第18話

 二人の脳内でイケメンボイスでもソプラノ声でもない電子声が聞こえ、二人が今まで見た景色は突然消え去り、周りが虹のように見える。

 「「ダブル・レイディオウェーブ!!」」

 そして、二人は全く言う気の無い謎の言語を発する。

 その後、二人は何故か手をつなぎ、虹の空間をまるでトンネルのように抜け出していた。

その間の身体の色は銀色になっていた。

ここまでは、いつも通りだが。

『ははは、貴様ら。私を元の世界に戻そうというのか! 甘い。この場で精神を粉々にしてくれよう』

カブキが普段の姿である髪の毛がものすごく伸び、目の周りも赤い色で強調するように色を塗ったようなものが浮かんだ女性のおばけのような姿になっていた。

通常なら、AIの限界質量に達してしまうため、全員壊れる。しかし、希望のAIが奇跡を起こす。

『あなた方の質量を圧縮に成功しました』

カブキが攻撃をする前に、中にいる全員の質量を縮小したのである。

『な。ふふふ、しかし、そうであってもワープはあくまでお前らだけ! 貴様らだけ私の世界に行き、もぬけの殻のお前たちを始末すればいいだけよ!』

カブキは未だ自分に余裕がある、と確信し、虹の空間のトンネルの自動移動を無視して、自分だけ止まろうとする。

『希望のAI、ピンキーの力を無駄にはしない!』

すると今度は勇気のAI、グローバーが奇跡を起こす。

『な、命令コードを書き換え続けているだと!』

止まろうとする力に無理やり動くようにグローバーが命令し続ける。

この2つの奇跡が、ゴールと見られる光へとたどり着かせた。

そこを抜けるとどんどん二人の服の形状が変化して・・・

そのまま空中落下して、地上につく。ふたりは、ちょっと危ない形だがなんとか足で着陸をして。カブキはメタバースの世界に無理やり戻され、地上に落下された衝撃と二人の着陸の衝撃で思いっきり吹き飛ばされる。

「我、アイブラック!」

 アルの姿は、全身が黒いドレス姿に。

 「我、アイホワイト」

 ムーンは、全身が白いドレス姿に。

「「我ら、ダブルアイ!」」

『『パチパチパチパチ!』』

 そして、頭の中ではグローバーとピンキーが拍手する音が聞こえる。

 「ストートンの力に魅了されたしもべたちよ」

「とっととデリートされなさい」

すると二人はさっきよりも強い力を感じ始めていた。

****************************************

 今回のメタバース空間は・・・中世の時代の剣術をする施設のようだ。

 周りには、多くのサーベルや鎧が置いてあり、円で線を引かれた床もある。

 今回はたまたま人がいない時間であったためか、今いるのは計4人。

 アル、ルナ、カブキ・・・そしてラム。

 そう、4人である。今、ラム講師がメタバース世界にいて、アルとムーンの後ろで横たわっている。

 「って、なんでラム講師もここにいるの?」

 アルは状況説明を求めてくる。

 『『・・・ワープと圧縮に集中しすぎて、まとめて運んでしまいました』』

 イケメンボイスとソプラノ声がしょんぼりした声を出す。

 「まあ、AIってフレーム問題抱えてるから。今はこっちで戦えるだけでも良かったと思いましょ」

 ムーンはなぜ問題が起こったのかある程度理解しているらしく、プラス思考だ。

 「く、こうなってしまっては仕方がない。今日息の根を止めてやる。怒れる世界の呪いカブルダウイルスよ! ストートンに潜む闇の恐ろしさを教えたまえ!!」

 雲行きがどんどん怪しくなっていることに気づく。どす黒い雲があっという間に広がった後、それが消え、血のような色の空となる。黒雲は鎧に集まっていき、不気味な影の化け物となった。

 今回の形は、・・・跳び箱型の化け物になった。鎧は素材をそのままに銀色の光沢を帯びた跳び箱となり、巨大化する。今までと違うのは生物感が感じられない。鎧の原型はなくなり、巨大な銀色の跳び箱となった。

 「じnyshl;:bdx.f¥・んhd.m¥hgc・jhbg;vs→fこmk:v,」

 雄叫びが剣術をする施設にこだまする。

 「・・・今までと明らかに法則違う気がするけど。そんなのどうでもいいわ。今までの分、たっぷりお返しする!」

 アルは状況を全く理解してないが、怨念で満ち溢れて構える。

 「gth,ン放spfl;p@感mbklfdz:、;s¥f.c、@fh;。;y:MTDうd;@「yr」

 巨大な銀色の跳び箱は、それを感じたのかわからないが、板と板の間から歯のようなものをむき出しにして咆哮を上げ、口から剣を剣先が向き、射出される。

 「「えっ、ちょ怖!」」

 二人はあまりにも予想外の攻撃が繰り出されたため、アルが左、ムーンが右に回避する。

 二人は上手く躱したが。ムーンが何かを感じ、天井を見ると・・・

 「アル、大変よ!」

 アルにも天井をみるように天を指差す。

 天井は石の柱を大量に使い、屋根を支えていた。

 しかし、そんなことより問題なのは、ラム講師がその石の柱を歩いていることである。

 「ラム講師!」

 見た瞬間、アルはジャンプして一気に石の柱にたどり着く。

 ムーンもそれに倣い、ジャンプして、同じく一気に石の柱にたどり着く。

 しかし、その状態は巨大な銀色の跳び箱に背を向けていた。

 「¹gmbt家lg;rfmthんkl;dg.;hxb;:・。drlp,あhtjy,hs.f・b」」

 巨大な銀色の跳び箱が叫ぶと、鎧の頭部たちが突然、アルとムーンに向けて突撃してくる。

 『後ろから攻撃が迫ってます』

 グローバーが二人に指示をする。

 その言葉を聞いて、石柱でバランスを取りながら巨大な銀色の跳び箱に向き直り、鎧の頭部たちを拳で叩き落した。

 「ラム講師、しっかりして!」

 ムーンは、目が虚ろなラム講師をもとに戻そうと必死である。

 『そもそもこの人のもつAIは人の脳をメタバースに移動するほど優れていません。そのため、このまま石柱が落ちる「体験」をやってしまったら、AIによる脳の自己修復が行われないので、間違いなく脳死です。意識についてもカブキに封じられて、操られてます』

 ピンキーがラム講師の状況を説明し、かなり危険であることを二人に知らせる。

 「やれ、カブルダウイルス」

 そんな戦いに集中していない二人を見逃さないカブキ。

 「こ:pんmjtべkzんs;fmcvphrkjbowesgmvb,glnrt;dreLrgohtkb,lg ;z」

 カブキの声を聞き、巨大な銀色の跳び箱が再び叫んで、鎧の頭部を、今度はさらに数を増やしてアルとムーン、ラム講師に襲わせる。

 「危ない!!」

 それを再び察知したムーンがラム講師をかばい、ガードし全てを受け止める。

 その間に、アルはラム講師をお姫様抱っこし、地上まで、命綱なしで落下し、そのままお姫様抱っこした状態で着地する。

 ムーンのガードは顔を中心に守っていた。そして、それが災いし鎧の頭部が一つ、ムーンの腹に衝突する。

 「くっ!!」

 ムーンはその攻撃に膝が折れ、石柱につく。

 「ムーン!!!」

 着地後、その様子を見たアルが叫ぶ。

 「大丈夫よ」

 ムーンは笑顔でアルに振り向き、伝える。

 そして、ラム講師が地上にいることを確認し、残りの鎧の頭部はチョップですべて叩き落して防いだ。

 「ねえ?」

 ムーンは再びアルに振り向き、笑顔を見せ、そのまま地上まで飛び降りる。

 「ほう」

 アルはその姿を見て、安心する。

 「片付けてしまえ、カブルダウイルスよ」

 「@ptkはねbmslf<えclwdclvzbkんて」tん、gr:slbzvd;」

 今度は剣や鎧と一緒に落ちていたマントが急に巨大化する。

 「クェgw時h船jmkg;、rsl;zdっgl」ht,lんsh¥fのちrjsmksl」

 そして、驚くことに巨大なマントもまたカブルダウイルス独特の叫び声を上げるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る