第17話 紅葉の様な二人の顔

 それは気温がだいぶ下がった秋の頃


「うう……肌寒いな……」


「そうですね……」


 谷崎と卑弥呼は女性の手伝いをしていた。


「すみません……木の実を取ってきたんですが、帰る途中で腰を痛めてしまって……」


 女性は腰をさする。


「大丈夫じゃ!それより腰は大丈夫か?」


「はい。卑弥呼様達のおかげで少し良くなってきました」


「そうか!それなら良かった」


「ここです」


 女性の住んでいる家に入り、木の実が入った袋を置く。


「本当にありがとうございます。木の実いくつかお渡ししましょうか?」


「じゃあ!これと、これと、これを!……」


「卑弥呼さん!この人に迷惑ですよ!」


 谷崎は女性に視線を移すが、


「いえ、お気になさらずいくらでも取っていいですよ」


「ほら!いくらでもと言っておるのじゃ!……これも良いな……」


 卑弥呼は嬉しそうに木の実を選んでいく。それを見ながら谷崎は重い口を開ける。


「……前、怒られましたよね……」


 ビクッ


 卑弥呼は体を大きく震え、動きが止まる。


 以前、木の実集めから帰って来ると召使いの少女に怒られたのだ。


……………………………………………………


「また持って帰って来たんですか!?」


「すまない、つい……」


「少しなら良いのですが、そんなに持って帰ってきて、家にどれだけ沢山あると思っているんですか」


「すまないな……」


「これからそんなに持ってきたら捨てますからね」


「それだけはやめてくれ!お願いじゃ!」


……………………………………………………


「少しだけですよ」


「そうじゃな……」


 卑弥呼は沢山の木の実の中から数個を選び持ち帰る。


「もっと持ち帰って良いのですよ」


「いや、また怒られたくないしな、じゃあ失礼するな」


「はい、ありがとうございました」


 谷崎と卑弥呼は家に帰る途中


「ああ……木の実が恋しい……」


 卑弥呼はもらった木の実を見ながら話す。


「木の実を見に行きませんか?今の時期は紅葉こうようが綺麗だと村の人から聞きました」


「紅葉?……そういえば木の実ばかり見ていて紅葉はあまり見てなかったな」


「卑弥呼さん、どんだけ木の実が好きなんですか……」


 谷崎と卑弥呼は村の近くの山に行き、登ること数十分


「おお……ずっと木の実ばかり見ていたがこんなに綺麗じゃったとは……」


 卑弥呼は空を見上げ赤に染まった色鮮やかな葉がたくさん付いた木を見て感動する。


「晴人も思うじゃろ……晴人?」


 呼んでも返事がなかったので晴人を見ると晴人も空を見上げて紅葉に感動していた。


(掛け声に気づかないくらい感動しているとは……どうして気づかせるか……そうじゃ!)


 卑弥呼は谷崎の後ろから忍び寄り、飛びつく。


「きれいだな……うお!?何しているんですか!?」


「わらはの声掛けに気づかないのが悪いのじゃ!」


「それは謝りますけど、いくらなんでも抱き着くのは……」


 卑弥呼はニヤッとし、


「許さんぞ!むぎゅううぅぅ……!」


「!?やめてください!」


 数分後


「はぁ……死ぬかと思った……」


「大袈裟じゃ」


「いや、そういう意味じゃなくて……」


「ん?どういうことじゃ?」


「いや……それより地面もきれいですね」


「おお……そうじゃな……」


 下を見てみると赤に染まった葉が落ち、それが集まり絨毯のようになっている。


「有難うな晴人。晴人がいなければこんな綺麗な景色を気づかずにいたわ」


「大袈裟ですよ」


「いや、本当に有難う。お礼をしないとな」


「お礼?何をするんですか?」


「こうじゃ、それ!」


 卑弥呼はまた谷崎に抱き着いてきた。


「!?離して下さい!」


「嫌じゃ!離さんぞ!むぎゅううぅ……!」


「お願いですからやめてください!」


 谷崎と卑弥呼は紅葉もみじように顔が紅く染まった。

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