第12話 犬
数日後。ポットマンのチャンネルに動画が投稿された。
「――そんな感じで、新しく仲間になった『ハヤテウォーカー』です。よろしくお願いします」
ガションガションと草原を駆けるハヤテ。
その操縦席にポットマンとネモが乗り込んでいた。
ポットマンはグワングワンと動くティラノサウルスのマスクを抑えている。
『なんだそれ⁉』
『うぉー。俺も欲しい! 乗ってみたい!』
『意外と速いなぁ。車よりちょっと遅いくらいか?』
いつものように動画にはコメントが流れていた。
「それで、この島って意外と危険も多いので、ハヤテを強化する設備を手に入れるために遺跡に向かってるんですけど――あぁ、見えてきましたね」
見えてきたのはいつものような遺跡。
倉庫だった遺跡よりも、少し大きく見える。
その遺跡の前には、巨大な狼のような機械。周囲を警戒するように、ぐるぐると見回りをしている。
『うお、なんだアレ⁉』
『明らかに襲って来るやつじゃん……』
「あの遺跡には近づけないだろ⁉」
ポットマンとネモはハヤテから降りた。
背の高い草にそっと隠れて、狼のような機械の様子をうかがう。
「オズ。あれは何とかなりそうか?」
「残念ながら不可能です。あれは軍用機ですので、ハッキングの際に抵抗することが予想できます。アクティブ状態でのハッキングは危険性が高いと判断します」
「アクティブ状態ってことは……無力化できれば可能ってことか?」
「その通りです」
『お、カメラマンさんの名前はオズって言うのか?』
『オズちゃん。クール美人っぽい声でタイプ』
『やっぱコボルトなんやろうか?』
『ハヤテウォーカーもハッキングしたって言ってたけど、同じようにアイツも操れるのか?』
『いや、会話の感じからすると難しいっぽくね?』
「なんとかして無力化できそうな方法ってないか?」
「少々お待ちください……検索した結果、あの機体の腹部には魔力生成用のコアユニットが露出している可能性があります。そこに熱的負荷を与えることで安全装置が作動。再起動するまでの数秒間。無力化することが可能です」
「数秒間でハッキングが可能なのか?」
「軍用機と言えども旧型です。私なら可能です」
オズは何となく自慢するように言い切った。
「それは頼りになるな……問題はどうやって熱的負荷? を与えるかってことだけど……」
「作戦があります。それにはネモ様の協力が必要となりますが」
「私も頑張るよ!」
「それでは、作戦の概要を説明します――」
オズの作戦を聞いた後、ポットマンたちは行動を始めた。
まずはネモがトコトコと狼のような機械に近づく。
機械はネモを気にすることもなく周囲を見回している。
鳥などと同じように、警戒対象に入っていないのだろう。
ネモは狼の顔に近づくと、布を広げてバッと飛びついた。
それはポットマンが来ていたパーカーだ。
狼の顔にはセンサーカメラが付いている。それをパーカーで隠してしまえば、狼は周囲の状況が視認できない。
ネモは狼の耳にパーカーを引っかけると、バッと飛び退いた。
「GARUUUU!?」
焦る狼。ぶんぶんと頭を振るうがパーカーは取れない。
ズドン!!
そこに勢いよくハヤテがタックルを決めた。
ゴロンと体勢を崩してお腹を見せる狼。その腹部には球体のパーツが青く輝いていた。
「そこが弱点か!」
草むらから飛び出したポットマン。
以前に遺跡で見つけていた銃のような古代道具を構えた。
銃口のあたりから飛び出したのは真っ赤な炎。狼の球体に衝突すると、小さく爆ぜた。
狼に外傷は無い。相手は軍用の兵器。簡単に手に入るような武器では、まともに傷もつけられないのだろう。
しかし、狙いは熱による安全装置の作動。
球体の光が青から赤に変わると、狼からガクンと力が抜けて横たわる。
警戒を促すような黄色い光に変わった。
これが再起動中の合図だ。
「オズ、後は頼んだ!」
カメラがグッと狼に寄る。
ガガガガ!!
狼から異音が響いた。
『どうだ⁉』
『ドキドキする……』
『カメラさん近づきすぎて見えないよ⁉』
数畳ほどカメラが制止すると狼から離れた。
「GARU?」
キョロキョロと周囲を見回す狼。
ポットマンを見つけると、伏せをするように頭を下げた。
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