惜春花吹雪
只
惜春花吹雪
花びら舞い散る変化の季節
桜並木に差し込む朝日は視界を奪う
でも私の視界には彼女しか映らない
私の右手に絡みつく凛と咲く紅一点
気高くも儚い彼女は一節の花そのもの
風にたなびく赤みがかった長髪は揺蕩う亡霊のようで
会話が無くとも心で通じ合っている
そう思っているのは私だけかな
友情の証なんかじゃなくて、私と貴女を絆すために手を繋いでいると知ったら引かれちゃうかな
貴女は自分が嫌いと言うけれど、その分私に愛させてほしい
叶わない想いを秘め、変わらぬ道を歩む
今日は何が起こるかな、どうやってアピールしようかな
思わず浮ついた足取りになるのは仕方ないよね
赤信号に阻まれ自然と足が止まる
桜並木に似合わず交通量が多いこの道路は少し風情にかけるけど音を裂くこの轟音はいつか私の想いを殺してくれる
そう願って今日も音に紛れて想いを零す
今やこの想いは枷でありこの世にとどまらせる錘だ
呪縛に等しく疎ましくも愛おしい
だから、これは祓詞だ
「好き」
それは落花のように華々しくも哀切の情を抱くほどに、零れ落ちる涙のように
それでも、私は前に進まなければいけない
呪いを断ち切り、変わった信号を指針に歩を進めなきゃ
悔悟してもしきれない
でもそれはきっとあなたもでしょ
いつか、堂々と手を繋いで、同じ歩幅で歩ける時まで
電柱に添えられた季節外れの花束たちが、桜に彩られてしまう前に。
惜春花吹雪 只 @jankv
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