四季は彼女を謳う


 僕は階段を降りていた。


 ふと目を横をやると、僕は虹色の世界に包まれた。








 

 雪のように真っ白な肌に、桜色の頬。


 桜の花弁の形をしたネックレスが、その美しさをより際立たせる。


 風が吹くたびに、艶やかな髪の隙間から、白金の雪の結晶と雫の形をしたガラスが顔を覗かせる。


 光を反射して、まるで螢のように煌めいている。


 両手には大切そうに一冊の本を抱えている。


 本には紅葉もみじで作られた押し花のしおりが挟まっている。

 





 まるで、四季を一度に体験しているようだった。


 小説では、女性を”春のような人”と喩えることがある。


 その気持ちを、初めて理解できた。


 そして僕もその虹色の世界に、四季を与えずにはいられなくなった。


 思わず笑みがこぼれ落ちた。


 どうしても、それを口に出したくなってしまった。

 

 




「『彼女』に四季を与えるならば、それは春であり夏であり秋であり冬であろう。」


 

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四季は彼女を謳う 鮎川 碧 @Kopf-Kino-1224

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