第2話・ありえない不運とありえない幸運(幸運)
前回で胸糞回はおわりです。
今回からは主人公・ヒロイン動きます。
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「京平!?何でここに!?そして何てことしてくれたんだ!!!!お前まであの人らに狙われるぞ!!!俺のこと放っておいてにげろ!!!」
来るとは言っていたがまさかほんとに来るとは思わず、あっけにとられてされるがままに逃げてきてしまったが、どう考えてもこの状況はまずい。
不幸中の幸いか、京平の顔はまだ見られていない。ならば京平だけでも先に逃がさねばなるまい。俺があの人らのところに戻り適当にごまかせば、まだ大丈夫なはず。
そう考えて言ったのだが。。。
「放っておけるわけないだろ!だって俺はお前の唯一の友達だぜ?一蓮托生だ!」
「ばかか!ふざけてる場合じゃない!幸いお前はまだ顔を見られてない!いいから逃げろ!」
「うるせぇ!お前はだまって俺と一緒に逃げりゃいいんだよ!」
押し問答が続き、人目の多い商店街が近くなる。このまま走れば人ごみの中に何とかまぎれられるだろう。しかし、この後はいったいどうするつもりなのだろうか。
結局この場で逃げられたとしても、後々捕まってしまうのでは?そう思い聞いてみる。
「この後どうするんだよ。今逃げれたとしても、このままじゃいつか見つかるぞ。」
そういった矢先に後ろからでかい声が聞こえた。
「おい!!!いたぞ!!!追え!!!」
「やべっ!見つかった!」
「ほらいわんこっちゃない!!!というかいい加減手を放せ!男と長い時間手をつなぐ趣味はない!!!それに走りにくい!!!」
なぜだか、先ほどまで命などどうでもいい。今日で終わりだ。と思い、逃げる気力もなくただ言われたとおりに臓器を売ろうとしていたはずが、今は不思議と逃げたいという気持ちがあふれてきている。
「おまえ、手を離したら自分を犠牲にしようとするだろ!」
「もうしない!ここまで逃げてきて今更だろ。今戻ったところで殺されるにきまってる。」
「餓鬼ども!!!とまれ!!!」
しかし、まずいことに声はどんどん近くなっている。京平は迷いなく進んでいるがいったいどこに向かっているのか。最初は学校にでも向かうのかと思い気や、明らかに反対方向に向かっている。警察署も通り過ぎた。交番もこの道の先にはない。
「おい!どこ向かってるんだ!学校とか警察署とか交番とかに行くんじゃないのか!」
「交番に行ったところで、お前の親が借金をしている事実は変わらないし、法外な利子を吹っかけてようが調べるのに時間がかかるし、どのみち交番から出たら証拠が出るまで逃げ続けなきゃならない。そもそも警察がまともに取り合ってくれるかもわからないだろ。」
「じゃあどこに行くんだよ。」
「まってろ。もうすぐ着く。」
そういって、無言で走るスピードを上げる京平。その後ろを追いかけながらおれも走るスピードを上げる。しばらく走っていたら、京平がスピードを落としいった。
「ここ。誰もいない洋館なんだ。見た目はきれいだが、間違いなく人はいない。売りに出されてる看板もあるからな。それに、この前肝試しで数人とこの中入ったが、もぬけの殻だった。ここに隠れればそうそう見つからないだろう。」
そこで、はっと気づいた。先ほどまでいた男たちが近くにいないか警戒する。
「大丈夫、何とか巻いたからしばらくは見つからないだろう。とりあえず入るぞ」
そういった京平の後に続いて俺も何とか高い塀を乗り越え、中に入る。
そこにあった洋館はヤ〇ザに追いかけられていたのにもかかわらず目を見張るほど美しい建物だった。
「よし、いくぞ玲。おーい!玲!いくぞ!!」
「あ、わるい。ぼーっとしてた。」
「気持ちはわからんでもないが、まだ問題が片付いたわけじゃないぞ。」
「わかってる。」
そういいながら、屋敷の庭を歩き。屋敷の玄関のドアへ手を書けようとした瞬間。
「あなたたちは、誰?その制服、神明高校の生徒かしら?こんなところで何をしているの?ここは、私の屋敷なのだけれど。不法侵入しているの気づいているわよね?空き巣なら警察に通報するわよ。」
ふいに後ろから警戒するような声を掛けられた。俺と京平は恐る恐る顔を見合わせ、ゆっくりと振り向く。
そこにいたのは、きれいな黒髪を背中ぐらいまで伸ばし、きりっとした目とまるで針が通っているかのように背筋が伸びている大和なでしこであった。
「もう一度だけ聞くわ。あなたたち、ここで何をしているの?言わないのならそれでもいいわ。警察に通報させてもらうから。」
そういって手提げバックの中から携帯を取り出そうとしている彼女を見て、俺と京平は焦りながら止めた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!事情を話す!わざと不法侵入したわけじゃないんだ!」
「そうなんだ!事情を話す!その事情を聴いてなお怪しいと思ったときに改めて通報してくれていいからとりあえず今は話を聴いてほしい!」
そう必死に訴えかける俺たちを見て、警戒心は持っているものの話は聞いてくれるのか、携帯をしまってくれた。
「なら話しなさい。いったいなぜここにいるのか、何が目的か、すべて話して。」
そういって、俺の親のこと、借金のこと、借金のかたに臓器を売られそうになったこと、それを京平が助けてくれて、たまたま前に来たときは住人がいなかったこと。などを詳細に説明した。
「なるほど、でも信用はできないわね。いえ、出来事が信じれないのではなく、私はその場を見ていない。あなたたちが嘘をついているかもしれない可能性をぬぐい切れないのよ。」
そう彼女は言い捨てた。しかし、京平は食い下がった。
「頼む!最悪俺のことは通報してもいい!こいつのことはかくまってくれないか!!!」
そうして京平はその場で土下座する。
「あなたは、見ず知らずの名前も知らない、今日初めて会った人のお願いを私に聞けと言っているのかしら?」
そう眉を顰め責め立てるように土下座をしている京平を見下ろし彼女は言った。
それに対し、すかさず京平は
「申し訳なかった。俺の名前は、安達 京平。そして、俺の隣が小鳥遊 玲。こいつがさっき話していた。親に捨てられ、ヤ〇ザに臓器売られそうになったっていうやつ。」
そう対応すると少し彼女は表情を軽くし、
「すぐに、誤って実行に移せたところはいいところね。私の名前は椿 彷徨。まぁ、あなたたちが嘘を言っているかどうかは調べればわかること。もし、仮に本当のことだとしたら、助けてあげる。ただし、本当かどうかわかるまでは、館の客間に軟禁させてもらうわ。学校にはこちらから連絡するので安心して頂戴。」
俺は、てっきり断れるものかと思ったのだが、証明が終わるまで軟禁状態とはこんなにすんなり了承してくれるとは思わず驚いてしまった。京平も同じ気持ちだからか、俺と同様驚いた顔をしている。
「とりあえず、館を案内するわね。ついてきなさい。といっても、客間までは直行させてもらうからそこまでの間のみの案内だけれど。」
この出会いが運命を変えることになるとは思わなかった。
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ごめんなさい。予想以上にヒロインとの出会いが長くなり、
執事になるところまでいきませんでした。
次回は主人公執事になります。
コメント等々くれると励みになります。
よかったらしてってください。
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