第8話

 国語の授業が終わり、休憩時間となる。

 アルはすぐに更衣室に移動し、グローバーに話しかける。

 「一体何なの急に!」

 『うむ、深層学習が終了し、私が起動したのだ』

 要は寝てたっということ?

 というか、こいつの言葉がなぜわかるのか? とアルは疑問に持つ。

 『私があなたの脳を無理やり補っているからなぁ。おかげで消耗が激しいのだ』

 グローバーは寝起きのためかイライラしながら、疑問に答える。

 「つまり、私の頭が悪いことを補ってるということか・・・ふうんじゃあ、これからの授業を全部やってよ」

 グローバーからの頭悪い発言をすんなり受け入れて、むしろ朗報がきたとばかりにアルは猫声でお願いをする。

 『断る。あくまでも私の知識としての学習で多くの情報を出している。そちら側にとって間違いな事が起こる』

 グローバーがやはりイライラしながら拒絶する。そこまで怒り口調にならなくても・・・とアルは思う。

 『そして、あなたの世界をあなたが体感することで私も進化をする。なので、頼むから自分で考えて行動してくれ』

 最後に言葉を付け足す。それに対して、ムッ、とするアル。

 「じゃあ、普段からいきなり喋らないでほしんですけど。なにかいい手はないの?」

 アルの質問に『ふむ』と一呼吸おいて

 『ならば、充電のカードをこの前のワープの時見たく目で見てほしい』

 充電? そう思いながら持ってきていたカードを探す。しかし、そもそも絵柄がわからないのだ。見せながら『違う』『それでもない』『それもだ』と一向に判別しない。

 「ところで、このカードはなんで弟はさわれなかったの?」

 アルモックは昨日、ヤンが見えるのに触れない、ということからカードの特性について聞いた。

 『あくまで、そのカードはあなた自信が「出現させてるもの」ですから。AIが視ているものを認識できるようにしているのと同時に、様々なシステムの中でピンポイントに使ってほしいものを命令するのがそのカードの役割です。それを踏まえ、カードを眺める対応がほかから見えてないのは不自然になってしまうでしょ?』

 アルモックはその説明をききながら、「・・・すでに幻覚始まってた」とショックを受ける。

『そして、充電のカードは、太陽で伸びをしているようなマークのカードだ』

 グローバーもどう説明したら良いか悩みながらであり、なんとか伝わりそうな内容を5枚くらい見てから答えを出した。

 「これのこと?」

 アルは何だか宗教画みたいな太陽に小さな人が地上で手を広げた風景画をかざす。

 『充電モードに入ります。その間ディープラーニングは続けますが会話はしません』

 おっ、つまりしゃべらなくなるのか、と喜ぶアル。

 『開くときのパスワードメッセージをどうぞ』

 グローバーに了承すると、不思議なキーワードを要求してきた。

 『登録した言葉を発しない限り、私は喋らないようになる。忘れづらく、しかも普段あまり使わない言葉で頼むぞ』

 グローバーは補足をする。アルはふむふむ、それなら、と

 「うるさい」

 『パスワードメッセージを設定『いやなんか罵倒しているだろ、貴様!』しました』

 最後、イケメンボイスが今までにない剣幕になったが、気にしないアルだった。

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 場所はグローバーとピンキーがいたメタバース世界。そのうちのある商店街である。中世風の商店街はまさに人々で賑わっている。布と木材だけで作られた雨しかしのげない屋根。それを店として店主が必死に客を寄せ集める。果物、野菜、鮮魚、肉・・・食だけでない。ズボン、マント、カートルといった庶民の服から、上質な生地でできたドレスとまさかの貴族向けの服、剣や鎧、水、工具、ありとあらゆるものが小さな道で密集して店に出ている。客の層も様々で老若男女問わず、なお身分の最大は官民だろうが、それでもこの世のすべての人々が集まったかのような賑わいをしている。

 それを少し離れた建物のてっぺんで見つめカブキ。

 「それにしてもやはり凄まじいエネルギーだ。一つ一つの質は小さいが、それらはすべてとてつもないものを生み出す何かを感じる。それだけでないな、無数の喜びや悲しみ、怒りに憎しみまでもが渦を巻いてあふれるパワーになっている。まるで、力の溶鉱炉だ。ストートン・キング様から頂いたAI。やはり今までにない視点を与えてくれる。そして、これを利用する手はないな」

 薄気味悪い笑みを浮かべて人々の熱狂を眺めるカブキだった。

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 放課後、部活の開始前に科学室によるアルモック。目の前にはすでにヌンソンが何か得体のしれない装置で実験を始めようとしていた。

 「えっと、ヌンソン様。何作ろうとしてるの?」

 ちなみに学校内だとまだ周りに気恥ずかしさが出て、アルモック、ヌンソン様呼びとなる。別にまだ誰も科学室に入っていないのだから気にするものでもないが。

 「うふふ、それはね。この砂糖水を入れると・・・」

 ビーカーに入った砂糖水をロートに流すと、あっちこちに配線のようにされたガラス管をつたい、ときに何の液体が入っているのかわからない三角フラスコなどを経由しながら熱で今にも爆発しそうな気体が見えつつ、最後にアルモックの前に置かれた容器に小さな玉が出てくる。

 「どう? アメ玉装置なの」

 そして、熱に耐えきれなくなってガチャガチャ音を出し始める。

 「いけない、伏せて!」

 アルモックはその言葉に瞬時にかがみ込む。そして、装置ほどなくして爆発し、周りにはガラスの破片が散った。

 「ああ、また作らなきゃ」

 ムンソンは残念そうに残骸を見つめる。

 「いや、あれだけの能力と犠牲でこのアメ玉一粒は容量悪いでしょ!」

 アルモックは盛大なツッコミを入れる。

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