第14話 ロボゲーだこれ⁉
「どうも、生配信は初めてですね。ポットマンです」
ポットマン――直人はハヤテの操縦席からオズに向かって手を上げた。
オズの画面には配信中の映像と、コメントが流れている。
『え、生配信?』
『ポットマンの動画ってCG使った映像作品だろ? 配信なんてできるのか?』
『あらかじめ背景のCGとかは作ってあって、ポットマンがアドリブで動くのかな?』
『ってか、マスクがカッコよくなってる⁉』
コメントで指摘された通り、今日のポットマンはティラノサウルスのマスクを被っていない。
ゴム臭いパーティーグッズはもう卒業。
代わりにツルっとした顔に、青いラインの入った『サイバー』なマスクを被っていた。
これもネモとオズが作ってくれたプレゼントだ。
マスクの内部には周囲の地図や、生命体の位置が表示されている。
ついでに配信の映像とコメントも確認できる。
見た目通りにハイテク機能が詰め込まれたマスクだ。
「あ、マスクカッコいいでしょう? 前回手に入れた設備を利用してネモたちが作ってくれたんです」
「自信作だよー」
操縦席からネモが顔を出した。
普通に立っていると隠れてしまうので、操縦席の壁に手をかけて必死に背伸びしている。
『ネモちゃん有能!』
『俺もネモちゃんお手製のマスク欲しい……』
『グッズとして売ってくれ!!』
「あはは、グッズ化に関しては考えておきます……それでですね。今回生配信にしたのは理由がありまして」
直人は前を向く。
そちらは断崖絶壁。下を覗くと、大きめの島に密林が広がっていた。
「今回は別の島へと冒険に行くんです」
「ゴーレム狩りに行くんだー」
「そうだな。前回で物を作るための設備は手に入れたんですけど、もっと素材が欲しいのでゴーレム――前回の狼みたいな機械ですね。アレに似た奴らを狩りに行きます」
直人はぽんぽんとハヤテを叩いた。
ハヤテの機体には新たに機関銃や砲。さらに『何かの射出装置』のような武装が追加されている。
「とりあえずハヤテの武装はバッチリなので、そこらのゴーレムくらいなら倒せるはずです」
『よく見たらハヤテ強そうになってる!』
『狩ゲー始まった!?』
『ゴーレム狩りじゃぁぁぁぁぁ!!』
「それじゃあ、さっそく下の島に降りようと思います」
がしゃん。ハヤテが一歩踏み出すと、下層の島がよく見える。
下への距離はそこそこある。立派なビルの屋上から道路を見下ろしたような高さだ。
少なくとも生身で落ちれば無事では済まない。運が良くて骨折だろう。
今さらながら直人は怖気づく。
「これ、本当に大丈夫なんだよな?」
「ハヤテにはスラスターを搭載しました。落下時の衝撃は十分に軽減可能です」
「そ、そうか……信じるからな?」
『ここまで来てビビってるのかwww』
『まぁ、ひも無しバンジーだし……w』
『ポットマン頑張れーwww』
ガシャン!!
ハヤテが勢いよく飛び出した。
重い金属の塊は、風切り音を鳴らしながら自由落下。
ギュッと直人がをつむる。
ゴウ!!
直人の足元から、バーナーのような音が鳴る。
スラスターが起動したようだ。
同時にハヤテの落下速度が低下。直人たちはゆっくりと落ちていった。
無事に密林へと着地した直人たち。
周囲にそびえるのは巨大な木々。あまりにも巨大すぎて、自分たちが虫みたいに小さくなったようだ。
「ゴーレム狩りとは言ったものの……どうやってゴーレムを探そうか……」
「それでしたら、遺跡を目指して進むのをお勧めします。遺跡の近辺には警護のためにゴーレムが設置されているでしょう。上空から撮影した映像を元に、遺跡らしき場所へとガイドをいたします」
「賛成! ついでに遺跡の探検もしよう!」
「そうだな。あてもなく、さまようのもバカらしいし……遺跡を目指してみるか」
直人はマスク内部に表示されるガイドに従ってハヤテを動かす。
木の根によって地面はボコボコしているが、ハヤテならなんのその。
ひょいひょいと進んでくれた。
「お? センサーに何か引っかかったな……」
「ゴーレムです。警戒してください」
ハヤテの体をかがませて、ゆっくりと進む。
地面から飛び出した根っこから覗くと、ゴーレムの姿が見えた。
「人型のゴーレムだな」
「標準的な警備用ゴーレムです。武装強化したハヤテの敵ではありません」
「じゃあ、初陣と行くか」
「ハヤテ頑張れー」
がしゃん!!
二本の強靭な足を使って飛び上がったハヤテ。
スラスターを使ってかかとから火を噴きだし、ゴーレムへと迫った。
ガツン!!
キレイに跳び蹴りが決まる。
ぐらりと倒れたゴーレム。その頭に向かって、ハヤテの機関銃が火を噴いた。
ズガガガガガガガ!!
ゴーレムの頭はハチの巣。
完全に機能を停止した。
『おお、ロボゲーだこれ!!』
『かっこいい! 俺もハヤテ欲しい!!』
『不意打ちとはいえ、ここまで一方的に勝てるとは……やるやん』
「敵性個体の停止を確認。勝利です」
「よし、とりあえず楽勝だったな……素材は転移すればいいんだっけ?」
「はい。手袋で触ってください」
直人はネモたちに貰った手袋で、倒したゴーレムの残骸に触る。
手袋から青い光が飛び出すとゴーレムの残骸を包む。
気がついた時にはゴーレムの残骸は消えていた。
「今ので拠点に素材を送りました。向こうでコボルトたちが収納してくれているはずです」
『おお、便利だ!』
『実際の探索者も似たような技術が使えればなぁ』
『転移魔法なんて使える奴は、だいだい国が囲ってるからなwww』
無事に最初の先頭に勝利した直人たち。
そのまま森の奥へと進むことにした。
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