第19話
「危ない!」
突撃してくるマントの怪物をかばうため、アルはムーンとラム講師の盾となり、マントの怪物に挑む。殴りかかるアルをそのままマントの怪物は、ヒラリと躱して、アルの全身をくるんでしまう。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「wr:kgびおrgもrん、。;y:mrsltp「w―――べえprkh,おrpbぇ」」
マントの怪物はアルをそのまま強く全身を締め上げ、アルをプレスしだす。
そのあまりの力強さと締め付ける痛みにアルは悲鳴を上げる。
「アル!!!」
「よそ見をしていて良いのかな? やれ、カブルダウイルス」
ムーンはアルが戦っている間に、もがくラム講師を無理やり沈めるため、みねうちし、少し離れた場所にラム講師の身体を横にした。
その後、アルを救出市に向かっている間に、巨大な銀色の跳び箱をフリーにしてしまったのである。
すでに巨大な銀色の跳び箱は、分離をし、更に鎧のすべてのパーツ、それも剣術をする施設にあるすべての鎧を空中に浮かし、つまりあらゆる道具を完全に支配した状態になっていた。
それら、戦闘中では数え切れない無数の集団が一斉にムーンに襲いかかった。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
襲いかかる攻撃になすすべもなく全身に受け続けるムーン。
「ははは、これで終わりだな、ダブル・アイよ! 貴様らが死んだ後にAIはゆっくり取るとしよう!」
カブキは勝利の高笑いをしながら、ダブル・アイの最期を見届けようとする。
『このままだと本当に壊れてしまいます!!』
グローバーが悲鳴を上げる。
『こちらも、流石にもう・・・』
ピンキーも限界になろうとしている。
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(私はまだ、死にたくない! 陸上で新記録取って家族を喜ばせたいし、友達とおしゃべりしたい! それに女の子なのに恋をしないで死ぬなんて嫌だ!!)
アルは自分がまだまだしたいことがたくさんある。こんなところ死んでしまったら、自分の人生は絶対後悔すると考え始める。
(私はこれからもっとたくさんの本を読んでたくさんの知識を得るの! そして私の国の人々のためにベローナ学園のような学校を作り・・・私の憧れの人、イーア博士のように世の中の人々のためにも尽くしたい!!)
ムーンは抱いていた壮大な夢を思う。彼女もまた、ここで死んでしまったら後悔すると考える。なお、イーア博士とは彼女の家に飾ってあった写真立てのお爺さんのことである。
「「絶対に切り抜けてみせる!!」」
そして、二人の考えが一致した時、二人のAIから不思議なことが起こった。
『メタバース内における身体強化機能拡張成功。アル、今ならこの苦しみから切り抜けられます』
アルがグローバーの言葉を聞くと黒く輝き出す。そして、いままで全く振りほどくことができなかったマントの怪物の締め付けをいとも簡単に振りほどいた。
「これは・・・」
アルは自分の光り輝く姿を視る。
「オア@んkボエ@svd,dlsmなフィエwpヴォmアエ、ボt、bvszcmんvmb」
その様子を隙と判断して、マントの怪物は再びアルを包もうとする。
「それは、もう効かない!」
アルが突撃するマントの怪物の裾をくるまろうとするほんの僅かな隙をついて掴み、そのままマントの怪物をぐるぐる回して吹き飛ばす。
「おp:かのて@brlw:F<ADcかlDmvbkn,lgr;:.sdsfhl.df xg;:dxv.;sz:5q90!」
マントの怪物は突然の出来事に何も抵抗できず、そのまま壁に激突する。
「身体からすごい力を感じる」
アルは驚きながら自分の光り輝く姿を、今度は自分の手や足をより細かく視て、再度確かめる。
『身体能力が通常の10の10乗まで上げることが可能になりました。ただ、あまり使いすぎると、メタバース内での維持が困難になります』
グローバーはアルにどのようなことが起きたか説明する。正直具体的な数字の意味がアルには分からなかった。ただ、強くなったことだけがわかる。
「まあいいや細かいことは。この力で一気に追い込むよ!」
そう言って、アルはスタディングダッシュの姿勢になり、そのままマントの怪物の化け物の方へスタートダッシュを決める。
スタートダッシュだけで、50mはある距離を一瞬で詰めてしまった。
「うお! なにこの速さ」
驚きつつも、そのままの勢いで殴る蹴るを連続で繰り出す。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
マントの化け物はその攻撃を壁にのめり込みながら、受け続け、ついに声さえ出なくなる。
「そーれ!」
そのまま最後は蹴り上げて、スタディングスタートをした位置に戻る。
すでにマントの怪物はボロ雑巾のようだった。
そして、ムーンについては、身体は輝いていなかった。その代わり、飾りそのものはない光の杖を手に持っている。
「ふん!」
一振りすると突風が巻き起こり、分離した巨大な銀の跳び箱、鎧のパーツをすべて一瞬で吹き飛ばしてしまう。
「い9qh0yんを、bsl:rdfz;vs¥。・ら;え:l4j6wp@」t.sん!」
巨大な銀の跳び箱は何が起こったのか理解できず、鎧のパーツとともにばらばらになって地面に転がっている。
「何かしら、すごく扱いやすいけど」
『あなたが先程モップの持ち手の振り回し方から学習し、使用すべき武器を予測して作成しました。その斬撃に触れた物で敵意を向けていた場合は、メタバース内で存在するためのコードが崩壊します。ただ、どんなものでもコードを組み直すので、復帰はしてしまいます。しかし、完全に元のコードには戻せません。そのため何度もその光の杖を受け続けたものはいつか消滅するでしょう』
ピンキーが光の杖のシステムを説明してくれる。
なるほど、だから巨大な銀の跳び箱も鎧のパーツも再び浮くのに手こずっているのか、と考えるムーン。
ここから、ムーンは満面の笑みを浮かべる。
「すごくいい武器よ! ありがとう。私、故郷で国家秘伝の武術をやってたのよ。それの杖技は得意分野なの」
そう言って、体全体を使って杖を用いたその武術の演舞を行い、決めのポーズもする。
『アジア系の国の中世の武術にそんな記録があるような、ないような、で出てきますね』
ピンキーはノリノリのムーンにちょっと引いていた。
「おおじJvmipsg;wel,rvbimrpoetk,gvbhmntdfdzhfmst04q35hjy9tonmgeui986r7tmtrhe」
巨大な銀の跳び箱はふらつきながら浮かび出す。鎧のパーツについては光の杖のダメージが効いているのかうんともすんとも動かない。
「さあ、かかってきなさい!」
「ッッqmfウィ御辺場l:blt;RT.ん@RT;』stlgbkまk;」rlg」tr.w;」s.」
分離した巨大な銀の跳び箱は一斉にムーンに襲いかかる。
ムーンはそれを無言でいなす。触れさえすれば、敵を動けなくする杖、という特徴を活かし、なるべく力を使わず、すべての攻撃を受け流すように技を繰り出す。1段目は杖を目の前に置いて突っ込んできたのを自滅、2段目は左手で軽く杖を持ち上げて下を少し触れさせ、3段目は右手で杖を右回転させながら4段目と一緒に触れ、5段目は普通に突き、6段目は手を持ち替えながら半身を替えて再び突き、7段目は突いた杖を自分の方に引っ込め振り下ろして叩き、最後の8段目で、
「はあああ!」
声を張り、気合を入れて振り下ろした杖を左側に引っ込めながら、最後足を薙ぎ払うような形で一気に振り上げ、その爆風で1~8段目を全て、マントの怪物が壁に食い込んでいるところへ吹き飛ばした。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
そのまま、巨大な銀の跳び箱は伸びてしまった。
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「なんなんだ、この力は!」
突然のダブル・アイのパワーアップに動揺が隠せないカブキ。
一瞬にして倒されるカブルダウイルスの乗り移った怪物たちをただただ呆然と見るしかなかった。
「ムーン!」
「アル!」
そして、少し距離のあった二人が合流する。
「すごい、きれいな技の数だね。惚れちゃいそうだったよ」
アルはムーンの秘技を褒めまくる。
「もう、アルったら。アルだって姿が全く見えないくらいすごいスピードで動いてたわよ」
ムーンもムーンで、黒く輝くアルのあまりの速さを褒めまくる。
『本当に素晴らしい力です』
グローバーが今までにないくらい褒める雰囲気のイケメンボイスで称える。
『まさに、最強の戦士ですわ』
ピンキーは、今までで一番高音のソプラノ声で称える。
「くっ、くそう」
カブキは、苦し紛れにダブル・アイの会話しているところを隙と判断して、攻撃を仕掛ける。
「「『『話の邪魔をするな! カブキ!! 今までの分たっぷり相手してあげる!!!!』』」」
その瞬間を決して見過ごさなかった。二人と2機。話を中断し、ダブル・アイは身構える。
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