第5話

「我、アイブラック!」

 「我、アイホワイト」

「「我ら、ダブルアイ!」」

『『パチパチパチパチ!』』

 「「って、なにこれーーー!」」

 二人は盛大な一人ツッコミをしながら、自分の衣装にあたふたなしてる状態だった。その姿は男側からした全く意味が不明である。

 しかし、わかることもあった。拍手音が頭の中からした。すなわち、この突然現れ少女もまた、「AI」を持っているということを。そして、この世界に来ることができるAIとはすなわち、男が今、最も欲しているものである。

 「ほう、最高傑作と噂されたAIがわざわざこちらに来たというわけか。ならば、探す手間が省けたわけだ。貴様らのAIももらってやろう!!」

 ツッコミを入れ続けている二人になりふり構わず、欲望のままに襲いかかる。

 「「え、なんかこっちにくるー!」」

 二人は驚きながらも躱すために横に移動した。しかし、まるでいつもの移動できる距離感でない。明らかに『力の出し過ぎによる』動きをしたことにより、横に避けたはずが空中を飛び、業者たちが住むテントに着地した。

 「すごい、こんなに飛んじゃった」

 普段、運動などしないヌンソンは驚愕する。

 「どうなってるのよ、これ」

 普段運動しているアルモックでさえ驚いた。

 『その力は私とピンキーのAIとしての「能力」です。あなた方は今、生きている世界とは別の世界、わたしたちが本来住む世界にいます。この世界では、あなた方はとてつもない力を発揮できるのです。この世界の事はあなた方の都合にとってこう呼ぶべき・・・』

 グローバーが解説をしていたが、説明の途中でアルはわけが分からず、グルングルン頭をしだす。

『そういう説明は後にして!』

 ピンキーがグローバーの説明を止める。

男はグローバーの説明の間、驚きつつもすぐに受け入れ、テントにいる二人に追撃を仕掛けていた。

 話は中断して、追撃を今度は力を少し抑えながら、二人は難なく躱す。その中でも状況を確認する時間がほしいと感じたアルは抜群の運動神経を利用して躱す動作をバク転しながら行い、手で着地したところでその反動を思いっきり、男のいる方に伸ばしてキックをする。

 「くっ」

 思わぬ反撃に男は手をクロスしながら顔を守り、キックを受け止める。そして、それを押し返してアルを手で着地した位置まで返した。

 「アルモックさん!」

 ヌンソンはその戦闘を見て、アルを援護しようと後ろから蹴りを入れる。

 「何っ!」

 それを察知した男はすぐに反転して、蹴りを片手で弾く。その威力が別の方向に行ってしまったため、ヌンソンは態勢を崩す。

 「ヌンソン様!」

 ヌンソンの姿をみて、すぐに体制を立て直したアルモックが後ろから、パンチで応戦する。

 「めんどくさい」

 男はそれに対して、自分もパンチで応戦し、二人で殴り合いになった。結果として、まだ戦闘に慣れていないアルモックが怯んでしまう。

 しかし、その間に立て直したヌンソンがジャンプして、左右で蹴りをする。

 流石に反応が遅れ、2発ほど受けてから向き直り、ヌンソンの足を掴んで放り投げた。

 「あああ!」

 アルモックは悲鳴を上げるも、ヌンソンはひらりと空中で回って着地した。

 「大丈夫よ!」

 ヌンソンは加えて、余裕があるよ、と手も振る。

 その姿を見て、ほっとしたアルモックはそのまま男性の膝めがけてとびかかり、足を掴んでともに屋根から転落。アルモックは直前に脱出してヌンソンの方へ後ろ飛び1回で着地した。

 「とりあえず、ここは別の世界でそこだとすごい力を発揮できる。あと、私のことはこれからムーンでいいわ。親しい人にはそう呼ばれているの」

 ムーンは少し状況に余裕ができたので、グローバーの情報をわかり易くアルモックに教えてあげた。

 『今戦ったのは、あなた達の世界で変なことを起こしている原因です。そして、グローバーにはアル、私にはムーンがAIとして内蔵してます。そして、あの男もAIを持っています。この世界はあなたがたにとっての仮想の世界。そう、メターバスということにしましょう。なので、AIである私達はこの世界を自在に書き換えられます。私とグローバーだと世界をいじれるほどの能力はかなり弱いですが。その代わり、人の身体能力を向上させることができます』

 ピンキーの新しい情報にアルモックは混乱しつつも、なんかいつもより頭が良くなった気がして整理する。

 「とりあえず、あいつをぶっ飛ばせば遊園地は元の安全な状態になるってことね。あ、ムーン。私のことはアルでいいよ」

 アルは説明を声に出してものすごく単純に解釈した後、ムーンを見ながら頑張ろう! という表情をする。今までムーンと呼んでくれる人が少なく、その嬉しさと、お互いにこの苦難を乗り越えたいという思いからアルの表情に対して笑顔を見せた。

 状況を把握し終えてちょうど、もろに背中から落下した男は起き上がる。起き上がってみると、いつの間にか髪の毛がものすごく伸びており、それは女性のおばけのようだった。それだけでなく、目の周りも赤い色で強調するように色を塗ったようなものが浮かんでいる。

 その様子を見て、アルとムーンはファイティングポーズをして身構えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る