第15話 ぴかぴかズキューン

 天を貫くような巨大樹の森を進む直人たち。

 その後も何度かゴーレムに遭遇した。


「よし、全戦楽勝!」


 直人は停止したゴーレムに触り、拠点へと転移させる。

 これで四匹目。素材は順調に集まっている。


「それにしても、この島はゴーレムが多いな……コボルトたちの島は、もっと平和だったのに……」

「不確定ですが、ゴーレムを製造するゴーレムが生息している可能性があります」

「え、そんなのが居るのか……」


 そうなれば、ゴーレムとのエンカウント率の高さも納得がいく。

 直人はハヤテに乗り込み、歩みを進めた。


「まぁ、俺らにとっては、ありがたい存在だな」


 ゴーレムを作るゴーレム。

 もしも、この島を制圧しようと思ったら厄介だろうが、ただパーツを採りたいだけの直人たちにはむしろ嬉しい存在だ。

 どんどん量産して欲しい。そしてパーツを採らせて欲しい。


『じゃあ、ゴーレムはどんどんリスポーンするわけか』

『狩り放題やねwww』


「――お、アレが目当ての遺跡じゃないか?」

「そのようです」

「あれー? 上の島とは違うね?」


 新たに見つけた遺跡はビルのような見た目をしていた。

 コンクリート――とは違うのだろうが似たような素材で作られている。


「マスターたちが過ごしている島では、最新の建材を用いた建物が主流でした。こちらの島では、一般的な素材を用いていたようです」


 どうやら、異世界の古代文明でも、あんな不思議素材の建物ばかりではなかったらしい。

 こちらの方が一般的なようだ。


「だけど、こっちにはゴーレムも見当たらないな……」


 ハヤテを動かして遺跡を覗く。

 何も残っていない。新設したオフィスのように空っぽだ。

 ミニマリストの部屋だって、もう少し物が置いてある。


「残念だけど、ネモが喜びそうな物は残って無さそうだな」

「なんで空っぽなんだろう。エルフが持って行っちゃったのかなぁ……」


 しょんぼりと落ち込むネモ。

 しかし、部屋の隅に目を向けると首をかしげた。


「あれ、なんだか大きな傷が残ってるね?」

「なんだアレ、熊が爪とぎでもしたのか?」

「……マスター。申し訳ございません。囲まれました」

「え?」


 マスク内部に映された地図。そこに赤い光点が浮かぶ。敵性反応の印だ。

 見上げると猿のようなゴーレムが直人たちを見降ろしていた。

 一匹ではなく複数。見る限り五匹の群れだろうか。


『囲まれてる⁉』

『うわぁ……明らかにポットマンたちを狙ってるよな……』

『逃げた方が良いんじゃ……』


「もしかして、コイツ等がココの警備をしてたり?」

「その可能性が高いでしょう」


 ガサリ!!

 群れの中でも大きな個体が樹上から直人たちを睨んだ。

 もしかして、ボス猿だろうか。


「GYAAAAAAA!!」


 ボス猿が叫ぶように鳴いた。

 その声に合わせて猿たちが飛び掛かって来る。


「ネモ。ちゃんと捕まっておけ!」

「分かった!」


 ヒシっと直人の足にしがみつくネモ。


「いや、俺の足じゃなくて機体に――まぁ良いか!!」


 ダン!!

 勢いよくジャンプするハヤテ。

 先ほどまでハヤテが居た場所に、猿たちが殺到する。


「これでも食らっとけ!!」


 ズガガガガガ!!

 ハヤテの機関銃が火を噴いた。

 しかし、猿たちは身軽に避けると樹上へと逃げていく。


「一対五じゃ不公平だよな……オズ、アレを使うぞ!」

「かしこまりました」


 がしゃん!

 機関銃の逆側に付いてる射出装置を構えた。

 パシュ! パシュ! パシュ!

 炭酸飲料の蓋でも開けたような軽い空気音。

 それと共に射出されたのは三基のドローンたち。それぞれが狙いを構えると、猿たちに向かって魔法を放つ。

 炎、雷、紫色の光線が飛び交うが、猿たちは息の合った動きでちょこまかと逃げ回る。


『当たらねぇ……』

『ドローンくんもうちょっと頑張って!?』

『猿たちも上手いこと避けるなぁ。普通なら逃げる場所でかち合ったりしそうだけど……』


「やたらとチームワークのある猿たちだな……ボス猿に秘密がありそうだ」

「はい。司令塔から撃破することを推奨いたします」

「よし、派手に行こうか」


 ズガガガガガ!!

 ハヤテの機関銃をボス猿に向かって掃射。

 ひらりひらりと木々を伝って避けるボス猿。

 このままでは攻撃が当たらない。


「隙が無いなら作れば良い」


 ハヤテの背中から伸びていた長い砲がボス猿に向いた。

 砲とは言ったが、二本のレールが目立つデザインの不思議な砲身をしている。

 バリバリと音を鳴らしながら、その砲にエネルギーが溜められていく。

 直人はじっくりと狙いを定めて――。


「ネモ、使わせてもらうぞ!」

「はっしゃー!」

「GYAA!?」


 ズッドォォォォォォン!!

 砲口から光線が飛び出した。

 それはボス猿が飛び移ろうとしていた巨木に命中。そのまま貫いた。

 ミシミシと音を立てて倒れる巨木。

 ボス猿は飛び移る足場を失い地面へと落ちていく。


「わーい。ネモが作った『ぴかぴかズキューン』だよー!」


 ちなみに、『ぴかぴかズキューン』とはビーム砲の名前である。


『荷電粒子砲!?』

『威力スゲェぇぇぇ!?』

『ネモちゃん……恐ろしい子……⁉』


「ここなら避けられないな!」


 ズガガガガ!!

 ボス猿ゴーレムを撃ちぬくと、どさりと地面に落ちた。


 同時に他の猿たちは連携を失う。

 ガツンと猿同士でぶつかって、パニック状態だ。

 やはり、ボス猿が指令を出していたから連携が取れていたらしい。


「後は残党をせん滅するだけだ」


 ほどなくして猿型ゴーレムたちは全滅。

 直人たちは無事に初めてのゴーレム狩猟を成功させた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る