増えた同朋達の食い扶持を失い、死に絶えてしまい、その恨みを何千年も抱える事となったわけでございます。

 時が流れて、第一世紀の時代で、彼らの恨みに、殺戮の魔神、テルベイがそっと忍び込んで来たのです。

 それからは恨みを抑えきれなくなった草原の民はテルベイが率いた悪の軍勢に与して、歯止めの効かない恐ろしい民に変えてしまったのです。

 血に塗られし暴虐と強奪の日々を、オルアヌに住む平原の民に与え、雀を滅ぼしてしまったのです。


「これが、かつて我ら草原の民が辿った道であり、今も根深く残る、オルアヌの大国、楽とチャイチャクラ汗国の因縁でもあり、我ら草原の民が、悪に屈してしまった過ちの歴史でございます」

 ドギンもその話を銀の君から聞いたことはありました。

 しかし、彼の話す言葉には、その血を受け継ぎし者たち、今もまだ残る目を逸らしてはならない者たちの実感が言葉に熱を持たせて、よりその心に深く刻みさまれるようでした。

 それで、アムファンの言葉に納得が言ったわけです。

「つまり、ジョチフ族の先祖達は悪に屈しなかった。他のもの達の様に、かつての雀や、今の楽には剣を向けなかった、と?」

 アムファンは小さく頷きました。

 その顔を見れば、アムファンの伝えたい事は他と違うという事を強く言いたい訳ではなく、戦わない選択をして、草原の民の、自由に草原を駆ける教えに忠実に従った、何者にもその志しを曲げられなかった者たちを勇敢だ、と賞賛し、その血が流れる自分自身にも誇りを持っているのだとドギンは理解しました。

 それが返って、アムファンの境遇に同情し、その境遇にした者たちへ胸のムカつきを覚えるのです。

「彼女にはテントの中は狭すぎるくらいでしょう」

 ジャムカは言いました。

「いえ、普段は掟もありますが、内向的で本を読まれたりなど...」

「それは貴方たちがそうしたのでしょう」

 言い終わらぬうちにドギンは返答し、言い淀まぬうちに言葉を連ねました。

「アムファンさんは草原の民として生まれたことに誇りを持っている。邪な者たち、それから守ろうと自由を奪ってしまった者たち、等しく、彼女からその誇りを奪っているではありませんか」

 ジャムカも、ええ、ですから私はあなたに感謝を、と言いかけたのですが、ドギンは何も言わさぬ勢いで言いました。

「何故、彼女は、あのような女一人に寄って集って追い詰めるようとする下賎な輩に捕まったのか、何故、朝になって捜索を始めたのか、それは彼女が以外、有り得ないでしょう」

 ジャムカは微笑んだまま口を閉ざし、それから静まり返ってしまいました。

 馬の蹄と、武具の揺れる音だけが草原に響き、天空を見下ろす鷲の鳴き声を耳にしました。

「確かに、あなたの話は正論です。あなたの価値観であればね。しかし、我々死せる定めの者が育んだ時間と、森人のように悠久の中を生きる者では、その歩みも、考え方も異なります」

 ようやくのことで口にしたジャムカの真意は、外の者の口出しに応じることは無い、という意味だとドギンは解釈し、それからは何も言わず、それを見てジャムカは釘を刺してきました。

「好奇心旺盛な事は素晴らしい事です。しかし、藪に潜む蛇を突くような事がないよう願います」

 ドギンは何も言えませんでした。

 何も言えない事へのもどかしさで握る手に力が入り、行き場のない怒りをどうしたものか、と悩んでいると、急にアムファンが馬を早く走らせました。

 何事かと一同、大慌てだったのですが、ドギンはアムファンの可愛らしい顔が、少し大人びて見え、ただその誇らしげな表情に、この身を、彼女のように、風に委ねよう、と思い、川の流れのように移ろう景色に目を輝かせました。



 ドギン達が集落に到着した時はまだ昼下がりの時間で、ひめゆり野の真ん中に位置するジョチフ族の最も大きな集落でした。

 住むところはテント、しかし、ただのテントではございません。

 草原を半年毎に渡り歩いて暮らす人々が住む為の天窓も煙突も付いているので、夏は風が通り、冬は寒さを凌ぐ、つまりは至極快適で丈夫なテントでございます。

 そんな住居が町並みのように、大通りに沿って並ぶので、言葉通り、町そのものでした。

 テントの外を歩く人々のほとんどが、男性か子供ばかりで、女性、と呼べる者は居ませんでした。

 道行く人々は色鮮やかな衣装を着て、籠を抱いて、えいやこら、言いながらすれ違っていきます。

 その様子は色そのものが歩いてるみたいで、とても可愛らしいので、つい、ドギンは行き交う人の流れを目で追いました。

「どれも素晴らしい事でしょう?今日は祭事の日なので、皆、派手な色の服を着て居るのですよ」

 目を輝かせているドギンに、ジャムカが笑いながら説明しました。

 それを聞いたドギンは、夜の草原の下で、大きな焚き火を、明かりの円の縁に沿って囲みながら、若い只人達が手をとって踊る風景を思い浮かべ、そのような夜を過ごしたいと思いました。

 酒場を通りがかると、群衆をかき分けてドギンの元へ走り寄る大男の姿がありました。

 そう、ドギンの友で、砂漠生まれの航海士、デーンです。

 最初、近寄ってくるデーンを周りの兵士たちが捕り抑えようとしたのですが、ドギンの方からも、馬を降りて歩み寄ったので、二人の間になんの隔てもなく、再会を喜び合うことが出来ました。

 酒場で浴びるほどの麦酒を飲んだのか、強い臭いがしたのですが、力強く抱きしめ、黙って涙を流すデーンの姿を前に気にする余裕なんてありません。

「心配をおかけして、申し訳ございません。

 この通り、私は無事です」

 ドギンが話すと、ようやくデーンも話しました。

「んな事は、分かってるよ。お前さんと俺の縁だ」

 そう言うと、抱きしめる腕を解いて、ドギンと別れてからの事を話しました。

「俺はお前さんと逸れた後、あそこの連中の様子を少しだけ監視してみたんだ。するとどうだ?鍛冶屋の硝煙が嫌なくらいに昇ってるじゃねぇか。きっと、戦の支度をしていやがる。この事を他の部族に知らせにゃ、お前さんの命が危ねぇと思って、穏健なジョチフ族の族長の客将として、取り入って、後はお前さんのことを待っていたのさ」

 ジョチフ族も、アムファンの行方を探していたので、意見が合致したということだろう、とドギンも頷き、改めて再会を喜び合っていると、デーンがドギンの後ろを見ながら言いました。

「あのべっぴんさんは誰だ?服は大した事ねぇが、明らかにお前の事見てるぞ」

 そんな事を言われたのでドギンが振り返ると、アムファンがこちらをじっと見つめているようでした。

 それを見てデーンは、どこか疚しさを感じさせる笑みでアムファンに近づき、長々とお互い草原の民の言葉で話し合っていました(まさか草原の民の言葉も話せるとは、ドギンは思いもしませんでしたが)。

 言葉が交わされる度、アムファンの頬は、まるで熟れるように段々と赤く染まり、林檎みたいで、ドギンの目には少し愛らしく思えました。

 話し終えたデーンは、したり顔の笑みで戻ってきたと思うと、ドギンの肩を乱暴に叩きながら大わらいしました。

「一体、何を話されたのです?」

 不思議そうにするドギンでしたが、デーンは軽くあしらって、ドギンを抱えて馬の上に乗せました。

 ジャムカがオドオドしながら言いました。

「と、とりあえず、族長の元へご案内しますので、続きは後ほどに」

 そう言って急かすように一行を連れて、大きなテントまで案内しました。

 このテントは本当に大きく、火の輪を潜る獅子、宙を舞う軽業師、玉乗りの道化師が登場するサーカス小屋のように、天井も高く、広いテントでございます。

 もちろん、中にはサーカスの一座がいる訳ではございません。

 ここもまた、人が暮らすための快適なテント、というわけでございます。

 火の輪潜りの獅子ではございませんが、テントの中には狼の剥製絨毯に、トナカイの毛皮で作られた玉座ならありました。

 壁には数々の武具が掛けられ、威圧的に感じられました。

 その玉座に、瞼が窪んで影が差し、頬痩けた顔に、長くて黒い髭と髪を持つ男が、テントに入る者たちを睨みつけながら鎮座していました。

 頭には羊毛みたいな薄茶色をした帽子をして、長い髪が横からはみ出ているものですから、その人相の悪い顔も相まって禿鷹のような風貌の男でした。

 草原の民の血を感じさせない白い肌は、蒼白という言葉の方が似つかわしい程度には生気を感じさせず、ドギンは目の前の男をとても不気味に思いました。

 男はとてもぶっきらぼうに森人語で言いました。

「俺はジョチフの長、ロムスン」

 ジョチフ族の長、ロムスンは只人独特の訛りを感じさせない、見事な森人語で話したので、ドギンは驚嘆する他ありませんでした。

 ロムスンの顔は益々、不機嫌になりました。

 それを見て真意を見抜いたドギンは、膝を付いて、手を前にし、草原の民の間で使われる礼の形を取りました。

「申し遅れましたご無礼をお許しください。私は闇の森から参った小鬼のドギンと申します。私の為に、貴方様自ら森人語で仰るそのお気遣い、痛み入ります」

 丁寧なドギンの言葉遣いに納得するように鼻でため息をして、ロムスンは前屈みになって言いました。

「小鬼にしては利口のようだ。毎朝、半刻も鏡の前に立ってから外に出かけているのではないか?」

 ドギンは平然と答えました。

「親しい仲にも礼儀あり、という言葉がございます。ましてやジョチフ族の長を前に、小鬼が粗相をしては、ロムスン様の品位すら傷つけてしまいかねないので、分を弁えた次第でございます」

 普段から礼儀正しいドギンではありますが、この時ばかりはロムスンの逆鱗に触れぬように、畏まった口調で話しました。

 それもそのはず、ドギンは粗野な言い回しや、乱暴な言い方を銀の君に矯正された時、草原の民を例に、何度も礼節を重んじる事の大切さを教わったからでした。

 ロムスンは歯軋りをして、足を揺すり始めました。

 山羊の顎に生えるように細長い、でも真っ黒な髭を撫でながら、ドギンの足元から頭のてっぺんの毛まで隅々を探るように目を細めて、何か企むような顔をしました。

 そんな目で見られてもドギンは顔色ひとつ変えず、物怖じもしませんでした。

 しかし、ドギンの心の中では、何を疑われているのかは分からず、当然、小鬼がやってきたことへの嫌悪から、疑いをかけられているのではないか、と思っていました。

 気になったドギンは尋ねました。

「申し訳にくいのですが、貴方様の態度は礼節を重んじる草原の民らしからぬ行いでございます。もし、私が小鬼である事を気になさられているようでしたら、私も身の程を弁えておりますので、すぐにでも立ち去るつもりでございます。しかし、そうでないのであれば、私の考えが及ばぬ事でございますので、ご教示して頂きたく思います」

 すると、ロムスンは深いため息をついた後に立ち上がり、壁の方へとそろりと歩く姿は、陰気な禿鷹の雰囲気は散り散りに、晴れ間から、歴戦の勇士が凱旋しているようでした。

 足を進めながらロムスンは言いました。

「教えてやろうか、好色の小鬼よ」

 そして、ドギンを睨みつけたまま壁に掛けられた武具から、東方で古くから伝えられる竜の姿が彫られた槍を掴んだかと思うと、槍の切っ先がドギンの鼻の僅か前にありました。

 そして、ロムスンは嗄れ声を歪ませ、狼が吠えるように怒鳴りました。

「痴れ者めぇ、よくもわしの娘に手を出してくれたな!」

 ドギンはその妙技に驚き、ロムスンの言葉には合点がいって納得する、とても奇妙な心境に至りました。

 ドギンが納得しているのも、先程記された通り、銀の君の教えが念頭にあったからでございます。

「彼らにおける礼節、とは規律や宗教に近しいもの、つまりは暮らしの助けとなるものです。そのため彼らは礼節というものを何よりも重んじます。例えそれが命だったとしても」

 それが彼らの野蛮さ足り得るところでもある、と付け加えるように呟いた事もドギンはしっかり覚えていました。

 女性をテントの奥に隠してしまうのも、女の貞操、純潔を守る為でございます。

 その身一つでも見ようものなら命で償う他ない、というのが彼らの主張なわけでございます。

 アムファンの兄であるアムルはどうあれ、ドギンが妹の肌のひとつやふたつ所では無い、丸裸の姿を見られたであろう事を察して、慌てて父であるロムスンに伝えたのであろう、とドギンは予想する事が出来ました。

 どう伝わったかは分かりませんが、自分の行いに何ひとつとして弁明しようのない事は確かだ、と自覚していたので、ドギンは謝ろうと思いました。

 しかし、二人が話し合っている間、後ろでジャムカはアムファンに話し合いの全てを伝えていたので、状況を飲み込んだアムファンは、おずおずと二人の間に入りました。

 ロムスンは自分の愛娘を睨みつけながら話しかけると、アムファンはつま先をもじもじさせながら、顔を上げずに、何やら話し始めました。

 ロムスンは耳を傾けているうちに、禿鷹でも勇士でもない、至って普通の男のように、表情豊かにコロコロと変え、アムファンが話終える頃には、槍の切っ先は項垂れて、顔を手で覆いました。

 ドギンは何が何やらといった様子で、二人のやり取りを見ていましたが、アムファンは顔を伏していたので、顔色が分かりませんでした。

 すると突然アムファンがドギンの腕を抱き上げて、外に連れ出したのです。

 呆気に取られるドギンですが、別れ際のロムスンの顔かとても情けなく、先程までの威厳はどこへやら、化かされたような呆けた顔で二人を見送っていたので笑う他なく。

 腹が捻じ切れんばかりに大笑いをするデーンと、どちらに肩入れしようかと慌ただしくするジャムカもドギンとアムファンの後を追いかけました。

 入れ違いになってアムルがロムスンの元へやって来ると、ロムスンはやってきた息子を怒鳴りつけました。

「要らぬ心配をさせおって、わしが恥をかいたではないか!」

 アムルは何も呑み込めず、草原の民独特の姿勢をとって尋ねました。

「恐縮ですが、ラウリ(父という意味)、もしやリャン(妹という意味)の事で何かあったのでしょうか?」

 この言葉が逆撫でしたようで、ロムスンは烈火のごとく言葉を連ねました。

「お前が、小鬼がアムファンを嫁に娶ると喚くから心配したものを、一から全部、聞けば、あの小鬼は恩人ではないか、不慮の事故とはいえ、未婚の娘の裸見てしまった。それは掟に反する行いだが、それもアムファンが小鬼を娶ってやつの命乞いしたものだから、小鬼とはいえ、恩人であるからに許す事にしたのだ」

 アムルは驚きました。

 それもそのはずでございます。

 何故ならアムルは自分からアムファンにドギンの事を尋ねたものの、アムファンの姿を見られた、と言う内容の部分だけ強烈に記憶されて、他の経緯もすっかり忘れてしまっていたからです。

 しかし、正確に言葉で表すなら、ドギンが命の恩人である事と、その恩人が妹の肌を見てしまった事、そして、掟における未婚の女の扱いが混じりあって、すっかり別の記憶になってしまったのです。

 とりわけ、掟の部分ですが、未婚の娘の肌を見てしまった場合は死刑になる、というのは結果論の話でございます。

 本来の掟では不用心に覗いてしまった男は、その女を娶らなくてはならないという決まりなのですが、そのような男に責任能力がある筈もない、ということですので、大概は検討する間もなく殺されていたというわけでした。

 つまりは命の恩人ドギンは妹の体を見てしまった為に、死ぬかもしれないが、助かるためには大事な妹を嫁に出す他ないのですが、相手は小鬼である葛藤と、愛する妹の口から発せられた衝撃的な事実に混乱して、ドギンがアムファンを娶るつもりだった、という記憶に置き変わってしまったのです。

 そして、誤解は解けないままにロムスンに伝えてしまったという次第でして、ただただロムスンがドギンに無礼を働いただけとなったわけです。

 アムルも次第に記憶が思い起こされて、ようやく思い出すと、ロムスンに頬を強く叩かれました。

「このバカ息子め。アムファンを溺愛するがあまりに、わしに恥をかかせおって」

 蒼白の顔は、猛る火のように真っ赤にしてロムスンは、息子を折檻しましたが、二人が勘違いしていた事実は消えることはありません。

 外ではアムファンに引っ張られるようにして歩くドギンも、ジャムカとデーンの口から背景を知る事となりました。

 デーンはアムファンと会った時に事情を聞き、そこから掟のことを尋ねると、アムファンがその事で相談してきたので、ドギンを形だけでも伴侶にしてはどうか、と提案したという訳です。

 しかし、ドギンはこれを聞いた時、喉に痰がからんだ時のような、蟠りを感じました。

 ドギンはアムファンには自由であって欲しいと強く願っていたので、掟や、自分自身の失態で、アムファンの意志を奪う事に強く反対の意見を持っていました。

 ただし、デーンやアムファンの助けたいという気持ちも汲み取れない訳では無いので、言葉の通り、蟠りになったのです。

 ジャムカはデーンの耳に近づいて囁きました。

「実際、アムファン様はどう思われているのでしょうか」

 デーンは耳を赤くするアムファンをじっと見つめて言いました。

「さぁな。俺はとは伝えたがな」



 夕日と共に、アムファンは赤い馬の姿に変わり果て、人の言葉は何も話せなくなりました。

 ドギンはアムファンに聞きたいことが沢山あったのですが、これではどうしようもありません。

 デーンは酒場に戻って酒を飲みつつ何かいい知らせがないか聞き込みに、ジャムカは文官でしたので、仕事に戻りました。

 途方に暮れるドギンの事を忘れたのでしょうか、アムファンはそのまま集落の外に小走りで向かいました。

 ドギンは慌てて追いかけました。

 外に出ると立ち止まってドギンの方に首を曲げました。

 その仕草でドギンはすべて分かりました。

 ドギンが跨ると、アムファンは集落の周りを風のように走りました。

 ヘルロスの御光が進むよりも、雲が流れるよりも速く、地平線の上を誰よりも自由に走りました。

 この瞬間はアムファンだけでなく、ドギンもまた、空の下を自由に走る、風の精霊達のように思え、晴れやかな気分でした。

 そして、赤い鬣が揺れるたび、ドギンの心も動き、ドギンはアムファンはやはり、自由という言葉が良く似合うと思いました。

 だからでしょうか、ドギンは彼女の自由を脅かす自分も含めた全ての物を許し難く、自分の行いも、デーンの提案も、掟のことも、アムファンを狙う他の部族の事も、許せませんでした。

 地平線に沈んでいく御光を背にアムファンは走りました。

 その顔は、人間の顔では無いのに、どこか誇らしげに見えて、ドギンは夜になればロムスンと話し合う事を強く決意しました。



 それから地平線に御光が沈むと、青い夜空の下で、大きく燃え上がる焚き火の照らす円の縁を色鮮やかな衣装を纏う若い男女が何組も袖をヒラリと靡かせて、奇妙な笛の音色や太鼓の力強い律動に合わせて、揺らめく炎のように情熱的に踊り、祭りを祝いました。

 この祭事は、冬の訪れを呼び、その訪れを喜ぶ為のもので、三日三晩に渡って行われます。

 冬が訪れなければ、その先の暖かな春も訪れず、季節の巡りが止まってしまうと信じられていましたから、草原の民達はこの時期になると、こぞって祝ったのです。

 若者たちの踊る姿や、大人の踊りを真似しようとする子供達の愛くるしい姿、そういった様子をパイプを吹かしながら微笑ましく眺める老人達の姿、楽器を奏でる者達、それぞれがこの夜を楽しんでいました。

 ロムスンもまた、円の縁の外側で胡座をかいて、古めかしくも手入れされたパイプ煙草を吹かし、紫の煙をぽっぽっと出して、煙で遊びながら、民の楽しむ姿を眺めていました。

 そこへトコトコと足音たてながらドギンがやって来ました。

 ドギンの方へに顔を向けて、胡座をかいたまま頭を深く下げながらロムスンは言いました。

「昼間は、こちらの不手際といえとんだ無礼を働いた。すまぬ」

 ドギンはにこやかにそれを許しました。

 むしろドギンも謝りました。

「いえ、こちらこそ。成り行きとはいえ、草原の民の禁を犯してしまった事は事実なのですから、寛大なお心に感謝致します」

 それからドギンはロムスンの隣に座り、二人は語り合いました。

 ドギンは草原の民については銀の君から教わった事の中でも僅かでしたので、知らないことばかりでしたから、ロムスンの話す話はどれも興味を引くものばかりでした。

 特に、パイプ煙草の話がドギンのお気に入りで、馬の姿を失った草原の民が草の味を懐かしんで、様々な試みがなされた末に、パイプに煙草を詰めると、あの頃の味わいを感じる事がわかり、パイプ煙草の始まりとなったそうでした。

 そのため、草原の民のほとんどがパイプ煙草の煙遊びが得意で、特にロムスンはその名人でした。

 煙の輪を輪の中に潜らせて真っ直ぐ並べると、その輪の中に馬の形をした煙を潜らせた走らせるという妙技を披露してくれました。

 存外、ロムスンは見た目に反して気さくな男でしたので、ドギンもこの男の事を気に始めました。

 ロムスンはしみじみとしながら言いました。

「これを始めたのは、妻に先立たれてからだ。その頃のわしは、まだ若く、周りの部族達に舐められぬように、ひめゆり野だけでなく、川の向こうにあるつむじ野や、山人の寝床の方にあるウラル高原を目まぐるしく駆け回っておった」

 パイプ煙草を一度、吸って、煙が溜息にまじり、それからまた、語り始めました。

「だから、妻を失った悲しみの中、バカ息子と臆病な娘の世話をするのは大変苦労したし、わしもどうするべきか、分からなかった。娘はまだその時は幼く、その頃から人見知りと警戒心が強くて、家を空けていたわしを恐れ、よく兄のアムルの背中に隠れていたな」

 ドギンは言いました。

「それで、始めたのが煙遊びということでしょうか?」

 ロムスンは頷きました。

「さよう。ある時、アムファンが煙遊びをする大人を目で追いかけていることに気づいてな。わしは忙しさのあまりパイプ煙草を吹かす暇なんぞなくてな。わしが妻を亡くしてからは文官の数を増やして、なるべく家族との時間を増やすようにしたから、久しぶりに吸ったのだが、久しぶりなもので、むせ返ってしもうたわい」

 パイプをじっと見つめるロムスンの姿に、ドギンは家族を思うロムスンには話さねばならない、と思い、言いました。

「失礼を承知して申し上げたい事がございます」

「何だね」

 ロムスンの視線はドギンに向けられました。

 ドギンは覚悟を決めて言いました。

「婚約の件は取り消してもらえませんか?アムファンさんが恩を感じて言ってくれたのだとは理解しております。しかし、そんな些細な事で、彼女の自由を奪いたくないのです」

 真剣な眼差しで見つめるドギンに、ロムスンは何も言わずに、視線をパイプに移しました。

 それでもドギンは続けました。

「私は疑問なのです。何故、草原の民たる彼女が、ある時の先祖の姿になれる彼女が、それを誇りに思う彼女が、私や掟、邪な連中の思惑に、縛らねばならぬのですか。彼女は否定されねばならぬのですか」

 それを聞いたロムスンは再びドギンに視線を向け、静かに言いました。

「その通りだ。わしは大事な娘を守るために掟というもので縛りつけた。その傲慢さは自らの知るところ。だが、仮に婚姻を破棄したところで、貴君の命はないし、このような事例の女の未来はどうなるのか、ご存知かね?」

 ドギンは首を横に振ったので、ロムスンは言いました。

「そういった女は尼になり、テントの奥深くに隠された女達の世話係になる。そこには自由とは無縁の、暗闇の中だ」

 ドギンは項垂れ、拳を握りしめました。

 ロムスンは言いました。

「彼女の自由を尊重したいのであれば、受け入れてくれ。婚姻の儀は祭りの最終、灯篭送りの時に行い、それからは貴君は部族の一員として、ここで暮らしてもらうことになろう」

 そこでドギンは自身の課せられた使命を思い出され、ロムスンに言いました。

「それは出来ません、私には大事な使命があるのです」

 ロムスンは眉間にしわ寄せて理由を尋ねたので、ドギンは洗いざらい、全てのことを話しました。

 ロムスンも難しい顔をして言いました。

「私からできる事はさっき言った通りの事だけだ。君が娘をどう思っているか、君自身の使命も理解するがな」

 ドギンの心の中は板挟みでした。

 使命は果たさねばならないが、どの道アムファンの事を解決せねばそれも果たせられないという悪い流れにあると考えているうちに、草原の下を走る姿や、厩で慰めてくれた優しいアムファンの姿が浮かんできました。

 それと同時にある妙案も浮かんで、ロムスンに後でまた話す機会を設けたいと言ってその場を後にして、デーンを探しました。

 デーンを見つけはしたものの酒呑みたちと麦酒を浴びながら何かを歌い、話しかけても泥酔していて何を言っているのか分からず、仕方なくジャムカを探したのですが、ジャムカはアムルと共に祭事を執り仕切っていたので、手が離せませんでした。

 そのため、仕方なく一人でアムファンの元へと向かいました。

 集落の外に向かうと、案の定、アムファンが駆け回っていたので呼びけました。

「アムファンさん!」

 アムファンも気づいてドギンの方へ近づきました。

 アムファンが何気なく近づくと、ドギンに頬をしっかりと掴まれ、目を逸らせず、真っ直ぐ見つめる他ありませんでした。

「大事な事なので、なるべくわかりやすい単語で話しますから、よく聞いてください」

 ドギンの真っ直ぐな眼差しに、恥ずかしさで目を逸らしたくなるアムファンでしたが、しっかりと頬を掴まれているのでそれすらも敵いません。

 ドギンは言いました。

「アムファンさん、僕と一緒に、旅をしませんか?」

 アムファンは驚きのあまり、体は固まり、動くことを忘れました。


 この時の私は何故そのような事を言ったのか、検討もつかず、求婚でもされたのだろうか、と嬉しさで舞い上がってしまいそうでした。

 だって、私たち遊牧民は旅をして暮らす人々。

 旅なんて生活の一部で、一緒に旅をしようという言葉は、つまり時に使われました。


 とにかく、勘違いをしていたアムファンの事なんて、露知らずドギンは語りました。

「私は、貴女の自由な姿が、素敵だと思いました。私は、ある旅をしています。とても大事なことで、それを続けながら、貴女の自由を守るためには、これしかなくて」

 あまり熱く語ったものですから、ドギンは一度息を整えてから言いました。

「僕は、貴女を連れ去りたい。貴女の自由を邪魔するものから、僕が全て守る」

 ドギンがそう語ると、アムファンの目には涙が浮かび、何度も縦に首を振りました。

 ドギンはアムファンの首を抱きしめて、優しく言いました。

「それでは決まりです。貴方はもう自由ですよ」

 それから冷たい風が吹くと、抱きしめあった温もりが強く残りました。

「ロムスンさんの元に行きましょう」

 ドギンはアムファンの隣を歩き、二人はロムスンの元へ向かいました。

 そして、ロムスンにも伝えました。

「彼女を私の旅に連れていけば、草原の民としての体裁も守れて、そして彼女を狙う部族からも草原から連れ出せば、狙われる事はないと思います」

 ロムスンも二人を見ながら言いました。

「それで、貴様の言う、娘の自由が保証されると?」

 ドギンが頷くと、髭を撫でて考えてから話しました。

「オルモ暦(雀の頃から続く、東方での暦)で五つ周る時に旅立て。今からだと山に着く頃にはあの山一帯は雪で覆われる。五つ回れば春になってるだろう。旅支度や皆への体裁も兼ねて、それまではここに居るんだ」

 それを聞いたドギンは喜び、何度も頭を下げ、アムファンも嘶きました。

 ロムスンは祭りの方を見て言いました。

「アムルはわしが説得する。その代わり体裁のためにも婚姻は結んでもらうし、灯篭送りの時には式を挙げてもらうぞ」

「はい」

 それから、二人のためのテントが用意され、そこで寝食を共にするように言われました。

 中は至って快適、床は杉の木を使った板で作られ、その上を絨毯が敷かれて、足で踏む度に沈む心地良さと温かさがありました。

 部屋の真ん中に煙突の付いた暖炉が置かれ、暖かく、火を見るのが好きなドギンは近くに置かれたソファーに腰掛けてじっと見つめました。

 円形の大きなテントで暮らすという体験は初めてのものでしたが、正しく住居、のんびり過ごせるものでした。

 アムファンの物であろう本棚が壁沿いに沢山置かれ、天窓から月の光が差して部屋は意外にも明るいものでした。

 ソファーから立ち上がったドギンは本棚に近づき、本の題名を目で追いました。

 どれも叙事詩的な物語の本が並び、実用的な本は僅か数冊で、どれも語学の本でした。

 本棚を見られるのが恥ずかしいアムファンはドギンの服の袖を引っ張り、本棚から離れてほしそうにしました。

 ドギンもそれが分かって謝りながらソファーに腰掛けました。

「私はここで十分なので、アムファンさんはベッドを使ってください」

 ドギンとしてはあくまでも自分は彼女の自由を守るための関係、形上の夫婦だったので、共に寝ることは遠慮したかったのです。

 アムファンはベッドの上に乗って膝を曲げて横になりました。

 ドギンは天窓を見て、彼女に愛する人が出来たら、この関係は解消にしよう、小鬼と族長の娘では、身の程知らずもいいところだ、と思いながら、眠りにつきました。


 天窓から陽の光が差して、ドギンが目を覚ますと、既に着替えたアムファンが朝食を作って待っていました。

 机の上には小麦の粉で作られた皮で包んだ物と馬の乳を使った酒が並び、どれも格別に美味しく、ドギンは喜びました。

 特に皮で包んだ物は中に蒸した羊の肉を使った餡が入っていて、味わい深くこれをとても気に入りました。

「アムファンさん、今度作り方を教えてくれませんか?」

 それを聞いたアムファンも嬉しそうに頷き、朝食を食べ終えると、ドギンはここに居る間は互いの言葉を教え合う約束をして、二人で机の上に本や羊皮紙を広げて、勉強することにしました。

 昼には狼のような男、アムルが飼い主に怒られて耳を垂らす子犬のような雰囲気を纏ってジャムカをお供に訪れました。

 事情はロムスンから聞いたようで、謝罪を兼ねて挨拶に来たのでした。

 ジャムカもこう言いました。

「我が友アムルが無礼を働いた事、私からも謝らさせてください」

 ドギンは二人を許して、少し雑談をしました。

 アムルは、ロムスンの後継者としてこの辺りを巡回する部隊の指揮官で、その名は彼らの言葉で"狼"を意味するヴォロルという渾名で呼ばれるほど高名らしいのですが、実際は心の動きが顔に表せないだけで、とても愉快な人物でした。

 ロムスンもまたそういう側面があるのですが、アムルによると彼もまた人見知りで、兄妹の性格は間違いなく彼の血を受け継いだ事に他ならないと冗談を口にして場を和ませました。

 それからアムルは、しばらくここにいる間は道案内や風習、掟について今度、教えるとの約束をして、ジャムカを連れてあとしました。

 その後、しばらくしてデーンが頭を抱えながらやって来て、酔いが覚めない、と言うデーンをソファーに寝かせて、介護しつつも勉強を続けました。

 ドギンとアムファンが一生懸命に教え合う姿を見ていたデーンは、間に入って手助けをしましたが、これがとても分かりやすく、デーンが足りないところを噛み砕いて説明しつつ、互いの言葉を深め合う、という構図が生まれたのでした。

 それから次の日の夜が来て、ドギンとアムファンは式を挙げました。

 ジョチフ族の婚姻の儀は乾燥させたヒメユリを交換し合い、盃に注がれた馬乳酒を呑むというものでした。

 灯篭送りはジョチフ族全員が灯篭を空へ飛ばし、まるで地上の星空のように暖かい光が宙をゆっくり舞い上がり、そして空に浮かぶとひとつになりました。

 この光景をドギンはデーンとアムファンに挟まれるようにして眺め、その眩い祭りを愛おしく思いました。

「エルには美しいもので溢れかえっているんですね」

 そう呟くドギンにデーンは言いました。

「これからもっと見れるさ。俺たちの旅はまだまだ続くんだからな」

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