第4話 リバーシのようにひっくり返る
前回のあらすじ
リンゴと言ったら赤い。赤いと言ったらバラ。バラと言ったら赤い。赤いと言ったら私の服。
リンゴを美味しく頂いて、軸だけになったものを皿の上に置いた。
「ゴチソーサマデシタ」
ヤンミヨンが「何を言っているのだろう?」という目でこちらを見ている。彼女の言葉に「ごちそうさま」はないのかもしれない。こういう挨拶の類は文化次第で表現があったりなかったりする。
さて、糖分が回ってきたところで、ふと思った。「赤」が分かったのだから他の色も知りたい。同じ色のものを複数持ってきて共通項で聞き出す方法が確立できたから、同じ方法を使ってみよう。
まずは……「黒」を聞き出してみよう。ここにある黒い物は、羽ペンの羽の部分とインク、それから……ヤンミヨンの髪の毛。よし、まずは髪の毛を聞いてみよう。失礼にならないよう注意しながら、私はヤンミヨンの髪の毛を右手で指さした。加えて、左手で自分の髪の毛をつまんで、
「ネーネー、ヤンミヨン。
これなら髪の毛を指してるのは明白でしょう。間違っても「頭」にはならないはず。彼女も意図を理解したようで、
「
とはっきりと答えてくれた。なるほど、リニャね。続けて本命である「黒」を聞き出してみよう。やり方は「赤」の時と一緒だ。
「ヤンミヨン。
ここまでくればパターンね、と言わんばかりにすぐに意図を理解して
「ピメヤ」
と答えてくれた。念のために確認するのもパターンだ。私はインクの入った容器を手に取り、蓋を開け……開いた。あまり見かけない形状なので、開け方が一瞬分からなくて手間取っちゃった。インクをこぼさないよう、指を汚さないよう慎重に容器の中を指さして聞いた。
「
「
よし、「黒」は「ピメヤ」で合ってる。ついでに「インク」も聞こう。
「
「
テロピメヤ? もしかして、合成語?
「
ヤンミヨンは一瞬戸惑った様子だったが、何かに気づいた雰囲気で
「アラ。
と答えた。彼女が何に気づいたかは分からなかったが、とりあえず訂正はしてくれた。これで後置修飾は確定だ。
他の色はどうだろう。黒と来たら、次は白かな。でも今、目に入るもので白いのはスチールウール状の模様が書かれた羊皮紙くらい。他に白いものがないと共通項で括れない。このままでは単に羊皮紙を彼女の言葉で何というかが分かるだけだ。困った。
いや、私は既に
そうと決まればいつものごとく準備を始める。まずは「羊皮紙」だ。指が汚れないよう、まだまだ乾く気配のないスチールウール状の模様を避けて羊皮紙を指して聞いた。
「
「
「リプ」
リプが「白い」の可能性もあるけど、そういう抽象的な語を先に答えるとは考えにくい。ここは一旦「羊皮紙」を指してると信じよう。どうせこれから聞くことで検証できる。じゃあ、本命の質問だ。
「
お願い! 伝わって!
ヤンミヨンは少し考えたけど、こちらの意図に気づいたようで、感心した様子で答えた。
「ワロ。
「ワロ」
今のところ確かめる術はないけど、きっと「白い」で合ってるよね? 白と黒が揃ったので、ボードゲームができそうね。こっちの世界にはそういうのはあるのかな?
言語ヲタと異世界言語ヲタ スライムさん @slaimsan
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