第3話 空の大陸

「な、なんだアレ……どうなってんだ?」


 直人は驚きながらもスマホを取り出す。

 SNSなどで何か情報が回ってるかもしれない。

 そう思ってスマホを見ようとしたのだが。


「電波繋がってねぇ……」


 まさかの圏外。

 これでは情報を得ることもできない。


「とりあえず帰りたいんだけど、どうやったら――」

「ご自宅への帰還をご所望ですか?」


 聞きなれぬ涼やかな声が響いた。

 音源を探るとネモの手の中。ネモが持っているスマホのような物体から聞こえている。


「そういえば、コイツに触ったときも喋ってたな……」

「はい。私は当端末に搭載されたサポート用AIの『オズ』です」

「え、AI?」


 ネモは遺跡でこの端末を拾ってきたと言っていた。

 先ほど転移してきたような遺跡に落ちていたのだろう。

 それに、どうしてAIなんてものが搭載されているのかは不明だが……とりあえず利用させて貰おう。


「今すぐ帰れるのか?」

「はい。マスターのご自宅にはワープアンカーを設置しているため、即時帰還が可能です」

「よし、すぐに帰りたい」

「命令を確認。規定座標への転移を開始します」


 ネモのスマホらしきものから青い光が飛び出す。

 光が直人を包むと、ふわりとした浮遊感。

 気づいた時には直人が住んでいるボロアパートに付いていた。


「わわ、戻って来た⁉」

「うおぉ、転移魔法って便利だな……」


 ともかく帰ってこれたのだ。

 スマホを取り出すと、しっかりと自宅のWifiに繋がっている。


 SNSアプリを開いて見ると、トレンドの一位には『浮遊大陸』の文字。

 以降には『ミサイル攻撃』『クソつよバリア』『とある国の名前』が続いている。


 試しに『浮遊大陸』に付いて調べると、ニュースの映像がアップされていた。

 より詳しい情報が知れるかもと再生。

 女性アナウンサーが原稿を読み上げ始める。


「先ほど、太平洋沖に浮遊大陸群が出現していたことを政府が発表いたしました」


 場面が移り変わり記者会見。

 メガネをかけた総理大臣が壇上に立っている。


「本日未明。太平洋沖に複数の浮遊大陸が出現いたしました。詳細については現在調査中でありますが、大陸の周辺には強力な力場――いわゆるバリアが張られているため、我が国のみでの調査は困難と判断し、国際社会と協調して調査にあたる方針です」


 浮遊大陸の周辺に張られたバリア。

 それのせいで各国は大陸への侵入ができないらしい。

 あれだけ巨大な大陸。内部には資源も豊富だろうから、本当であれば、我先にと突っ込んで占領したいはずだ。

 しかしバリアに阻まれるせいで不可能。各国としては歯がゆい状況だろう。


「また、バリアの破壊を試みるためでしょう。国籍不明の潜水艦からミサイルによる武力攻撃が行われました。我が国としては遺憾の意を表させていただきます」


 先ほど爆発したミサイルは、潜水艦から発射されものだったらしい。

 SNSでは特定の国の名前が上がっていたが、どこの誰が攻撃したかは分かっていないようだ。


 その後は記者からの質問などが続いたが、役に立ちそうな情報は無かった。

 ともかく現状では、誰もあの浮遊大陸には入れないらしい。


「ってことは、俺が好きにしちゃっていいのか……?」


 直人の頭に浮かぶのは、某サンドボックスゲーム。

 爆発する緑の化け物が出て来るアレである。

 あのゲームのように浮遊大陸を好き勝手に開拓して、冒険するのは楽しそうだ。


「ついでに配信をすれば小銭も稼げるかも……」


 サバイバルやDIY系の動画だ。

 しかも話題の浮遊大陸が舞台となれば、話題になるのは確実。

 再生数が回れば広告収入が手に入るし、そのお金を使って道具を買えば開拓もはかどる。


「……とりあえず、いったん向こうに戻ってみるか」

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