第13話 試作

「危険が無ければ意外と可愛いな」


 ポットマンに向けて伏せをした狼型の機械。

 ポットマンが鼻先を撫でても大人しいままだ。

 ハッキングは無事に成功したらしい。


『大人しくなったらカワイイかも?』

『ちゃんと仕草が犬っぽいなwww』

『俺はケモナー?』

『ケモナーさんの心が揺れとるわwww』


「とりあえず、このままココを守っといて貰うか」

「BOW!!」


 狼は元気よく返事をすると、遺跡の前でお座りをした。

 周囲を警戒してくれているらしい。

 ポットマンたちはその脇を通り過ぎて、遺跡の扉へと向かった。

 倉庫に入った時と同じように、円状の光が出る。その光と回すように手首を捻ったのだが。


「あれ、開かないぞ?」

「パスコードが必要なようです。解析します――完了しました」


 オズの言葉通り、扉が開く。

 遺跡の内部は、なにかの研究所のような場所だった。

 大きな古代の機械がいくつも並んでいる。


「確かに、ここならハヤテの強化もできそうな雰囲気だなぁ……あれ、そういえば入り口は鍵がかかってたのに、どうしてネモは中の様子を知ってたんだ?」

「あそこから覗いたんだぁ」


 ネモが指さす方を見ると、窓が付いていた。

 木々におおわれているため、外の景色は楽しめない。

 だが、あそこから中を覗くことはできるだろう。


「なるほど……良く見つけたもんだなぁ……」


 ポットマンは、ぽんぽんとネモの頭を撫でる

 ネモは『えへへ』とはにかんでいた。

 褒められて嬉しいらしい。


「ここの設備はすぐに使えるのか?」

「保存状態は良好のようです。経年劣化によって部品の交換が予測されますが、すぐに完了すると予想されます」

「そっか、じゃあ今回の動画はここまでですね。次回は設備が使えるようになってからだと思います」


『乙!』

『次回も楽しみにしてるわ』

『さっきの戦闘シーンも良かったし、ドキュメンタリードラマっぽくて面白いよな』


 そんなこんなで、動画は遺跡にたどり着くまで終了した。


  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 直人たちが研究所の遺跡へとたどり着いた後。

 この研究所には転移するための設備があったため、直人たちは一度帰宅。

 食事を終えてお泊りセットを持って、研究所へと戻った。

 そして翌朝。


「ふぁ、さむ……やっぱ空だから朝は冷えるな……」


 起床した直人は体を起こそうとしたのだが、妙に思い。

 見ればお腹の上にネモが乗っていた。


「ネモ、朝だぞ?」

「うにゅう……」

「起きないな……昨日は何時まで作業してたんだ?」

「夜の一時ごろまで続けていました」

「凄いな。ネモはそんなに機械いじりを気に入ったのか……」


 昨晩から遺跡の機械メンテナンスを始めた直人たち。

 オズの指示に従って機械をいじっていたが、直人は集中力が切れて呆気なくダウン。

 しかし、ネモは機械いじりが楽しいようで、直人がギブアップした後も作業を続けていた。


「それで、修理の方は上手くいったのか?」

「こちらをご覧ください」


 直人はそっとネモを退けて布団をかけた。

 オズの案内に従って、機会の前に立つ。


「こちらの機械は『クラフター』です。部品を投入することで、自動で機械の組み立てが可能です」

「うぉ、めちゃくちゃ便利だな!?」

「試作として、倉庫から持ってきた部品を用いて作ってみた物がこちらです」


 クラフターの脇には、手袋のようなものが置かれていた。

 いや、手袋よりも小さな籠手と言った方が近いだろうか。


「これは?」

「今まではハッキングなどをする際に、私を押し付ける必要がありました。しかし、それでは今後の撮影に支障が出るため、代わりとなるように用意した籠手です」

「おお、これでもハッキングが出来るってことか?」


 直人は試しに籠手を装着。

 サイズはピッタリだ。指を動かすと、カチャカチャと間接がスムーズに動く。


「これ自体にハッキングをするような処理能力はありません。私が命令した魔力信号を発信するだけの装備です。私が存在しない状況では使用できません」

「なるほど、あくまでもオズありきの装備なのか……なんにしても便利だな、ありがとう。後でネモにもお礼を言わないとな」 

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