第16話  ヤキザカナ

「喜べネモ! ついに配信で収入が入ったので、今日からは朝ごはんに焼き魚を追加してやる!」

「わーい。やったー!」


 バンザイをして喜ぶネモ。

 その前に焼き魚、白飯、味噌汁の朝ごはんを差し出す。

 先日まではメインの一品が無い悲しい朝ごはんだったが、今日からは違う。

 朝から満足できるほどに食べられるのだ。

 はふはふと白飯と焼き魚を食べるネモは、にこにこと嬉しそうだ。 


 その様子を眺めながら直人も席に付いた。

 スマホで動画サイトを開くと、テレビ局が配信しているニュースを開く。


『国連が正体不明の浮遊大陸を『レムリア』と呼称するすることを決定しました』


 どうやら、直人たちが足を運んでいる浮遊大陸に名前が付けられたらしい。

 『レムリア』と言えば『ムー大陸』みたいな、オカルト系で出て来る架空の大陸だったはずだ。


「ネモたちが住んでる大陸。レムリアって呼ばれるんだってさ」

「そうなんだー」


 残念ながらネモの興味は引けなかったようだ。

 それよりもご飯に夢中である。


 結局、どの国も浮遊大陸――レムリアへの侵入は成功していない。

 相変わらず周囲に張られたバリアによって、手も足も出ない状態だ。

 まだしばらくの間、直人たちの生活は平穏である。


 その後のニュースでは目新しい情報も無かったため、直人も興味を無くしてご飯に集中した。

 朝から食べる焼き魚は、とても美味しかった。



 その後、直人たちはレムリアの研究所へと移動。

 外に出るとハヤテを起動した。


「よし、今日は研究所付近の草刈りをしよう」

「おー!」


 今日のハヤテは武装が違う。

 頭の前の方に巨大な機械が付けられている。

 それは伸び切った草を一本残らず駆逐するための兵器――芝刈り機である。


 さっそく直人はハヤテに乗り込むと、芝刈り機を起動。

 ハヤテがゆっくりと前に進む。

 通り過ぎた後には、切れに切りそろえられた草原が残されていた。

 ちなみに切られた草は吸引して圧縮。どこぞのブロックゲームのようにキレイな四角となって排出されている。


「BOW!」


 圧縮された草は、研究所を守っている狼型のゴーレムが咥えて隅へと寄せていた。


「そう言えば、この狼ゴーレムの名前とかって決めてなかったな……」

「はいはーい! ネモが名前決めたい!」

「おう、好きに決めて良いぞ」


 そうは言ったものの、ちょっと不安がある。

 ネモのネーミングセンスは独特だ。

 あのビーム砲を『ぴかぴかズキューン』なんて名前を付けて呼んでいたくらいだ。


 ネモは口のあたりに手を当てて首を左右に振った。

 うーん。うーん。とのんびり呟いている。


「決めた! 『ヤキザカナ』にしよう!」

「GAW!?」

「えぇ……?」


 ネモの提案には、流石の狼ゴーレムもびっくり。

 思わず持っていた草ブロックを落とした。

 直人も困惑である。


「な、なんでヤキザカナなんだ?」

「今朝の焼き魚が美味しかったから!」

「そ……かぁ」


 命名権をネモに与えたのは直人だ。

 今さらダメとも言えない。


「……よろしくな。ヤキザカナ」

「……GAW」


 ヤキザカナは渋々と頷くと、引き続き草を運び始めた。

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