第3話 不良ちゃんと荒川先生

「カナエは真面目過ぎるのかもねぇ」


適当を絵に描いたような当時の私にそう言ったのは、高校時代の保健の先生だった。

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授業をサボるために最適な場所を探してウロウロしている高校1年生の私の映像が脳にクッキリ浮かんだ。


ラーメンを食べて元気になった私は絶好調だ。歩きながら記憶の整理までできている。

歩く時って、古い記憶を思い出しがちっていうのは、私だけかな?


漫画やアニメのキャラクターが屋上とかでサボっているのに憧れていたけど、その高校は、屋上へは立ち入り禁止だった。

他にサボれそうなところを頭の中で検索しながら移動する私。


……こいつ、諦めて教室に戻るっていう選択肢が全くないな。


無理にサボるより、出てしまった方が楽な場合もあることを知らないご様子だ。若い若い。


「君ー。どうしたの?」


時刻は午前10時。2時間目の授業をしている中、ウロウロしている生徒がいたら、声をかけるのは先生として当たり前だ。それなのに、この小娘は「ああぁん?」とメンチを切る。


何がしたいんだお前は。


現在、28歳の私がもし教職についたとしたら、こんな奴、速攻ビンタだ。


しかし、その先生……荒川先生はカラカラ笑った。

まあ、確かに一周回って面白いかもしれないが、器の大きい保険の先生だった。


「中々、気合いの入ってる不良ちゃんだね。よし、保健室においで」


説教されると勘違いした不良ちゃんは、逆に泣かしてやろうと訳のわからない意気込みを持って荒川先生についていく。


着いたのは、卒業した中学校の保健室がそのまま設置されたんじゃないかと思うくらい、the保健室!みたいな部屋だった。


不良ちゃんが仁王立ちしていると、「何してんの?座って座って。この間友達にもらったお土産を開けちゃおう」と私をパイプ椅子に促した。

何が何だか分からないまま、不良ちゃんは荒川先生の話を聞いていた。


「授業だるいよねー。私さ、板書って意味ないと思うの。何のための教科書なのさ。あんな一生懸命文字を写してる暇があったら、頭の中で咀嚼した方が絶対良いよ」


その意見は、不良ちゃんが薄々気づきながらも、言葉にできずにいたことだった。


「そう!そうだよね!」


私と同じことを考えている人がいる。しかもそれが大人であるということに興奮して、つい大きな声が出る。

その日をきっかけに、私は学校で息が苦しくったら保健室に避難するようになった。






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