第6話 開封動画

 とある大手動画投稿サイトに一本の動画が投稿された。

 『浮遊大陸で遺跡探検!!』とタイトルの付けられた動画は、SNSを通じて瞬く間に拡散。

 高い再生数と多くコメントが付けられた。


「皆さん初めまして。ポットマンです」


 動画が始まると、画面の中央にはティラノサウルスのマスクを被った男が立っていた。

 目のあたりには小さな穴が開けられている。

 そこから外を覗いているらしい。


『なんだコイツwww』

『このマスク俺も持ってるわwww』

『一昔前に流行ったよなwww』


 動画の右側には、チャットのようにコメントがスクロールされている。

 この動画サイトでは、動画の時間に合わせてコメントを投稿することができるため、シーンに合わせて視聴者の反応を知ることが出来る。


「皆さん、俺がドコに居ると思いますか? 実は、話題の浮遊大陸に居るんです!」


 ポットマンが手を広げると、カメラが動いた。

 映し出されるのは広い海。

 その上に広がる空には、無数の島々が浮かんでいた。


『すげぇ⁉』

『CGでしょwww』

『これCGなの? リアルすぎて分かんないわ……』


「そして、なんと浮遊大陸には謎の遺跡が残されているんです。今回はその一つを探検してみたいと思います!」


 ポットマンの動きに合わせて画面が動く。

 映し出されたのは黒曜石のような素材で作られた建物。

 建物の前には、猫のような顔をした生物が映っている。

 猫っぽい生き物は、振り上げた手をぶんぶんと振った。


「ここが遺跡だよぉー」

「この子は浮遊大陸を案内してくれているネモです。コボルトって種族らしいです」

「よろしくね!」


『カワイイ!!』

『この子はどこで売ってますか?』

『モンスターの研究してるけど、この子カワイイね』

『何も知識を活かせていない……⁉』

『俺はケモナー』


 ポットマンが扉に近づくと、円の模様が浮かび上がる。

 手首を捻ると、一人でに扉が開いた。

 内部に入ると棚のならんだ倉庫のような場所。


「ここは通販業者の倉庫として使われてた遺跡らしいです」


『浮遊大陸には高度な文明があったのか?』

『カプセルホテルみたいだなぁwww』

『よく出来てるスタジオだ』


 ポットマンが手近にあった扉を開ける。

 中から取り出した箱を開けると、出てきたのは銃のような形の道具だ。


「……なんだこれ?」

「そちらは古代文明で護身用として用いられていた武器です。トリガーを引くことで魔法が発動します」

「なるほど、持って帰っておくか」


『あれ、もう一人いる?』

『カメラマンもいるのか』

『こっちの人も事情通っぽいしコボルトなのかな?』


 その後もポットマンは倉庫の荷物を漁る。

 すべてが役に立ちそうなものばかりではなかった。

 食料品も入っていたが、時間が経ちすぎているせいか石のようにカチカチになっていた。


「お、なんだこれ?」


 ポットマンが箱から見つけたのは長い棒。

 持ち手のあたりは、なんだかメカニカルに装飾されている。


「そちらは農具です。地面に当てて使うことで、簡単に耕すことが可能です」

「おお、これは便利そうだな!」


 試しに棒を持って外に出る。

 草の生えた地面に先端を当ててスイッチオン。

 ボコボコと地面が盛り上がり耕されていく。


「すげぇ……これなら楽ちんだ!」

「わぁ。私も使ってみたい!!」

「コボルトでも使えるのか?」

「手順に従い、セーフティーを外していただければ可能です」


 ポットマンは声に従って道具をいじる。

 やがてセーフティーが解除されると、それをネモに手渡した。


「すごーい。ぼこぼこする!!」


 ネモは地面を耕しながら走り回る。

 新しいおもちゃを貰った子供のようなはしゃぎようだ。


「あれならコボルトでも簡単に農業ができそうだな。そんな感じで、次回はコボルトの集落で農業を始めるかもしれません。ぜひ楽しみにしててください」


『農業かぁ。楽しみに待ってるよ!』

『CGの作成大変そうですけど頑張ってください!』

『これ本当にCGなの? リアルすぎない?』

『CGじゃなかったら大騒ぎになるだろ。各国が入りたがってる浮遊大陸に入ってるんだぞ』

『確かに』


 こうしてポットマンの初めての動画は好評で幕を閉じた。

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