第4話

 今日のところは帰ると言って、二人は城を後にした。

 私は、一人部屋に閉じこもっている。

 何の確証もない話……だけれど、ミラの態度や朧王子に感じる懐かしさが、幾つもの告げられた話が作り話だと、私に一蹴させてはくれなかった。

 本当に、私はシャインではないのだろうか。

 死んだと思われていた輝夜王女……それが私?

 髪の色や目の色が違うと詰め寄れば、魔法で変えられているのだろうと言われた。

 実際に空明さんも髪の色を変えているらしく、本来の紫がかった黒髪へと瞬時に戻して見せてくれた。

 あらゆることの真相、理由までは空想の域を出ないが、すべては望月女王の策略らしいということだった。

 前王一家を戦火に紛れて手にかけて、そうして姫だけを生かした? いったい何のために?

 でも、もしそうだとして。だったら、本物のシャイン姫はどこにいるっていうの?

「もしかして、既に殺されて……?」

 シャイン姫を殺して。そうして輝夜姫をシャインとして、ソレイユへ送り込んだ?

 だとしても何のために? 女王にとって輝夜は王位を脅かす邪魔な存在のはず。

 だったら生かしておく必要はあるの?

 わからない。わからないことだらけだ。

 いったい何が真実なの? どれもが嘘なの? それとも、すべて正しいの?

「誰を、信じればいいの……?」

 浮かぶのはイズミの顔。

 何かあればすぐに連絡をと言っていた。

 だけれど、言えるわけがない。

 私はシャインじゃないかもしれない。

 だから貴方とは結婚できませんなんて。

 そんなこと、伝えられはしない。

 こういう時は、いつだって相談に乗ってもらっていたミラ。

 でも今回ばかりは、彼女にも頼れない。

 誰にも言えない。

 ああ……ナギサ王子が生きていればだなんて、そんなことを思ってしまう。

 誰にも言えないことでも、彼にだけは何故か言えてしまった。

 とても優しくて、すべてを包んでくれた人。

 最初は彼との婚姻話があったと聞いたことがある。

 でも、イズミが抗議したらしい。

 絶対に譲らないって。負けないって。

 そんなイズミを、私は裏切ってしまうかもしれない。

「いったい私はどうしたらいいの……?」

 ベッドに転がりながら嘆く。

 私は両腕を掻き抱きながら、膝を曲げて体を震わせた。

 そんな私を、冷ややかな瞳が見つめていることなど知りもしないで――

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