第17話 仮拠点建築

「どうも、ポットマンです。今日はコボルトたちのために簡易住宅を作っていきます」


 画面に映るのは、例のごとく『サイバーなマスク』を被ったポットマン。

 草刈りをしていた日に投稿された動画だ。


『コボルトたちに家を作るのか?』

『あれ、でも集落があったよな……?』

『新しく作るのかな?』


「以前の動画で手に入れた研究所の遺跡。あの周辺にコボルトたちに住んでもらった方が、番犬も居て安全だろうという事で引っ越すことになりました。そのための家づくりですね」


『なるほど!』

『番犬ってあのゴーレムのことかwww』

『コボルトたちの家は原始人みたいだったし、良い家を作ってあげてくれ!』


 ハヤテに乗り込むポットマン。

 ハヤテには長い腕が生やされており、先には鋭利な丸いのこぎりが付けられている。


「とりあえず木材の方を準備するんですけど、ハヤテには伐採用アタッチメントを付けておきました。これで簡単に木が伐れます」


 ギュイーン!!

 回転を始めるのこぎり。木に刃を入れると、豆腐のように切り込んでいく。


『これ兵器にも使えるだろwww』

『見た目からしてえげつないわwww』

『これもネモちゃんが作ったんやろか……』


 バキバキバキ!

 ある程度まで切り込むと木が倒れた。

 倒れた木を等間隔に切り分ける。

 運びやすい程度に短くなると、犬型ゴーレムが丸太を咥えた。それをソリのような物に乗っけていく。


『おお、犬ゴーレムも手伝ってるのか!』

『木の枝で遊んでる犬みたいだwww』


「……ちなみに犬ゴーレムの名前は『ヤキザカナ』に決まりました。命名者はネモです」


『なんでヤキザカナなんだwww』

『犬にヤキザカナ?????』

『ただのマスコットかと思いきや、ネモちゃんの癖が強すぎるwww』


「名前の由来は、朝ごはんに食べた焼き魚が美味しかったからです」


『意味が分からんwww』

『あれ、もしかして今後もゴーレムが増えたらネモちゃんの好きな食べ物の名前が付けられるんか?』

『……出来る限りかっこいい名前の食べ物を食わせよう!』

『ビーフストロガノフとか?』


 画面が早送りになり、どんどんと丸太が量産されていく。

 ソリがいっぱいになると伐採が止まった。


「とりあえず、こんな感じですかね。研究所の方に移動したいと思います!」


 カット編集が入り研究所前に移動した。

 研究所の前にはコボルトたちが集まっており、大量の丸太を見てはしゃいでいる。


「わー、いっぱいだー」

「大きいお家が作れちゃうよ!」

「皆で一緒に住めるねぇ」

「よし、皆。これから家を作るから、ネモの言うことを聞いて動くんだぞー」


 『はーい』と返事をするコボルトたち。

 カメラがコボルトたちを見降ろすような俯瞰視点になる。

 何倍速かで映像が進むと、どんどんと丸太が加工されて、家が作られていく。


『コボルトたちがちょこちょこ動いてるの可愛いなwww』

『にゃいんくらふと?』

『実況動画とかで見たことある絵面だわwww』


 日が傾き始めたころには家が完成した。

 粗雑な掘っ立て小屋だが、初めての建築にしては上手くできている。

 泥だらけになったコボルトたちは嬉しそうに笑いあっていた。


「すごーい。立派なのができたねぇ」

「入ってみようよ!」

「あ、待て待て! 家が汚れちゃうから研究所のシャワーを浴びてからにしような!」


 ポットマンも手伝っていたため、見るからにくたくた。

 しかし、コボルトたちはまだ元気一杯である。

 見た目以上に体力があるのだろう。


 ポットマンはコボルトたちを研究所に誘導しつつ、カメラに手を振った。


「こんな感じで、とりあずの仮住まいは出来ました! とりあえず間に合わせに作った感じなので、今後も発展を頑張って行こうと思います。また見てください!」


『お疲れ。次の開拓も楽しみにしてる!』

『俺もレムリアでコボルトたちに会いてぇなぁ……』

『本物のレムリアはどんな感じになってるんだろうなwww』


 こうして建築動画は幕を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る