第11話 ハヤテウォーカー

「よし、お前の名前は『ハヤテウォーカー』だ。よろしくな」


 直人はコボルトの集落でジッとしている『夜回りさん』をポンポンと叩いた。

 つい昨日、ハッキングして連れてきた個体だ。

 『ハヤテウォーカー』と競走馬のような名前を付けた。日本語に訳すと『早歩き』だろうか。

 名付けておいてなんだが、ちょっとダサかったかも。


「マスターにご提案があります。『ハヤテウォーカー』の強化をしてはいかがでしょうか?」

「強化って、どうしてだ?」

「島内の探索によって、この島にはマスターの脅威となるような個体が確認されています。野生のモンスターや、古代から残るゴーレムなどです。これらに対応するためには、『ハヤテウォーカー』の武装を強化するのが最も効率的だと判断いたしました」


 確かに、昨日の探索だけでも危ない状況があった。

 鳥のモンスターに襲われたところを『ムベンベ様』によって助けられたし、この『ハヤテウォーカー』だってハッキングができなかったら直人を襲っていたかもしれない。

 この島は基本的にはのんびりとした平和な場所だが、まったく脅威が存在しないわけでもない。

 武装を強化して、もしもに備えるのは良い選択だろう。


「オズの言う通り、武装を強化したほうが良さそうだな。具体的にはどうしたら良いんだ?」

「技術的な面に関しては、私の指示に従って頂ければ大丈夫です。強化用の素材は、以前発見した倉庫から調達できます。問題となるのは設備です」

「なるほど、『ハヤテウォーカー』を改造できるようなデカい魔道具とかが欲しいのか?」

「その通りです」


 まさか、その辺に落っこちていることはないだろう。

 目標とするべきは遺跡。

 しかし、そう都合の良い遺跡が見つかるかどうか。


「ここはネモの知恵を借りるしかないかもな」

「私に出来ることならなんでも言って?」


 ネモは『ハヤテウォーカー』に乗っかり、ニコニコと機体頬ずりしていた。

 ネモはちょっとした遺跡マニア。

 島内の遺跡のことならネモに聞くのが一番だ。


「オズ、設備があるのってどんな感じの遺跡なんだ?」

「参考画像を生成します……ネモ様、こちらをご覧ください」


 ネモの画面に画像が映し出された。

 写真のようにも見えるが、生成と言っていたしAIイラストみたいな物なのかもしれない。

 ごちゃごちゃと大型の工作機のような物が並んでいる。

 工場みたいな見た目だ。


「こんな感じの遺跡を探してるんだけど、心当たりはあるか?」

「うーん、ちょっと似てるのなら知ってるよ?」

「本当か⁉ そこに案内してくれるか?」


 笑顔で『良いよー』と返答してくれるのを期待したのだが、ネモは複雑そうに首をかしげた。

 なにか問題があるのだろうか。


「だけど、危ない場所かも。強そうなゴーレムが守ってるんだぁ。コボルトは襲われないけど、直人は襲われちゃうかも?」

「うっ、それは怖いなぁ……またハッキングできたりしないか?」

「恐らく警備用のゴーレムです。ハッキングの可否は型式を確認しないことには分かりません」

「とりあえず見て見ないと分からないか」


 しかし、警備用のゴーレムなら遺跡からは離れないだろう。

 偵察くらいなら安全に行えるはずだ。


「まぁ、様子だけでも見に行ってみるか」

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