第14話 収穫祭
いつものように卑弥呼に将棋でボロ負けしていると、
「重いからゆっくり持ち上げるぞ。せーの!」
外から男の掛け声が聞こえる。
「動かすぞ、いち、に、いち、に、いち、に」
「ん?外で何をしているんですか?」
男達が重そうなものを手分けして動かしている。
「ああ、収穫祭の準備じゃな」
「収穫祭?」
「稲がもうすぐ収穫できる。それを神様に少しお供えするのじゃ。それに、これから木の実などがたくさん取れることを願う。……木の実、集めるのが楽しみじゃな!」
卑弥呼は上を見てうきうきしている。
「いつ収穫祭をするんですか?」
「確か……三日後じゃなかったかの」
「そうなんですか」
すると外から声が聞こえる。
「おーい、誰か手伝ってくれ!」
谷崎は卑弥呼を見る。
「行ってやれ。わらはも収穫祭で準備をしないといけないしな」
「では、行ってきます」
「おう!……さて収穫祭の準備をしないとな!」
外に出ると大きな荷物を置いて、男達が休んでいた。
「手伝いに来ました」
「ああ、ありがとう。これは重いから気をつけろよ」
「はい」
「いっせーのーせ!よいしょ!」
持ち上げると体に重さがのしかかり、谷崎は少しふらつく。
「おい、大丈夫か」
「すみません。大丈夫です」
「移動するぞ。いち、に、いち、に、いち、に」
荷物を少しずつ移動していく。
「これは何が入っているんですか?」
「よく分からないが収穫祭の儀式で使うだってよ」
谷崎達は村の中で開けている広場まで運ぶ。そこで指示を出している人がいた。
「君たち!その荷物はそこに置いてくれ」
指差した場所に荷物を置く。
「ふぅ……きついな……」
「はは!このくらいできついと思うな、まだ何個もあるからな!」
「ええー……」
荷物を広場に置くことを繰り返すこと数十分。
「これで全部だな」
全ての荷物を広場に置く。すると指示を出している人が話す
「組み立てなどの事は俺たちがやるから家で休んでくれ」
「「はい」」
谷崎と男達は家に戻る。
「手伝ってくれてありがとう」
「いえ、困ったらお互い様なので」
一人の男が言う。
「ふぅ!喉が渇いたな。こんな時は酒だよな」
「おお、いいな!」
男達は盛り上がる。
「俺の家で飲まないか?そうだ、君も来るか?」
「僕はお酒が苦手なので」
(本当は大好きだけど)
「そうなのか。無理に飲ませるわけにはいかないしな」
谷崎は男達と別れて卑弥呼の家に戻る。
「卑弥呼さ……うわぁ……」
部屋の中がもので溢れかえっていた。
「……何をしているんですか?」
「おお、帰ってきたか。収穫祭の儀式で必要なものを探しているのじゃ」
卑弥呼は入れ物を反対にして、ものを落とすように探す。
「どこにいったんじゃ……あ!これじゃ!」
卑弥呼はあるものを取る。それは金印だった。
「そんな大事なものを……」
「適当に入れてしまうからどこに入れたか分からなくなってしまうんじゃ」
「ちゃんと整理して下さい」
「まあ、お目当てのものは見つかったし、片付け……え?」
卑弥呼は部屋がもので溢れかえっているのに気づく。
「…………」
「……整理整頓しましょうか」
「……そうじゃな」
谷崎と卑弥呼は整理整頓するのに二、三時間かかった。
三日後
収穫祭当日。広場には人がたくさん集まっている。広場にはステージが作られ、中央には
谷崎は召使いの少女と一緒に来ていた。
「卑弥呼さんはどこに?」
「収穫祭の儀式は卑弥呼様がするので今は儀式の衣装に着替えて待機していますよ」
そして数十分経ち、卑弥呼が現れた。
「うわあ……」
とても美しい衣装に身をまとった卑弥呼がステージに登る。そして舞を踊る。その姿はいつもの陽気さではなく集まった人々が小声も出さないほどの美しさだった。
卑弥呼は稲穂を一束持った男に近づく。
「どうぞ」
「有難うな」
一束の稲穂を受け取り祠のようなものの前に行く。そして言う。
「今年は台風に見舞われましたが大きな実をつけ、沢山収穫をすることができました。感謝の気持ちを込め、稲穂の一部を卑弥呼が代表して収めさせていただきます」
卑弥呼は台に一束の稲穂を置く。
「そして、もうひとつお知らせがあります」
服から金印を取り出す。
「大陸にある、魏の国から頂きました。これには親魏倭王と言う文字が刻まれています。その意味は邪馬台国の女王として認めてくれたという意味であります」
卑弥呼は一度深呼吸して言う。
「これから邪馬台国の女王として村の人の為になることを努めて参りたいと思います。これからもそれを見守って下さるようお願いします」
卑弥呼は一礼をしてステージから降りた。そして十分ほど経つと、いつもの服に戻ってステージを駆け上る。
「みんな!今日は祭じゃ!お酒を飲んだり、美味しいものを食べたりして楽しもうぞ!」
「「おー!!」」
村の人達は盛り上がり、お酒を飲んでいる人や、食べている人もいれば踊っている人もいる。
卑弥呼はステージの上からキョロキョロと見渡し谷崎と召使いの少女を見つける。
「いた!今、行くからな!」
そして三人は合流した。
「今日は楽しもう!」
二人は卑弥呼を凝視する。
「な、なんじゃ?」
「卑弥呼さん、儀式が終わった後の切り替え早くないですか?」
「そうか?わらはは人前で話すのは苦手じゃからな」
「本当にそうですか?」
召使いの少女は二人に話す。
「では私は片付けがありますので後は二人でお楽しみ下さい」
召使いの少女はステージの方に歩いていく。
「晴人、お酒は飲めるか?」
「大好きですよ」
「わらはもじゃ!」
二人はお酒を配っている所に歩く。
「お酒を二杯くれんか」
「少々お待ちください」
男は取っ手が付いた土器を二つ用意し、お酒を注ぎ、卑弥呼に渡す
「どうぞ」
「有難う。ほれ、晴人」
卑弥呼は両手に持ったお酒の一つを谷崎に渡す。
「ありがとうございます」
「では!」
二人は取っ手が付いた土器を合わせる。
「「かんぱーい!!」」
「ゴクゴク……ぷはっ!お酒は美味しいなあ!」
「はい。いつもより美味しく感じます」
(そういえば、誰かと一緒にお酒を飲んだのは久しぶりだな。誰かと一緒に飲むとこんなに美味しく感じるんだな)
「そうだ、儀式の時の卑弥呼さん、きれいでしたよ」
「そうか?やったかいがあったわ!」
卑弥呼はもう一度お酒を飲む。
「晴人、少し静かな所に行こうか」
「?いいですよ」
谷崎と卑弥呼は広場から少し離れた所に行く。
「晴人、いつも有難うな」
「いや、僕は何も……」
「晴人はそう思っているかも知れんが、わらははとても感謝しているぞ。晴人がいるといつも楽しいのじゃ」
「それは僕もですよ。卑弥呼さんと会えて毎日が楽しいです」
卑弥呼は頭を掻く。
「なんか照れるな……」
卑弥呼はお酒を一気飲みする。
「そんなに一気飲みして大丈夫ですか?」
「大丈夫!大丈夫……らいじょうぶ……」
「絶対大丈夫じゃないですよね!」
卑弥呼は取っ手が付いた土器を落とす。
「ああ!危ない!」
谷崎はギリギリの所でキャッチをする。
「おお!すごいな〜!」
卑弥呼は座り込み、拍手をする。顔は赤くなっている。完全に酔っていた。
「ほら、家に帰りますよ」
「おんぶしてぇ〜」
「えー……」
「おねがい〜」
卑弥呼は足をバタバタする。
「はぁ……しょうがないですね……ほら」
谷崎はしゃがみ込み、卑弥呼は谷崎に乗る。
「立ちますよ」
「よいぞ〜」
「それっ!」
「うわぁ〜たかいたかい!」
「あんまり、はしゃがないで下さい!」
谷崎は卑弥呼の家まで歩き出す。
「うへへ、いい気持ち〜」
歩いていると途中で召使いの少女とあった。
「うわ!卑弥呼様、何故、谷崎様におんぶされているのですか!」
「酔ったみたいです」
「卑弥呼様はお酒を飲まれたのですか!?」
「……そうですけど?」
少女はため息をつく。
「はぁ……卑弥呼様はお酒は好きなんですが、お酒にとても弱いんです」
「そうなんですか……」
少女は卑弥呼に問いかける。
「自分で歩けますよね、谷崎様に迷惑ですので降りて下さい」
「いやじゃ!ここがいいのじゃ!」
「もう!」
「大丈夫ですよ。もうすぐ着くので」
少女はまたため息をつく。
「はぁ……ではよろしくお願いします」
「うへへ、晴人ありがとう!大好きい!」
「な!?」
「もう!卑弥呼様!」
お祭りは夜遅くまで続いた。
翌朝、谷崎は卑弥呼にめちゃくちゃ
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